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第18章:形なき力


ルカンは驚いたようにあたしを見ていたが、すぐにムカつくニヤリ顔を浮かべた。


「魔法? 魔法について知りたいって?」 ルカンが、少し興味を持ったように言う。


「当たり前じゃん! もっと強くなんなきゃだし、あんたが教えてくれるんでしょ!」 あたしはコーヒーをもう一口。マジで不味い。


奴は片眉を上げた。


「俺が? なんで俺があんたなんかに手を貸さなきゃなんないんだよ。ただの哀れな捨て犬に同情しただけだろ」


あたしはテーブルをドンと強く叩いた。


奴を睨みつける。


「同情なんていらねーよ。教えてくれないなら、一人でなんとかするから!」


立ち上がろうとしたところで、奴の声があたしを止めた。


「待てって、お嬢ちゃん。その真っ直ぐさと大げささ、マジでウザいんだけど」 ルカンはゆっくりと立ち上がった。 「ったく、そこまで言うならこうしよう。あんたの固有魔法の基本を教えてやるよ」


あたしは腕を組んだ。


「上等じゃん。でも、悪魔との取引にただで済むわけないって知ってるよ。対価は絶対あるんでしょ」


奴はさらにニヤリと笑った。


「ああ、正解だ。けど、対価は後で話すことにする。で…契約成立ってことでいいのか?」


ルカンは手を差し出した。


あたしは数秒、その手を見つめてから、力強く握り返した。


「上出来だ。三ヶ月であんたに体術魔法の使い方を教えてやる。準備できたら外で会おうぜ」 ルカンは笑みを浮かべていた。


夕食の後、あたしは家を出た。


そこでようやく、ここがどこなのか気づいた。何もない森のど真ん中だ。外から見れば、木造の家で窓も同じ素材、それなりに可愛げはあったのに。横からはひどい臭いがしてきて——近くに鶏小屋でもあるのか。あたし、こんな田舎に住むなんて絶対無理。てか、キャンプ好きってどんな頭してんの?趣味ってほんと人それぞれだよね。


ルカンが立ってあたしを見てるのに気づいて、あたしは視線を逸らした。


「さて、ここまで来たが……魔法について何か知ってるか?」 ルカンは薄笑いを浮かべていた。


「はあ?あたし閉じ込められてたんだから、知るわけないじゃん。」


「まずお前が知るべきは、マナの制御だ。」


「マナ?」


「ああ。この世界のすべては魔法粒子でできている。それだけじゃ何もできないし、存在すら感じられない。だが、すべての生き物はマナを持っている。マナとは、周囲の魔法粒子を使って魔法を発動させる力のことだ。これが基本中の基本だな。」


「じゃあ、覚えれば魔法使い放題ってこと?ノーリスクで?」


彼は短く笑った。


「もしそうなら、話は簡単だ。すべての生き物が持つマナには限界がある。筋肉と同じで、強い者もいれば弱い者もいる。だが、それは訓練で変えられる。さて、説明はここまでだ。訓練を見せてやる。」


彼は屈んで地面から葉を一枚拾い、あたしの手に載せた。


「課題は単純だ。この葉をクシャクシャにしろ。」


その瞬間、あたしは拳を握りしめて葉をクシャクシャにした。


「クシャクシャにしたけど。次は?」


彼はため息をついた。


「つまらん冗談はよせ。本題に戻る。お前は魔法粒子をマナに変換し、それを葉に流し込むんだ。そうすれば葉はクシャクシャになる。」


「はいはい。で、どうやってやるの?」


「知らん。自分で考えろ。」


「はあ?!あんた何様のつもりよ?!そんなのどうやってやるのよ?!ヒントくらいあるでしょ!」


「マナの操作は個人的なものだ。それぞれが自分なりの方法を見つける。だから自分に問いかけろ。あの時、どうやって使った?」


「あたし、怒ってたし……死ぬかもって思ってた。」


「なら、危険でも怒りがなくてもマナを使えるようになれ。そうして初めてできるようになる。だが、繰り返すが、これは個人差がある。」


それだけ言うと、彼はさっさと背を向けて行ってしまった。


「ちょっと、待ってよ!!!行かないでって!これ全部ざっくりしすぎじゃん!結局どうやってマナを制御するのよ?!」


でも彼は何も言わず、あたしの耳に残ったのは小屋のドアがバタンと閉まる音だけだった。


あたし一人、葉っぱを握りしめて、どうしたらいいかさっぱりわからない。マジでただのバカじゃん。


まあ、やるしかないか。


目を閉じる。 手からエネルギーが出て、葉に向かっていくのをイメージして、そのまま葉がクシャクシャになる様子を想像する……で、目を開けたら……


葉っぱ、全然無事だった。


こりゃ時間かかりそう。


時間だけが過ぎていく。


焼けつくような太陽で、首筋に汗がだらだら流れる。あたしはそこに突っ立って、葉っぱを睨み続けていた。


マジでふざけてる……。


時間が経ち、空模様が変わり始めた。青空が重い雲に覆われ、あっという間に空は真っ暗になった。


すると、雷の音が聞こえてきた。


雨が降り出した。


「最悪じゃん!天気まで変わってさ、あたしはここにアホみたいに突っ立って、このクソ葉っぱを念力とかいうわけわかんないマナでクシャクシャにしようとしてんの。もうびしょ濡れだけど、まだ集中してるフリして立ってんのよね。」


何も起こらない。


「イライラするだけじゃん。」


あいつ、せめてもう少しマシな説明してくれてもよかったのに。『マナを使え』って、曖昧すぎ。あたし、無限の忍耐力があるお坊さんじゃあるまいし」


地面に水たまりができ始める。その中に、あたしの顔が映っていた。


「ひどい顔…」


力いっぱい水たまりを蹴飛ばした。


何度も何度も水面を蹴りつける。あの映り込みを壊せるかのように。


水しぶきが四方に飛び散る。


そこで、ハッと気づいた。


葉っぱがクシャクシャになっていた。


あたし、手を握ってもいないのに。


マナを使ってたんだ……無意識に。


でも、どうやって?


別の葉っぱを拾って、もう一度試してみる。


何も起こらない。


何が足りない?


葉っぱを両手でクシャッと握りつぶし、地面に投げ捨てた。家に戻ろうと歩き出す。


ドアをくぐる前に、振り返った。


ルカンが、あたしが蹴った水たまりの前で立っていた。


一言も発しない。


ただ、あたしを見つめているだけ。


二階の部屋に上がった。


やっぱり、そういうことか……。


あたし、どうすればいい?

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