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第13章:見なかったもの



薫様が牢から出始めた。階段からドタバタという音が聞こえてきた……マジかよ。まあ、全部ぶっつけ本番だったけど、うまくいってる。それが大事だし。


あたしは薫様の手を取った。薫様、足元がおぼつかない。慎重に階段を上って台所に着いた。エルフの衛兵の死体が転がっていて……しかも、部屋中めちゃくちゃだった。鍋は散らかり、食べ物はテーブルにぶちまけられて……まるで台風でも通ったみたいだ。薫様があたしを見た。


「あたしを見るな。やったのはあたしじゃない。ちょっと背中押しただけだ」


「その『背中を押す』のが気に入った。よくやった」 隠しきれない誇りを滲ませて、薫様が言う。


「は? あたしを褒めた? この奇跡、スマホで録画しとけばよかったわ。あんたがあたしを褒めるなんて……絶対地獄が凍ってるに違いない」


「黙れ」


突然、台所の外から叫び声と金属がぶつかる音が響いた……グラディエーターたちが暴れてるに違いない。ここから出るのはヤバい……別の出口を探さないと。


あたしは周りを見回した。出口は二つ。牢に戻って闘技場の地下通路に行くこともできたけど……それ、バカだろ。門は外からしか開かないし。もう一つの選択肢は、台所の脇の出口。どこに続くかはわかんないけど……他に選択肢なんてない。


「行こう、薫様。ここからしか出られない」


進んだ。ドアを開けると……


そこは屋外、というか裏庭だった。植え込みや実のなる木なんかが生えてる。


ゆっくり進み、すぐに植え込みの中に身を隠した。衛兵のグループがあっちこっちで指示を出してる……つまり、再編成か何かだろう。


今逃げないと、棺桶行きだ。


「お前ら、出口を警備しろ」 衛兵の一人が他の二人に言った。


ラッキー。あのバカ衛兵どもについていけばいいだけだ。出口、ゲット。


あたしたち二人は彼らの後ろを這うように進んで……たどり着いたのは、どう見ても巨大な門だった。あれが出口だってことくらい、わざわざ天才じゃなくてもわかる。


あたしの読み通り、衛兵はまだ少なかった。他の連中は反乱鎮圧に駆り出されてるってわけ。追ってたのは、その二人だ。


ちょうど交代の時間らしく、二人の衛兵が去って、あたしが追ってたやつらが持ち場についた。たった二人じゃん。あたし、もっとヤバい状況からだって抜け出してきたんだから。


薫様の方を見ると、もう息が上がってる。このままじゃ、長くは隠れてられない。八十過ぎのじいさんに、こんなペースは無理だって。


あの二人をさっさと片付けて、正面から出ちまおう。もうすぐそこだし。


「薫様、ここに隠れてて」


薫様の肩をつかんで、強気なフリをして言った。


「何をするつもりだ?」


薫は心配そうな顔を見せまいとして聞いてきた。


「あのエルフどもを片付けて、門を開けて出る。わかった? だからここにいて。あたしが戻ってくるから」


薫様を安心させようとした。


「何だと? 冗談だろ、お嬢ちゃん……一人で二人のエルフに挑むつもりか」


呆れたように言われた。


「知らないの? あたし、クソエルフ四人同時にぶっ倒したことあるんだけど。大丈夫だって。あいつらも下っ端っぽいし」


ちょっとカチンときて言い返した。


「エルフを甘く見るな。この世界で人間が奴隷なのには理由がある」


また説教かよ。


「薫様、ここにいて、あたしの活躍でも見てな。大丈夫だって」


強引に押し切った。


茂みから飛び出して、衛兵たちに一直線。もう時間がない。さっさと片付けないと。


剣を抜く。


二人の衛兵があたしに気づく。一人が大きく息を吸い込んだかと思うと……口から火を吐き出した。竜かよ、マジで。


ありえないんだけど、どうやってあんな量の火を出してんの?アル中とか?


瞬間、そいつめがけて走るのをやめて横っ飛び。攻撃を避けつつ反撃のチャンスをうかがう……んだけど、あのクソ野郎、止まんねえじゃん。この技、終わりねえのかよ?!


その時、もう一人の衛兵がそいつの隣に立った。はあ?ふざけんなって。攻撃が来た……


そいつ、手に水を生成して相棒の火炎ブレスにぶつけた。


は?何やってんだコイツ。意味わかんねえ……


だけど気づいた。火と水がぶつかってできた煙で、二人の姿が見えなくなった。暗闇で戦うのが好きとか、ありえねえし。


あたしは立ち止まって様子をうかがった。どこから攻撃が来るかわかんねえ……左右を見回すけど、聞こえるのは静寂だけ。


その時、火の音がした。


反応する暇もなかった。背中に火の玉が直撃。肌が焼ける感覚と、半端ない痛み……勢いで地面に叩きつけられた。


「クソが!ネズミみたいに戦ってんのがそんなに偉いってか!?」あたしは吠えながら、次の攻撃が来る前に立ち上がった。


その瞬間、水の触手が鞭みたいに襲ってきた。


素早く横に転がる……けど、また火の音。振り返った瞬間、触手があたしの足を掴んで壁に叩きつけた。


背中がミシミシいって、頭がガンガンする。


マジかよ?!背中ばっか狙いやがって。廃人にしたいわけ?うぜえんだよ。


こんなの続けてらんねえ……こいつら二人殺さねえと、自由なんか手に入んねえ。この煙、邪魔すぎんだよ。視界も信用できねえ……


二人の衛兵は遠距離から攻撃。また火の音……左からか。次は水の攻撃が来るかもな。


ほらな。触手がまた背後を狙ってきた。同じ手に二度も引っかかるほどバカじゃねえよ。


かわす。


水の触手に突っ込む。あれがあたしのガイドになってんじゃん。衛兵がビビって魔法を解いたけど、一つ忘れてやがった。地面は土だったから、水が完璧な跡を残してた。


喉元直行のGPSだ。


怒りに任せて、そいつの目の前に現れる。攻撃を仕掛けようとした、その時——


誰かの拍手が聞こえた。


心臓が凍りつく。


衛兵の喉元ギリギリで刃を止める。


ゆっくりと振り返る……


霧が晴れてきて、人影が見えてきた……


リサンディルのクソ野郎だ。


一人じゃなかった……もう一人の衛兵が隣にいて、薫を捕まえてやがった。


マジでヤバい……!

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