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第11章:獲物が狩りを覚える場所



医務室を忍び足で出る。木の軋み一つ、少しでも息が荒くなれば、即アウトだ。あたしと銀のメスだけ。


もし生き延びられたとしても、薫様の計画がどれだけクソだったか、機会があれば絶対言ってやるんだから。


足音が聞こえた。 振り返る。


衛兵が来るのが見えた。あたしに剣を向け、なんか気取ったポーズを決めてる。


ちくしょう……どうやら、あたしの隠密脱出はおじゃんみたい。怖くないわけじゃない。


「止まれっ!!!」衛兵が怒鳴った。「牢屋に戻れ、この獣人女が」


「獣人女?」あたしはメスを握りしめ、ニヤリと笑った。「もっとマシな悪口ないの?その耳、脳みそ吸い取ってるんじゃない?」


彼の顔を見る限り、ジョークは通じなかったみたい。


エルフは手のひらに火の玉を作り出し、あたしめがけて放ってきた。


とっさに避ける。背中を熱が舐めるのを感じた……背後で小さな爆発が起こる。


しまった……忘れてた。こいつら、魔法で遊んでるんだった。エルフが魔法を使うのなんて、一、二度しか見たことないし……たいてい奴隷いじめに使ってたけど。


脱出、どんどん厳しくなってきた……


衛兵に突っ込むと、そいつは剣を抜き、安っぽい手品みたいに刃を燃え上がらせた。炎の剣と銀のメスじゃ、勝負にならないのはわかりきってる。それに、エルフの鎧はあたしがアリーナで着てたボロよりマシだけど……それでも隙はある。


予測できる攻撃を繰り出してくる。正直、退屈なレベル。


問題は、そいつの空いてる手だった。


目を焼くような光が見えた。


拳が炎を纏ってた。


衛兵がパンチを繰り出す。ギリギリで飛び退く……


拳が壁に当たり、穴を開けた。あの壁、コンクリートの塊だったはず。もし当たってたら、一撃で死んでた。しかも、こいつ別に強いエルフでもないのに。


早く終わらせないと。


もう一度、全力で突っ込む。恐怖を隠して、正面からぶつかるしかない。


彼が少し怯んだのがわかった。こんな見せかけであたしが怯むとでも?


メスを強く握りしめる。腕の関節に隙があった。そこにメスを突き刺す……痛みで衛兵は剣を手放した。


地面に落ちる前に、あたしは剣を掴み、一閃。


彼は息絶え、崩れ落ちた。


あたし、自分が何をしたのか信じられない。血塗れの剣を見下ろす。やっと、何年もかけて、本当に殺すべき奴を殺した。エルフを殺したんだ。


笑いと涙が同時に込み上げてくる。解放感と希望が混じった喜び……まるで、少しだけ正義がもたらされたみたいに。


また足音が聞こえる。 他のエルフが来る。また衛兵かよ。


奴らの顔が凍りつくのがわかる。何も言わない。床に転がる衛兵の死体を見て、ただ呆然としているだけ。


あたしは満足げに全員の目を見回した。


「仲間?」わざとニヤリと笑って聞いてやる。「あたしみたいなサルに殺されちまってさ……お前らの中で、あいつってマジで笑い話として残るんだろうな?」


衛兵の一人がキレた。地面が揺れる。


あたしは構えを取る。


殺した衛兵は火の魔法使いだった。こいつは違うのを使うんだろう。


驚いたことに、土の杭が次々と地面から突き出してくる。ギリギリで避けたけど、かすり傷はできた。


油断できない。


杭を避けながら、別のエルフが全力で突っ込んできた。壁をぶち抜くほどの水流を放つ。


こいつ、自分が一番イケてると思ってやがる。近づいてくる……このクソ野郎、あたしを舐めてんのか? 一度しか許されないミスだぞ。


攻撃の準備をしてると、三人目のエルフがどこからともなく横に現れた。手を回すと、トラックにぶつかったような突風であたしを壁に叩きつける。


背中を思いっきり壁に打ち付けた。倒れた拍子に、少し咳き込んだ。


剣を握って立ち上がる。


マジかよ。あたし一人にエルフ三人か……


いちいち名前聞くのも面倒くさいから、勝手に名前つけちゃえ。土エルフ、水エルフ、風エルフってとこか。ネーミングセンス、最悪だけど。


こいつらをこれ以上殺すのも魅力的だけど、ここからどう脱出するか考えなきゃ。行き止まりだし。風エルフがあたしを追い詰めてる。土エルフと水エルフは連携してあたしを殺そうとしてくるだろう。風エルフは逃走を阻止する。


まずは風エルフがターゲットだな。


軽く髪を直す。


深く考えずに、風エルフに突っ込む。あいつ、突風を放ってきた。剣を地面に突き刺して体を固定する。


水エルフがまた撃ってきた。


考えなきゃ。


剣を手放す。突風で後ろに吹っ飛ばされた。水流が顔をかすめた。傷跡残らなきゃいいけど……でも、水の攻撃は止まった。一発撃ち切りって感じか。


へえ。連発はできないみたいだな。


それでも状況はヤバい。剣は地面に刺さったままだし、また武器なしだ……


でも、よく見たら、あそこにエルフの死体がある。メスも落ちてる。


まだ取りに行く余裕はない。風が止まらないから、壁に張り付いたままだ。


すると土エルフが、今度は細い杭を何本も作って投げつけてきた。風のせいで速度が上がってる。


お腹に刺さるはずだった一本はなんとか掴んだが、もう一本は腕を貫いた。


「ああっ!」


叫び声がほとばしった。これは負けの叫びじゃない。憎しみの叫びだ。


腕に刺さった杭を素早く引き抜く。痛みに泣いてる暇なんてない。


全力で水エルフに向かって杭を投げつけた。だが、土エルフがそいつの前に壁を作って防いだ。


完璧じゃん。


風エルフ、多分疲れてる。チャンスだ。


倒れてるエルフのところまで走り、メスを掴む。そのまま風エルフに向かって走り続ける。


あいつ、剣で斬りかかってきた。避ける。ガードが甘かったから、あたしの攻撃が決まった。


聞こえたのは、あいつが床に崩れ落ちる音だけ。


またエルフが一人死んだ。 残りの二人はその光景を見て硬直した。


「これで、あたしみたいなサルにエルフが二人も殺されちまったな……」息を切らしながら言う。「マジで、お前ら四人ともエルフの笑い者じゃん」


「黙れ、汚らわしい人間がっ!」土エルフが目に怒りをたたえて叫んだ。


また土の杭が地面から湧き出してくる。あたしは後退する。


水エルフが次の一撃を準備してる。メスをそいつに向かって投げつけた。刃が手に突き刺さり、あいつは苦痛のうめき声を上げた。


あたしは土エルフに意識を戻す。 地面に刺さった剣の近くまで行く。杭が出てこなくなった。


ってことは……


攻めていいってことだな。


全部楽勝じゃん……


もう一回ダッシュ。そいつと真正面から向き合う。


「そんな顔すんなよ。お前ら、マジでキモいから」皮肉たっぷりに言う。


剣でそいつを貫く。あいつは信じられないって顔であたしを見て、それから崩れ落ちた……


水エルフが最後の一撃を試みる。


あたしは身をかがめ、素早い動きでそいつの足を斬りつけた。何か動き出す前に……素早く仕留める。


今日、あたしの手でエルフが四人も死んだ。


まあ、いいスタートってとこか。でも、こんな戦い、長くは持たないだろうな。それに、こいつら下級エルフだったし。だから長時間魔法を使えなかったのかもな……


でも、しょうがない。


勝利は勝利だ。


出口を探して、あてもなく歩き始める。

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