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第43話 悪意の中で

いつも読んでいただきありがとうございます


*今回、胸糞悪くなる表現が多々入っていますのでご注意ください

「どうしてこうなったんだろう・・・」


 丸太に縛られすでに2日はすでに過ぎたと思う

 縛られた時から流した涙はすでに枯れ果てたし立たされたままの足や後ろ手に縛られた手の感覚は当の昔に無くなった


「おとうさん・・・」


 もう何回呼んだかわからない。それでも少し離れた私の目の前に作られた絞首台の木箱の上に後ろ手で縛られた状態で首に縄をかけられた父を見ると呼ばずにはいられない


 父もしっかりと自分を見ている

 立たされた木箱から少しでも足を外せば命の灯は消えるだろう


 父もそれが分かっているからなんとか立っているけど、時々バランスを崩しかけその度に首にかけられた縄がのどに食い込んで父の顔は苦痛に歪んだ。もう残された体力も限界に近いのだろう


 がんばって・・・


 そう思うけどその声を届ける声が口から出ない

 でもそれを私は気にしない。気持ちが通じ合っていればそれでいいと思う


 最初は父のその姿を見るたびに声をあげていたけど声をあげるたびに周りが喜ぶからもう声をあげるのはやめたし今朝、処刑を早めると伝えられた時には体の底から何かが抜ける様な感じがして顔を下に向きかけたけどこの理不尽に負けた気がするから絶対に最後まで下をうつむかないと決めた。きっとすべてを諦めれば楽になれるんだろうけど・・・それは嫌だ!


「ナヴィア・・・」


 父の唇が動くのが見えた

 声が小さく聞き取ることができないが唇の動きで私の名前を呼んでいる


 おとうさん・・・

 私は大丈夫。こんな奴らに負けはしないよ


 私と父の周りには兵士が立ちそこを囲むように大勢のやじ馬が集まっている

 私たちを見て笑う奴、喜ぶ奴、憐れむ奴、馬鹿にする奴・・・

 いろんな奴がいるけれど集まった全員が思ってることは芸を生業にしてきた私にはよくわかる

 きっと私たちがどんな風に死んでいくのか興味があるんだろう


 でもあんたたちを私は喜ばせてなどやらないから・・・

 芸で喜ばれるならともかくこんな扱いで喜ばれたくない


 時々金がとか聞こえるから賭け事までしてるんだろうけど私は・・・

 私と父は最後のその時まで絶対にあんたたちに負けはしない。誇り高く生きるんだ!


 そう決意した時、町の鐘が大きな音で鳴り響いた

 その鐘の音に合わせて一台の馬車が近くにやってきて停まると馬車の扉の前で兵士たちが列をなした


 やがて扉が開き一人の男がだらしなくたるんだ体を重そうにしながら気だるげにゆっくりとした足取りで降りてくると私の方を向くとニヤリと笑った。その顔は肉で頬がたるんでるせいか醜悪な笑いに私には見えた


 自分たちをこんな状況に陥れた男・・・


 男の顔をみた瞬間、私の心に怒りの気持が湧き出てくると自然とその顔をにらみつけていた


「ほう・・・。まだそんな元気があったか」


 男はのしのしと私の方に近づいてくると顔を近づけてきた


 べったりと頭髪に撫でつけた香油の香りと体臭を消すために大量に振りかけた香水の香りとが混ざり合い独特な匂いに思わず吐き気がこみあがってきたけどそれを我慢してその顔に唾を吐きかけてやった


「ざまあみろ!」


 その瞬間、周りの兵士ややじ馬たちが凍り付いたのが分かったし胸がすく思いがした


 けれど目の前の男は顔に吐きかけた唾を気にする様子はなくむしろにったりとした笑いを浮かべると私の吐いた唾を手でぬぐい取ってべろりとなめとった。それを見た瞬間、私の背筋にぞわりとしたものが走る


「ぐふふ。それくらい生きが良くなくては困る・・・・」


 男は腹の底からくぐもった笑い声を漏らすと手を振りかぶった


 バシーン!


 低い音が周りに響いた。一瞬、私は自分の身に何が起きたかわからなかった

 頬に走るじーんとした痛みと口の中に広がる鉄の味で私は自分が叩かれたことに気づいた時、再び衝撃が襲った


 バシーン!バシーン!バシーン!


 1発2発3発と続き男が息を荒げるまでその行為は続いた

 私は意識が朦朧として無意識に顔を下に向けた時、髪を掴まれ顔をあげさせられた

 虫唾の走る顔が目の前にあるがもう唾を吐くことさえできない・・・


「ぐふっぐふっ・・・お、おまえの父親をこれから殺す。し、しっかりとその目で焼き付けろ」


 男は肩で息をしながらも嗜虐的な笑みを浮かべて私に言い聞かせるようにねっとりと耳もとで囁いた。その声でだんだんと意識がはっきりとしてくると思わず口から言葉が自然とあふれ出ていた


「こ、殺してやる・・・」


 自分でも驚くほど残酷な声がでたと思った

 けれどこいつはニヤッと笑うと私の髪を掴んだまま頭を力任せに下を向かせた


 ぶちぶちと自分の髪の毛が切れる音が聞こえ頭に激痛が走った

 顔を上げると男の手に自分の紫色の髪の毛が大量に握られているのが見えた

 私はそれがむしり取られた私の髪の毛であると分かった時、頬を温かい液体が伝った


 おかあさん・・・


 私の髪の色は私を産んだ時に亡くなった母の髪と同じ色だと聞いた

 むしり取られた髪の毛を見た時、一番大切な母を傷つけられた気がして心が抉られる。頬を伝う液体がもう枯れ果てたと思っていた涙と気づいた時、私の心に罅が入るのを感じた


 それを見て満足したのか男は下卑た笑みを浮かべると大きな声で命令を下した


「処刑をはじめろ!」


 それを最後に男は私の髪の毛をまるで汚いものでも触ったとばかりに地面に放り投げると近くに用意されたやたら豪華な椅子に座った


 いよいよその時が来る


 父を殺し私が絶望し泣き叫ぶのをこの男は楽しむつもりなのはわかっている

 だからこそ絶対泣いてなどやるものかこの男の思い通りになどなってやるものかと思った


 それでも・・・


 兵士が父に近づいていく


「・・・とうさん」


「・・・・ヴィア」


 お互い声が出ない。その間にも父に兵士が徐々に近づいていく


「おとうさん!」


「ナヴィア!」


 張り裂けんばかりの声がでたと思った瞬間兵士によって父が立っていた木箱が蹴られ父の体が空中を舞う。父は苦しさのあまりに必死の形相になって全身を動かして喘いでいたがやがて力尽き体がだらりと垂れさがった


「いやあぁぁぁ!!!!」


 悲鳴と歓喜が入り混じった歓声が周囲に響き渡る中、私は叫んでいた


 おわっちゃう・・・

 だれか、だれか助けて!


 自分のひび割れた心がガラガラと音を立てて崩れて壊れていくのが分かる


 そう思った時、急に目の前が白くなりあまりの眩しさに私は目を閉じた


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