第13話 【肌肉玉雪(きにくぎょくせつ)のような?】 その9
今回は短いです( *´艸`)
水色のツインテールを揺らしながら、少女セリアは西側・・・俗に貴族院と揶揄される城内の文官室の隅の自席で、昨日複写した東側の書類を尋常ではない速さで確認作業をしていた。
「コルシック様・・・やはりありませんね」
「ん~? 何がだ?」
コルシックは老眼を酷使しながら眉間に皺を寄せ、セリアの席から少し離れた席で業務である報告書の確認作業をしていた。
「何って・・・コルシック様が知りたがっていた“ネレ”とか言う子供の資料ですよ」
「・・・そうか、やはりないか」
「むう! やはりって何ですか!? そういう可能性は事前に教えて下さいよ!」
「あのなあ、そういう先入観で突っ走ると見落としがあるだろう?」
「うむう・・・」
「そなたの観察力や、仕事の速さは認めるが、もう少し丁寧に仕事をしてくれ」
「むう・・・善処します・・・で? やはりとは?」
「ああ・・・、トレフルの策略と違うところに、あの子供が存在しているように思えてなあ?」
「はあ・・・策略? ですか?」
「トレフルが本気になったら、尻尾を掴ませるような事はせん・・・あのような狼狽もせん・・・」
「はあ」
「けれど、偶然にしては出来過ぎている」
「・・・・・・・・・」
「賃金を払う労力に加算するのも、人頭税の対象になるのも、雇用名簿に記載されるのも・・・6歳からだ」
「で?」
「ネレの年齢を聞くのを実は忘れていた」
「という事は、ネレとか言う少年は5歳という事ですね?」
「そうだな」
「それって、素直にトレフル様に問い合わせれば数分もかからなかったのでは?」
「そうだな」
「どんだけ仲が悪いんですか!!」
セリアはぶつぶつと言いながらも、引き続き資料を見直しながらきれいに綴じ紐で資料をコンパクトにまとめ終わった。
だが、一つだけその資料の複写に疑問が残っていた。
「なんで右上に番号が書いてあるやつとないのがあるんでしょう?」
コルシックは乱暴に、提出された書類をバサバサと放り投げていた。
「ああ、そりゃ複写しているヤツが見落としていたのさ」
「見落とし?」
「右上にあるのは、雇用番号だ。同じ番号は一つとしてない。」
「何故です?」
「退職した者の雇用名簿も捨てずに保管して、とりあえずバツマークをするが、同じ者が出戻って来ることを考慮しているそうだ」
「ほう・・・つまり・・・不正に個人名簿の破棄が何者かによってされないように・・・ですか?」
「そうだ・・・その為の、割り振られた通し番号なんだそうだ。その人物の資料を闇に葬ろうとしても、すべての資料の番号を改ざんするのは、ほぼ不可能だからな」
「すごーい! トレフル様ってすごーいい!!」
「いや・・・その資料をきれいにまとめ直したのはネレらしい・・・」
退勤間近のラストスパートをかけ、騒めいていたはずの捜査係の執務室内に静けさが舞い降りた。
「え~とお・・・その子の“才”って、どのような・・・」
「今の段階では“不明”または“マナシ”に近い・・・」
「え~とお・・・魔力値は?」
「測定不能の“1”以下だそうだ」
捜査係の執務室内が凍りついた――――。
「コルシック様・・・」
「なんだ?」
「明日、雇用番号の再確認をしてまいります」
「・・・そうしてくれ」
二人は、退勤前のラストスパートをかけ、黙々と書類の整理に励んだ
「すみませ~ん! コルシック様、たった今、調査報告書が仕上がって来ました」
パタパタと新人らしき文官が、書類を手に走ってきた。
「あ~? どの分だ?」
「“お出かけネレちゃん!”の分です」
「誰だ! 報告書にそんな題名付けたのは?」
「やはり“ネレちゃん、はじめてのお買い物!”が良かったでしょうか?」
「おまえかっ! シャドン!」
山吹色の髪の青年は、赤い舌を出して見せた。
コルシックは、提出された二種類の報告書を読み終わり、目頭を押さえつつ、深いため息をついている。
ツインテールのセリアが、首を傾げながら、先ほどから百面相をしていたコルシックを観察していた。
「あの、コルシック様・・・私はもうそろそろ帰りますが、他に何か確認事項などはありますか?」
「すまないが・・・コレを読んで感想を聞かせてくれ・・・」
「はあ・・・」
セリアは手渡された二種類の報告書を受け取り、速読した。
「・・・肌肉玉雪のようなその食べ物は、香しき異国の香りを醸し出し、その肉の味わいは・・・って? 何ですかコレ? 食レポですか?」
「たぶん・・・食レポだ・・・」
それはアベジと、隠密調査部隊からの報告書だった。
「へえ・・・“ウドン”ねえ・・・」
「セリア・・・とりあえず、その“ウドン”でも調査がてら今から食べに行くか?」
「お! いいですね! 久しぶりの平民服でお忍びですか!」
「城下のグルメは、あいつより先に網羅したいからな」
「そこまでトレフル様と張り合うんですか・・・」
何故だか急に生き生きしてきた上司の表情に、生温かい視線を向けるセリアであった。
こんばんは、もりしたです。誤字脱字報告ありがとうございます!
プロ読者様・・・すごいっスね。
前の会議室の差し入れのシーンでは、もりしたの頭がぶっ飛んでましたので加筆や修正があるある・・・。
話は変わりますが、ウドンって実は出汁なんていらないんですよ・・・。
旨いっすね! 醤油と大根おろしとかサイコーっスよね!
さて、また来週(?)更新予定で~す。




