9 続きからはじめる(1570年6月29日 織田家)【小谷城包囲】
『1570年6月29日 織田家――』
朝。
夜が明ける前に本隊は大垣城を出発した。
道中、第一陣が小谷城に取りついたとの報告が来た。
浅井氏は想定通り籠城だ。
当初の作戦通り、力押しせぬこと、降伏勧告の使者を遣わす事を再度明確に指示を出した。
「長政殿。やはり籠城のようだ」
「そうでしょうな……」
轡を並べている長政はしかめっ面だ。
それは当たり前。同族を攻めるのだ。
「義兄上」
しばらくして長政が声をかけてきた。
「ん?」
「某を先行させては頂けぬでしょうか」
やはりそう来たか……。
「その意図は?」
「某が小谷城へ開城するよう申し渡します」
長政の参戦が決まった時、それも考えはした。
だが……。
「ならぬ」
「なぜでございますか!?」
即答する。
「儂はな、久政を許す気はない」
「……」
そう。
長政を幽閉しただけならともかく、お市の方を殺害した浅井久政を助命する事は出来ない。
降伏勧告の条件も同様に伝えてある。
浅井久政は打ち首。助命は許さない。
ただちに開門し、武装解除すること。
その代わり久政と一部の家臣を除き罪を問わない。
開城後、織田と浅井は再度盟約を結び、現浅井領はそのまま長政に引き継ぐ。
これが降伏勧告の概要だ。
「承知しております」
「承知、か……」
もし。
もし万が一、だが。
長政を小谷城へ遣わしたのち、久政が長政を諭して家督を再度長政へ譲ったうえで織田へ敵対すれば。
人は城、だ。
守る人の能力により城は堅固にも脆くもなる。
小谷城はそう簡単には落ちない。
そこまで長政を信じてよいものか、判断が難しい。
また、ワーストケースとしては長政を殺害する事も考えられる。
その場合は北近江を任せられる人材に悩むことになる。
「いまは耐えよ」
長政にそう言うと、有無を言わせぬように馬を進めた。
しかし、この戦は思わぬ方向へ転ずることとなる。
--------------------------
その日の昼過ぎ。小谷城攻め第一陣の本陣。
小谷城の包囲を終えた第一陣大将の柴田勝家は、織田信長(真紀)から降伏勧告の概要を再度記した書状を受け取っていた。
「殿からは当初の予定通り力押しするな、との事だ」
「ではまず使者を遣わしましょう」
森可隆が言う。
「書状を渡す、でよろしゅうございますか?」
森可成が聞く。
その時。
「権六殿ーー!」
勝家の別名を叫びながら本陣の陣幕入って来たのは、第二陣副将の羽柴秀吉であった。
「サル、叫びながら来るな」
勝家が苦笑いして言う。
「はは、失礼いたした!」
笑いながら空いていた床几に座る。
「お。殿からの書状でございますか?」
「うむ」
返事をしながら書状を秀吉に手渡す。
一読ののち。
「権六殿。勧告の使者として某が行ってもよいか?」
秀吉が聞く。
「なんじゃと?」
目を丸くして聞く勝家。
「なに、我が大将の池田恒興殿には許可を頂いておる」
笑みを浮かべて言う。
「しかし、勝手な事をして其方に何かあったら、儂は殿よりお叱りを受けるわ。ならん」
「大丈夫じゃ!これだけの大軍に囲まれておる久政にそんな度胸はあるまい」
笑いながら秀吉が言う。
「久政はそうでも、家臣たちがなんとするか……」
「大丈夫じゃ!そんな阿呆はそう居りはせんっ!それにな……」
少し間を置いて
「この戦は城攻めではあるが、心を攻める戦じゃ」
「心を?」
可隆が聞く。
「そうじゃ。降伏の条件を示すだけでは降伏すまい。
肝心は、明智も朝倉もあてにはならぬ事を理解させる事じゃ」
「なるほど……」
「それを理解させるのは、久政ではないぞ?その家臣たちじゃ」
秀吉がにやりと笑う。
「なるほど。心を攻めるは当主ではなく家臣たちですか」
可隆が得心がいった顔で聞く。
「そう。しかしそれは書状では上手くいかぬ。だからこそ某が行って話したいと思いまする」
秀吉が勝家の顔を見て言う。
勝家はしばらく考えて
「……わかった。サル、小谷城を落としてまいれ」
秀吉を見て言った。
「ははーっ!」
秀吉は頭を下げたのち、すぐに本陣を飛び出て小谷城へ向かったのであった。
<1570年6月29日時点>
―歴史乖離率:12.5%
―安定化モジュール:出力上昇
―現実世界アンカー不安定率:不明(無効化処理済)
―管理者権限保有者:氷室真紀
<織田家>
織田信長 (36)…統86 武76 知85 政81 魅88 【真紀】
織田信広 (38)…統64 武77 知81 政83 魅84 【誠人】
浅井長政 (25)…統82 武84 知75 政77 魅81
柴田勝家 (44)…統89 武88 知61 政70 魅85
丹羽長秀 (35)…統82 武75 知83 政82 魅79
羽柴秀吉 (33)…統79 武67 知84 政80 魅86
林秀貞 (57)…統53 武44 知72 政76 魅60
前田利家 (31)…統80 武85 知69 政67 魅76
池田恒興 (34)…統72 武73 知72 政74 魅76
村井貞勝 (50)…統41 武33 知75 政90 魅84
羽柴秀長 (30)…統73 武64 知80 政85 魅88
森可成 (47)…統77 武80 知68 政65 魅69
森可隆 (18)…統74 武66 知78 政79 魅73
佐久間信盛(42)…統65 武70 知54 政52 魅48
黒田官兵衛(24)…統80 武63 知95 政82 魅77
<明智家>
明智光秀 (42)…統86 武80 知94 政78 魅81 【芳香】
細川藤孝 (36)…統76 武63 知88 政84 魅80
<松永家>
松永久秀 (62)…統85 武87 知88 政76 魅66
<徳川家>
本多忠勝 (22)…統73 武86 知59 政49 魅79
榊原康政 (22)…統75 武82 知72 政60 魅74




