42 続きからはじめる(1570年12月17日)【立志】
本エピソードで本作品、第弐巻は完結となります。
(第壱巻と同様、今後外伝などを追加予定です)
この作品の続きは近日掲載予定の第参巻でお楽しみ願います。
『1570年12月17日 徳川家――』 亀姫(真紀)
真田昌幸、武田の使者が来ておおよそ半月が経過していた。
この半月の間で、様々な事が分かってきた。
昌幸の言う通り、徳川家と織田家は切れていた。
とはいうものの積極的に敵対するわけでも正式に決裂したわけではなく、徳川家の方針としてそうなっている、独立性を重視していく、という事だった。
先日も織田家から村井貞勝が使者として、ここ岡崎城に来ていた。
しかし家康は体調不良と称して貞勝とは会わず、本多正信が名代として会ったそうだ。
話し合いの中身を伝え聞く限り、誠人(織田信広)が家康との面会を希望しているとの事だった。
少しピリついたのは徳姫こと五徳を織田家に帰してほしい話もあったようだ。
正信からは家康へ面会希望の旨を伝えること、織田家と敵対したいわけでは無く、五徳は嫡男信康の正室として引き続き徳川家へ居てもらう方針であることを伝えたそうだ。
ま、今後も継続的に対話を続けるようだった。
織田家はまず外へ積極的に出るのではなく、内を固める方針のようだ。
うんうん、それでいい。
頑張れ誠人。
そしてその五徳。
ログインしてからいまだに会えていない。
五徳だけではない。
母である築山殿、兄である信康。
誰とも会えていなかった。
というよりも、この岡崎城内に三人の気配を感じられないのだ。
一体どこに居るのやら……。
いまだこの徳川家はただの小大名だ。
北に武田、東に今川、西に織田。
いずれも大国だ。
現在のこの世界が史実とは大きくかけ離れ始めているとはいえ、いつ潰されてもおかしくはない情勢だ。
徳川が潰される時は家康やその家族も無事には済まない。
母も兄も。もちろん私も。
今の私は10歳の小娘に過ぎない。
武将ですらない。
しかし、史実を知っているその知識と、中身は元織田信長であり25歳の大人だ。
そして女には女としての生き方、答えの導き方がある。
――やってやろうじゃないか。
改めてそう心に決めた真紀だった。
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『1570年12月17日 徳川家――』 織田信広(誠人)
評定から半月。
今のところ領内は落ち着いている。
遣いを出した浅井長政からもすぐにいい返事が来た。
今の浅井家があるのは、信長だけでなく信広のおかげでもある、これまでと変わらず浅井家は織田家を支えていく、と。
ありがたいことだった。
長政は年明け早々には岐阜に来てるれる予定だ。
そこでしっかりと絆を深めなくては。
出来れば血縁を結ぶことも考えたい。
うん、あとで皆に相談しよう。
問題は徳川家だ。
いま一つはっきりしない。
貞勝には引き続き対話を続けるよう指示はしたが……鍵は姉ちゃんかな。
やっぱり一度ログアウトして相談してみよう。
あ。
あとは忘れてたけど本願寺。
評定のあとすぐに使者が来て、お悔やみを述べてくれた。
そして引き続き畿内の安定化を図っていくことで合意も出来た。
上々だ。
あとは官位と武田との交渉だ。
少なくともあと一、二年は領内へ注力したい。
それから先は……これも姉ちゃんと相談だな。
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『1570年12月17日 武田家――』 真田昌幸(音羽卓)
徳川家康との面会後、いまだ甲斐には戻らず駿府に居た。
正直、甲斐は日当たり悪いし寒い。
太平洋に面しているここ駿河は、12月なのに暖かい。
過ごしやすいのだ。
もちろんそれだけでココに居るわけではない。
桶狭間の戦いで今川義元が討たれ、あとを継いだのは今川治部大輔氏真だ。
仕える武田家はその今川家とは同盟関係にある。
現実世界の歴史では、その今川家についてほとんど触れられないが、それだけパッとしないってことだ。
しかし、いまだ駿河、遠江、東三河の一部を有する大国である。
それだけでも今川氏真が無能とは思えなかった。
そして実際昨日会った。
会った感想は……『ただの公家かぶれのボンボン』だった。
だいたい何だあの「おじゃる」言葉は。
武将を生成しているゲームのプログラム自体を見直した方が良い。
明らかにおかしい。
ただ、家臣たちは結構有能だった。
だからこの大国を維持出来ているんだなぁと納得。
そしてふと思い出した。
徳川家で出会った亀姫。
初めて自分以外のプレイヤーに出会えた事もそうだが、会話の端々から感じられる知性。
そして強い眼差し。
もうちょっと会話したかったが、これからも機会は必ずある。
やっとこの世界が楽しくなってきたところだ。
史実でもこの頃に武田は駿河に侵攻している。
織田を助けまくっていたぶん徳川家の領土が史実ほど広がっていないけど、まだまだこれからだ。
この世界で自分がどれだけ出来るのか。
血なまぐさいのは嫌いだけど、やれるだけやってみる。
さて、とりあえずは辛気臭い甲斐に、主のもとに戻るかな……。
そう思いながら真田昌幸は甲斐へ向けて出発した。
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『1570年12月17日 ――丹波』 明智光秀(鈴木芳香)
光秀は生きていた。
ひっそりと居た場所は丹波の山奥にある廃寺だった。
御所事変により明智家は壊滅し、その力はすでに失われていた。
確かに信長は討ち取った。
だが、それだけだった。
織田家は信長の死で崩れることなく、義兄の信広が継ぎ上手く運営している。
思っていた以上に織田家の結束が固かった。
「私には出来なかったものだな……」
思わず自嘲的に呟いてしまった。
問題はこれからである。
いまや明智光秀は帝を連れ出そうとした大罪人であり、失地回復は見込める状況に無かった。
どこの領民も仕えるはずもなく、また武将として雇う大名も見込めなかった。
そうなると答えは二つしか無い。
死ぬか。
変わるか。
もちろん死ぬつもりなどない。
となると、変わるしかないのだ。
「くっくっく……」
思わず光秀は独り笑いしていた。
そして。
「よし」
と更に独り呟く。
そして気を取り直して、ある事を心に決めた。
廃寺の奥にあった硯と固くなった筆、些末な質の古紙を前にすると姿勢を正し、ある文字を書き始めた。
「異説を事実にしてみせよう」
そう言いながら書いた文字は――
――南光坊天海
「今日からこれが私の名だ」
そう言ったのち、丹波の山奥の名もなき廃寺の中に笑い声が響き渡った。
~~~~~第参巻へ続く~~~~~
<1570年12月2日時点>
―歴史乖離率:9.2%
―安定化モジュール:出力平常
―現実世界アンカー不安定率:不明(無効化処理済)
―管理者権限保有者:氷室誠人
<徳川家>
亀姫 (10)…統29 武15 知87 政81 魅69 【真紀】
徳川家康 (27)…統83 武77 知85 政80 魅85
本多正信 (32)…統45 武22 知90 政87 魅75
<織田家>
織田信広 (38)…統72 武77 知83 政83 魅85 【誠人】
<武田家>
真田昌幸 (23)…統80 武72 知85 政83 魅74 【卓】
<浪人>
南光坊天海(42)…統86 武80 知94 政78 魅81 【芳香】




