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氷室の野望(仮)第弐巻 ~立志編~  作者: 和音


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4 続きからはじめる(1570年6月23日 織田家)【策動】


『1570年6月23日 織田家――』



評定から一週間後。


領内では着々と出陣の準備が進み、尾張からも兵が続々と集まっていた。

また、今回は徳川からも援軍が来ることになっており、数日後には岐阜城下へ到着予定となっていた。


岐阜城内では毎日のように軍議が開かれており、大筋は官兵衛の策に沿って作戦がたてられていた。

しかし、今回の北近江攻めにおける最大の懸念点は、浅井ではなく明智だった。



「姉ちゃん、この間の評定の時に言ってた、明智への備えって何?」

そう聞いてきたのは信広(誠人)。

もちろん人払いをした私の部屋で二人だけでの会話である。


「あれはね、誠人には言うけど他の人には絶対言ったらダメよ」

「うん」

「光秀の手がどこまで入り込んでるか、警戒しすぎで丁度いいぐらいだと思うし」

「うんうん」

「で、その備えなんだけど……」


ずばり、備えとは本願寺だった。



石山本願寺――

ここは城ではなく、摂津国にある浄土真宗の寺院である。

史実では後年、大坂城が建てられる場所でもある。

寺院とはいえ、幾重にも水堀と土塁が築かれており、その内側には寺内町と呼ばれる町があるのだ。


私はそこを治める本願寺とこの二年間絶え間なく誼を通じてきた。


本来、一向宗と浄土真宗は別のものであった。

しかし室町時代、浄土真宗本願寺八世の蓮如が北陸での布教の際、同じ浄土教の土壌を有した僧侶や信者と結びつきを強めて一向宗を取り込む形になった。


史実では、その一向宗と信長は対立していたが、私はその勢力を味方につけるため『真・本圀寺の変』ののち、贈り物と使者を遣わして友好度を上げてきた。



「なるほど。本願寺ね」

「そう。顕如さんとは話がついてて、浅井に攻め込むと同時に摂津で一向一揆を起こしてもらう事になってる」

誠人は腕を組んだまま、ゆっくりと頷いた。

「……つまり、明智の足を止めるってわけか」

「完全に止めるのは無理。でも遅らせることはできる」

私は指を一本立てる。

「光秀は合理主義者。利益のない戦はしない。

摂津で一揆が起これば、放置すれば領内が崩れるし対応すれば北近江どころじゃなくなる」

「どっちに転んでも時間が稼げる、か」

「そういうこと」


誠人は小さく笑った。

「相変わらずえげつないな、姉ちゃん」

「褒め言葉として受け取っとく」


一瞬、沈黙が落ちる。


その後、誠人が少しだけ真剣な顔になった。

「でもさ」

「うん?」

「それってつまり、本願寺にかなり借りを作ることにならない?」


核心だった。


私は軽く息を吐く。

「なる。間違いなくね」

「後で面倒になるぞ、絶対」

「分かってる」


それでも、と私は続けた。

「今は勝つことが最優先」

「……だな」


誠人はそれ以上は何も言わなかった。

現状、この一手が最善だと理解しているからだ。




--------------------------




その頃――摂津国石山本願寺。


巨大な寺院都市の一角の薄暗い堂内で、一人の僧が静かに座していた。


顕如はゆっくりと目を開く。

その前には、織田からの使者が控えていた。


「……いよいよ、でございますな」

顕如は穏やかな声で言う。


「はっ。御約定の通り――」

使者が言葉を続ける前に、顕如は軽く手を上げて制した。

「分かっております」

静かに立ち上がる。


「門徒に伝えよ」

その声は決して大きくはない。

だが、不思議と重みがあった。


「時は来た、と」

使者は深く頭を下げる。

「ははっ!」


顕如は外へと歩み出た。


その先に広がるのは無数の家々――寺内町。

そこに暮らす人々は皆、ただの民に見える。


しかし。

一度火がつけば、それは兵へと変わるのだ。


顕如は空を見上げた。

「南無阿弥陀仏……」


静かな祈り。

その裏にあるのは――戦の覚悟だった。




--------------------------




同時刻――近江国、浅井領内。


山間に築かれた小さな支城。

その奥。


薄暗い一室に一人の男が座していた。

浅井長政。


かつて近江を駆けた若き当主は、今や幽閉の身である。


だが、その目は死んでいなかった。

「……外が騒がしいな」

呟くように言う。


障子の向こうでかすかな物音がする。

それは風かと思えるかすかな音。


「――来たか」

長政の口元が、わずかに緩んだ。


その瞬間。

闇の中を影が一つ滑るように動いた。


音もなく。

気配すらなく。


城の外壁を越えて内へと侵入する影。

その先頭にいる男が静かに呟く。


「……ここが一つ目」

黒田官兵衛だった。


その背後には数名の忍び。


そして――

長槍を担ぎ、静かに笑う一人の武将は前田利家だった。


「いい夜だな、官兵衛殿」

「騒ぐにはまだ早いかと」

「違いねぇ」

利家は歯を見せて笑う。


「でもよ――」

その目が獣のように光る。

「斬り込みは任せろ」


官兵衛はわずかに頷いた。

「頼りにしております」


そして、前を見据える。

「――行きましょう」


その一歩が。

歴史を大きく動かすことになる。




<1570年6月23日時点>

―歴史乖離率:12.5%

―安定化モジュール:出力上昇

―現実世界アンカー不安定率:不明(無効化処理済)

―管理者権限保有者:氷室真紀


<織田家>

織田信長 (36)…統86  武76  知85  政81  魅88 【真紀】

織田信広 (38)…統64  武77  知81  政83  魅84 【誠人】

柴田勝家 (44)…統89  武88  知61  政70  魅85

丹羽長秀 (35)…統82  武75  知83  政82  魅79

羽柴秀吉 (33)…統79  武67  知84  政80  魅86

林秀貞  (57)…統53  武44  知72  政76  魅60

前田利家 (31)…統80  武85  知69  政67  魅76

池田恒興 (34)…統72  武73  知72  政74  魅76

村井貞勝 (50)…統41  武33  知75  政90  魅84

羽柴秀長 (30)…統73  武64  知80  政85  魅88

森可成  (47)…統77  武80  知68  政65  魅69

森可隆  (18)…統74  武66  知78  政79  魅73

佐久間信盛(42)…統65  武70  知54  政52  魅48

黒田官兵衛(24)…統80  武63  知95  政82  魅77

<明智家>

明智光秀 (42)…統86  武80  知94  政78  魅81 【芳香】

細川藤孝 (36)…統76  武63  知88  政84  魅80

<松永家>

松永久秀 (62)…統85  武87  知88  政76  魅66

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