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氷室の野望(仮)第弐巻 ~立志編~  作者: 和音


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3/15

3 続きからはじめる(1570年6月16日 織田家)【献策】

今回は信広目線です


『1570年6月16日 織田家――』



信広(誠人)の目が細くなる。

「申してみよ」


官兵衛は一歩静かに進み出た。

その動きには一切の無駄がない。

まだ若いはずだが、場の空気を読む術に長けているのが見て取れた。

「恐れながら――浅井を討つにあたり、正面よりの力攻めは下策にございます」

「ほう?」

柴田勝家が低く唸る。


官兵衛は続ける。

「現在、浅井は内に火種を抱えております」


信長の目がわずかに細まる。

「長政か」

「はっ。幽閉されているとはいえ、未だに家中には長政様を慕う者が少なからずおります。

そこを突くべきかと」

「具体的にはどうする」

信広が問う。

官兵衛は迷いなく答えた。

「二手にございます」


広間の視線が一斉に集まる。

「一つ。織田家は堂々と北近江へ侵攻し、久政を外へ引きずり出します」


「正攻法だな」

丹羽長秀が頷く。

「しかし、それだけではございませぬ」

官兵衛はわずかに笑みを浮かべる。


「もう一つ――裏にて動きます」

その言葉に、空気が引き締まる。

「長政様を救出いたします」


ざわり、と場が揺れた。

「なに……救出だと?」

池田恒興が目を見開く。


「はい。浅井家の"正統"をこちらに取り戻すのです」


信長は腕を組んで、じっと官兵衛を見ている。

その目は試すようでもあり楽しむようでもあった。

「続けよ」

「長政様を救い出し御旗として掲げれば――浅井の兵の半数は戦わずしてこちらに傾きましょう」

「……内側から崩す、か」

森可成が低く呟く。


官兵衛は頷いた。

「加えて、朝倉は現在浅井と不和。援軍は望めませぬ。

明智が動く前に決着をつけることが肝要にございます」


その一言に、信広の表情がわずかに変わる。

「時間との勝負、というわけか」

「はっ。よって――」

官兵衛は顔を上げ、まっすぐ信長を見据えた。

「陽動と奇襲を同時に行う“二正面一体”の策を進言いたします」


静寂。


そして――


「面白い」

信長が笑った。

「実に面白いぞ官兵衛」

その声には明らかな愉悦が混じっていた。


「だが、誰が長政を救い出す」

前田利家が腕を組みながら問う。


官兵衛は一瞬だけ視線を巡らせ――

そして静かに言った。

「その任――この黒田官兵衛にお任せ願いたく」


「ほう、自らか」

柴田勝家が口元を歪める。

「危険だぞ。潜入となれば生きては戻れぬやもしれぬ」


だが官兵衛は一切揺るがない。


「承知の上にございます」

その言葉に嘘はない。

覚悟がにじみ出ていた。


信広はしばし沈黙し――やがて小さく笑った。

「なるほどな……」

そして信長を見る。

「殿。任せてみる価値はあるかと」


信長はゆっくりと頷いた。

「うむ」

その一言で全てが決まった。

「黒田官兵衛」


「はっ」

「長政を連れてこい。生きてな」

「――御意」

官兵衛は深く頭を下げた。


その姿を見ながら信広は胸の内で呟く。


―史実通り、この男はとんでもない"軍師"になる……いや、もうなっているか。


広間の空気はすでに戦のものへと変わっていた。

「では各々、準備にかかれ」

信長が立ち上がる。


「此度の戦――ただの戦ではない」

その視線が鋭く光る。

「織田が再び畿内へ打って出る、最初の一手よ」

重く、そして力強い言葉だった。


家臣たちは一斉に頭を下げる。

「「「ははっ!!」」」


こうして――

浅井攻略戦、そして長政奪還作戦が動き出した。




--------------------------




評定が終わった後の大広間には、先ほどまでの喧騒が嘘のように静けさが戻っていた。

その静寂の裏ではすでに戦が動き始めている。


廊下を進む官兵衛の足取りは変わらず静かだった。

だが、その胸中では幾つもの策が高速で組み上がっていく。


―時間がない――明智が動く前に決める。


「黒田殿」

背後から声がかかった。


振り返ると、そこには信広が立っていた。

その顔には人懐っこい笑みが浮かんでいる。

「少し、よろしいですかな」

「これは信広様」

官兵衛は一礼する。


信広は周囲を軽く見回し、人払いするように近づいた。


「いやぁ……とんでもない策を出されましたな」

「過分なお言葉にございます」

「しかし」

信広の目がわずかに細くなる。


「長政様の居場所、見当はついておるのですか?」


一瞬の間。


官兵衛は、わずかに口元を上げた。

「はい。おおよそは」

「ほう?」

信広の興味が一気に強まる。


「小谷城――ではございませぬ」

その一言に、信広の表情が変わった。


「……では、どこに?」

「久政殿は用心深い御仁にございます。

長政様を本拠に置けばいざという時に奪還される危険がある」

「なるほど」

「よって――外に出しているはず」

官兵衛は廊下の先を見据えながら言った。

「おそらくは、浅井領内の支城。しかも忠誠の厚い家臣に預けている」


信広は腕を組む。

「絞れておるのか」

「三つまで」

「……三つ」


信広は小さく笑った。

「それで十分、という顔ですな」

官兵衛もまた、わずかに笑う。

「一つ潰せば、残りは二つ。二つ潰せば、残りは一つにございます」

「違いない」


信広はそこで一歩近づいた。

「で、その潜入――官兵衛殿一人でやるつもりか?」

「いえ」

官兵衛は首を横に振る。

「少数にございます」

「誰を連れていく」

その問いに、官兵衛は一瞬考え――

「忍びを数名。それと、剣の立つ者を一人」

「ほう」

「いざという時の"突破口"にございます」

信広はニヤリと笑った。

「なら、適任がおる」


官兵衛が視線を向ける。

「前田利家殿はどうです?」

「……ほう」

「派手ではございますが、あの御方は修羅場に強い」

「確かに」

官兵衛は少しだけ考え――頷いた。

「一考の価値ありと存じます」


信広は満足そうに笑った。

「決まりですな。わしから話を通しておきましょう」

「かたじけない」

一礼する官兵衛。


だが、信広はすぐに真顔に戻った。


「――官兵衛殿」

「はっ」

「一つ、忠告を」


その声は低かった。


「浅井は甘く見ぬことです。久政も家臣も……骨のある連中です」


官兵衛は静かに頷く。

「承知しております」

「それともう一つ」

信広はわずかに目を細めた。


「明智光秀――あの男は、もっと厄介だ」


空気が、わずかに重くなる。

官兵衛の目がわずかに鋭くなった。

「……やはり、動きますか」

「間違いなくな」

信広は断言する。

「織田が動けば、必ずどこかで噛んでくる」


官兵衛はしばし沈黙し――

「ならば尚更、速さが肝要にございます」

そう言い切った。


信広は満足そうに頷いた。

「頼もしい限りだ」

そして、くるりと背を向ける。

「では、戦場で会いましょうぞ」

「はっ」

信広の背中が去っていく。


官兵衛はその姿を見送りながら、静かに息を吐いた。


―時間との勝負――か。


そして、ゆっくりと歩き出す。

向かう先はすでに決まっている。


――闇の中。


浅井領内。

その奥深くに囚われた、一人の男。

浅井長政。


その命運を握るのはこれから動く一つの策。


そして――

黒田官兵衛という男だった。




<1570年6月16日時点>

―歴史乖離率:12.5%

―安定化モジュール:出力上昇

―現実世界アンカー不安定率:不明(無効化処理済)

―管理者権限保有者:氷室真紀


<織田家>

織田信長 (36)…統86  武76  知85  政81  魅88 【真紀】

織田信広 (38)…統64  武77  知81  政83  魅84 【誠人】

柴田勝家 (44)…統89  武88  知61  政70  魅85

丹羽長秀 (35)…統82  武75  知83  政82  魅79

羽柴秀吉 (33)…統79  武67  知84  政80  魅86

林秀貞  (57)…統53  武44  知72  政76  魅60

前田利家 (31)…統80  武85  知69  政67  魅76

池田恒興 (34)…統72  武73  知72  政74  魅76

村井貞勝 (50)…統41  武33  知75  政90  魅84

羽柴秀長 (30)…統73  武64  知80  政85  魅88

森可成  (47)…統77  武80  知68  政65  魅69

森可隆  (18)…統74  武66  知78  政79  魅73

佐久間信盛(42)…統65  武70  知54  政52  魅48

黒田官兵衛(24)…統80  武63  知95  政82  魅77

<明智家>

明智光秀 (42)…統86  武80  知94  政78  魅81 【芳香】

細川藤孝 (36)…統76  武63  知88  政84  魅80

<松永家>

松永久秀 (62)…統85  武87  知88  政76  魅66

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