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氷室の野望(仮)第弐巻 ~立志編~  作者: 和音


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31/36

31 続きからはじめる(1570年11月2日 織田家・明智家)【愛知川の戦い-決着】

長かった愛知川の戦いの最終盤です。


愛知川西岸――



織田信長(氷室真紀)。

明智光秀(鈴木芳香)。


互いの視線は逸れない。


周囲では数万の兵が殺し合っている。

槍が折れ悲鳴が飛び、血煙が舞う。

だが、その瞬間だけは戦場全体が二人を中心に静止したかのようだった。


信長はふと空を見上げる。

上空には

『織田軍:61,274 対 明智軍:53,011』

の表示。

布陣した時点では明智軍の方が多かったが、逆転していた。


戦場における、まさかの大将同士の対峙。

リアルではまずありえない。

ゲームなればこそ、か。



そして。

朝日を浴びた二騎が、土煙を裂いて駆ける。


光秀が先に動いた。

「はあああっ!!」

白馬が跳ねる。


同時に放たれた斬撃は、速い。

甲高い金属音。


信長の太刀が受け止める。

火花が散った。

「っ……!」

信長の腕へ重みが走る。

速さだけではない。重い。


光秀は笑っていた。

「いいねえ……!」

さらに追撃。

横薙ぎ。

返す刃。

突き。


だが信長もまた退かない。


「甘いわ!!」

信長の太刀が唸る。


光秀の頬を掠めて血が飛んだ。

その瞬間、光秀の目が歓喜に染まる。

「そうだ……!」


鍔迫り合い。

互いの顔が目前まで迫る。


「貴様はそうでなくてはならない、信長」

「戯れ言を」

「天下を獲る器とは、鬼になれる者だけだ」


信長の目が細まる。


「ならば貴様は何だ?」

「私か?」

光秀が笑う。

「私は――天下そのものよ」


押し返す。

両者の馬が同時に後退した。


その時だった。

「殿おおおおっ!!」

横合いから叫び。

桔梗紋の騎馬武者が信長へ斬り込む。


明智秀満。


「させるかぁっ!!」

今度は逆側から赤備えが突っ込む。


前田利家。


轟音。

四騎が入り乱れる。


「信長様より離れろ!!」

利家の朱槍が唸る。

秀満が太刀で弾き返した。

「邪魔だ、小僧!!」


一方、信長と光秀は再び距離を取る。

その周囲へは両軍の兵が雪崩れ込み始めていた。


「囲め!!」

「信長を討て!!」

「光秀様を守れ!!」

もはや一騎討ちではない。

戦場そのものが二人へ収束していた。


官兵衛が叫ぶ。

「殿!長居は危険にございます!」


だが信長は動かない。

光秀もまた、馬上で微笑んでいた。

「退くの?」

挑発する。

だが信長は鼻で笑う。

「退くのは貴様だ、十兵衛」


その瞬間――


ぶおおおおおおおおっ!!!


新たな法螺貝が戦場を裂いた。

全員の動きが止まる。


南方から土煙。


「……何だ?」

藤孝が目を見開く。

そこに翻っていた旗は――三つ葉葵。


「徳川……?」

秀吉が絶句する。


現れたのは徳川軍。

先頭には、本多忠勝と榊原康政。


そして中央の金の扇馬印。

徳川家康その人だった。


「馬鹿な……!」

光秀の笑みが、初めて完全に消えた。


本来、三河防衛に専念しているはずだった。

織田との約定でも援軍は出さぬはずだった。


なのに何故。


「光秀えええっ!!」

忠勝が蜻蛉切を掲げ突撃する。

徳川勢一万が、側面から明智軍へ食らいついた。


陣形が揺らぐ。


「殿!」

藤孝が叫ぶ。

「側面が崩れます!」


光秀は黙っていた。

その視線は信長へ向いている。


信長は笑った。獰猛に。

「読めなかったか、十兵衛」


「……なるほど」

光秀がぽつりと言う。

「半蔵か」


最初からだ。


服部半蔵。

徳川家。

あの時評定に居た理由。

上洛軍へ参加しないと言った理由。


全て。

欺瞞だった。


光秀はゆっくり笑った。

だがその笑みは、これまでとは違った。


歓喜ではない。

敗北を理解した者の笑みだった。

「やってくれるねえ……信長」


戦線が崩れ始める。

南から徳川。正面から織田。

さらに柴田勝家隊が西へ回り込んでいる。


明智軍は包囲されつつあった。


「殿!!お退き下さい!」

秀満が叫ぶ。

「まだ負けていない」

光秀は静かに答える。

だが藤孝が前へ出た。

「いいえ。ここで死ねば終わります」

「……」

「天下は、生きた者しか獲れませぬ」


沈黙。


その間にも、兵たちは死んでいく。


光秀は目を閉じ、そしてふっと笑った。

「そうだね」

次の瞬間、光秀が馬首を返した。


「全軍後退」

その声は、不思議なほど静かだった。

だが、戦場にははっきり届いた。


「退けぇぇぇぇっ!!」

秀満が絶叫する。


桔梗紋の軍勢が崩れながら動き出す。

けれど敗走ではなく、統制された動きだった。

光秀は最後まで軍を壊さなかった。


信長はその背を見つめている。

追うか。

否か。


官兵衛が叫ぶ。

「殿!今なら討てます!」

だが信長は太刀を下ろした。

「いや」


その一言に皆が驚く。

信長は遠ざかる白馬を見据えたまま言った。

「奴はまだ死なん」


風が吹く。

愛知川の血の臭いを運んでいく。


そして、信長は静かに呟いた。

「次だ、光秀」


敗れた明智軍は西へ退く。

勝者となった織田・徳川連合軍は、ついに京への道を開く。


だが誰も知らない。

この戦は天下を巡る戦いの、始まりに過ぎなかったことを。




<1570年11月2日時点>

―歴史乖離率:12.5%

―安定化モジュール:出力上昇

―現実世界アンカー不安定率:不明(無効化処理済)

―管理者権限保有者:氷室真紀


<織田家>

織田信長 (36)…統86  武76  知85  政81  魅88 【真紀】

織田信広 (38)…統64  武77  知81  政83  魅84 【誠人】

柴田勝家 (44)…統89  武88  知61  政70  魅85

丹羽長秀 (35)…統82  武75  知83  政82  魅79

羽柴秀吉 (33)…統79  武67  知84  政80  魅86

前田利家 (31)…統80  武85  知69  政67  魅76

池田恒興 (34)…統72  武73  知72  政74  魅76

村井貞勝 (50)…統41  武33  知75  政90  魅84

羽柴秀長 (30)…統73  武64  知80  政85  魅88

森可成  (47)…統77  武80  知68  政65  魅69

森可隆  (18)…統74  武66  知78  政79  魅73

佐久間信盛(42)…統65  武70  知54  政52  魅48

黒田官兵衛(24)…統80  武63  知95  政82  魅77

藤堂高虎 (14)…統75  武77  知80  政71  魅74

<明智家>

明智光秀 (42)…統86  武80  知94  政78  魅81 【芳香】

細川藤孝 (36)…統76  武63  知88  政84  魅80

<徳川家>

本多忠勝 (22)…統73  武86  知59  政49  魅79

榊原康政 (22)…統75  武82  知72  政60  魅74

服部半蔵 (32)…統73  武83  知74  政45  魅73

<浅井家>

浅井長政 (25)…統82  武84  知75  政77  魅81

<武田家>

真田昌幸 (23)…統80  武72  知85  政83  魅74 【卓】

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