表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷室の野望(仮)第弐巻 ~立志編~  作者: 和音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/36

28 続きからはじめる(1570年11月2日 織田家・明智家)【愛知川の戦い-準備】


『1570年11月2日 織田家――』



愛知川東岸、野良田にある織田本陣――


夜明け前。

空はまだ群青色に沈み、地平線の向こうがわずかに白み始めていた。


本陣中央の軍議の場。

織田信長(真紀)、織田信広(誠人)、柴田勝家、丹羽長秀、羽柴秀吉、黒田官兵衛らが集っていた。


陣幕の外では、夜襲に参加した者たちが続々と帰還していた。

火薬の臭い。

焦げた布の臭い。

それらをまとった兵たちが無言で行き交う。



「被害は?」

信長が問う。

官兵衛が答える。

「仕掛けた忍び衆二百。うち半数ほどが未帰還でございます」

「……そうか」

信長は短く頷いた。


「されど戦果は大きゅうございます」

官兵衛は地図へ目を落とす。

「兵糧陣を三つ焼き払い、さらに和田惟政隊は壊滅。

少なくとも数日は明智勢の動きを鈍らせましょう」


「数日で足りる」

信長が言った。

その一言に秀吉が目を細める。

「何か、まだござるのですか?」


信長は答えずに信広を見る。

信広もまた静かに頷いた。


「殿」

長秀が静かに口を開いた。

「昨夜の火攻め。あれだけでは決定打にはなりませぬ。

光秀ほどの男ならいずれ立て直しまする」

「うむ」

信長は頷いた。

「ゆえに、奴が立て直す前に崩す」


空気が変わる。


官兵衛が静かに聞いた。

「……渡河、なされますか?」


信長はゆっくりと軍配を取る。

そして愛知川を横一文字になぞった。

「本日正午。全軍渡河」


その場が静まり返る。


勝家の口元が吊り上がった。

「ようやくですな」

だが秀吉は険しい。

「真正面から……?」


「違う」

信長が言う。


そして地図上の一点を指した。

常光寺。


「長秀」

「はっ」

「其方が陽動を務めよ」

長秀が即座に理解する。

「細川藤孝を引き付ければよろしいのですか?」

「うむ。奴は堅い。必ず正面を維持する」


さらに信長の指が南へ滑る。

八日市方面。


「勝家」

「はっ」

「惟政残党を掃討しつつ南から回れ。敵の退路を断つ」


勝家が獰猛に笑う。

「承知仕りました!」


そして最後。


信長の軍配は、安土山正面へ落ちた。

「本隊三万。

儂自ら光秀を討つ」


沈黙。

誰も軽々しく口を挟めなかった。


それはつまり――

総大将同士の激突である。

この戦の趨勢を、一戦で決めるという意味だったからだ。



その時、陣幕の外から再び伝令が飛び込んでくる。

「申し上げます!」

「申せ」

信広が言う。


「明智軍、西岸にて再編を開始!

さらに安土山より兵を下ろしております!」


「来たか」

信長が笑う。

官兵衛が険しい顔で呟く。

「早い……」

昨夜、あれほどの混乱を起こしたにもかかわらず、もう軍を立て直している。


普通の将ではない。

明智光秀は混乱の中でも冷静だった。


「やはり化け物ですな……」

信広も険しい顔で呟く。

すると信長は不意に笑った。

「当然だ」


皆が信長を見る。


「だから儂が討つ価値があるのだ」

その目は燃えていた。




--------------------------




同刻。

安土山麓、明智本陣――



夜襲の混乱は、まだ完全には収まっていなかった。


黒煙。

負傷兵の呻きと怒号。

水桶を運ぶ足軽たち。


だがその中心、本陣だけは異様なほど静かだった。


光秀は地図を前に座っている。


細川藤孝。

明智秀満。

荒木村重。

一色藤長。

皆、昨夜から一睡もしていない。


「……惟政は駄目か」

光秀がぽつりと言った。


秀満が頭を下げる。

「申し訳ございませぬ。未だ所在不明にございます」

「なら死んだかな」

光秀はあっさり言った。


藤長が顔をしかめる。

だが誰も反論しない。


光秀は扇を閉じると立ち上がった。

「で、信長は?」

藤孝が答える。

「動きます」

「うん」

光秀は笑う。

「そうだろうね」


そして、地図上の愛知川へ指を落とした。

「昨夜の火は布石」

「渡河してきますな」

村重。

「しかも今日」

藤孝が続ける。

光秀は満足そうに頷いた。

「素晴らしい。やっぱり信長は面白い」


その目が細まる。

「普通の将なら守る。だが信長は攻める。自分から盤面を壊しに来る」


そして、地図上の野良田本陣へ扇を置いた。

「だからこそ――殺しやすい」


空気が張る。


秀満が低く問う。

「御策は?」


光秀は笑みを消した。

「信長は、自分が主役だと思っている」

静かな声だった。

「だから、自分が出れば戦が決まると信じている。ならばその思い込みごと断つ」


そして、光秀は和田山方面を指差した。

「秀満」

「はっ」

「本隊を半数、山へ上げろ」

「……山へ?」

「信長が渡河した瞬間だ。横腹を食い破る」


藤孝が息を呑む。

「囮……ですか」

「そう」

光秀は笑う。

「私はね。勝つためなら、本陣すら餌にする」


その瞬間、藤孝は理解した。

昨夜、光秀が本陣移動を拒否した理由を。

最初からだ。

信長を誘っていたのだ。


そして光秀は、遠く東岸を見据えた。

朝日が昇り始めている。

その光を浴びながら、明智光秀は静かに呟いた。

「来い、信長。

天下を獲るのは――どちらか一人だ」




<1570年11月2日時点>

―歴史乖離率:12.5%

―安定化モジュール:出力上昇

―現実世界アンカー不安定率:不明(無効化処理済)

―管理者権限保有者:氷室真紀


<織田家>

織田信長 (36)…統86  武76  知85  政81  魅88 【真紀】

織田信広 (38)…統64  武77  知81  政83  魅84 【誠人】

柴田勝家 (44)…統89  武88  知61  政70  魅85

丹羽長秀 (35)…統82  武75  知83  政82  魅79

羽柴秀吉 (33)…統79  武67  知84  政80  魅86

前田利家 (31)…統80  武85  知69  政67  魅76

池田恒興 (34)…統72  武73  知72  政74  魅76

村井貞勝 (50)…統41  武33  知75  政90  魅84

羽柴秀長 (30)…統73  武64  知80  政85  魅88

森可成  (47)…統77  武80  知68  政65  魅69

森可隆  (18)…統74  武66  知78  政79  魅73

佐久間信盛(42)…統65  武70  知54  政52  魅48

黒田官兵衛(24)…統80  武63  知95  政82  魅77

藤堂高虎 (14)…統75  武77  知80  政71  魅74

<明智家>

明智光秀 (42)…統86  武80  知94  政78  魅81 【芳香】

細川藤孝 (36)…統76  武63  知88  政84  魅80

<松永家>

松永久秀 (62)…殺害

<徳川家>

本多忠勝 (22)…統73  武86  知59  政49  魅79

榊原康政 (22)…統75  武82  知72  政60  魅74

服部半蔵 (32)…統73  武83  知74  政45  魅73

<浅井家>

浅井長政 (25)…統82  武84  知75  政77  魅81

<武田家>

真田昌幸 (23)…統80  武72  知85  政83  魅74 【卓】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ