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氷室の野望(仮)第弐巻 ~立志編~  作者: 和音


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27/36

27 続きからはじめる(1570年11月1日 明智家)【愛知川の戦い-揺動】


『1570年11月1日 明智家――』



安土山の麓、明智本陣。

夜。


湖東を吹き抜ける風は冷たく、陣幕の外では篝火が揺れていた。

遠くでは足軽たちの話し声。

馬のいななき。

武具の擦れる音。

七万を超える軍勢の気配が闇の中に蠢いていた。


その中心。

本陣では明智光秀が地図を前に静かに酒を口へ運んでいた。


細川藤孝。

明智秀満。

荒木村重。

一色藤長。

重臣たちもまた、黙して座している。


「……妙ですな」

沈黙を破ったのは藤孝だった。


「何が?」

光秀は盃を置きながら聞く。

「織田勢です。昼の報せ以降、野良田本陣の動きが静かすぎる」

「慌てて後詰を回すと思っていたか?」

光秀は笑う。

「はい」

「あれは感情で戦をする男じゃない」

そう言って再び酒を飲む。



その時だった。

本陣の外がわずかに騒がしくなる。

「……?」

秀満が眉をひそめた。


次の瞬間。


「火だあああっ!!」


絶叫。

全員が一斉に顔を上げる。


「何だと?」

村重が立ち上がる。

陣幕の外。

西側の空が赤く染まり始めていた。


「申し上げます!!」

血相を変えた伝令が転がり込む。

「西の兵糧陣より出火!」

「何?」

藤孝が目を見開く。

「敵襲か!?」

秀満。


「わ、わかりませぬ!しかし火は瞬く間に――」


その瞬間。

ドーーーーーン!!


轟音。地面が震える。


「……火薬?」

光秀の目が細まる。


続けざまに。

第二、第三と爆音が鳴り響く。

夜空へ火柱が立ち上がる。

兵たちの悲鳴、怒号が飛び交っている。


「敵襲ーーー!!!」

「織田勢だ!!」

「違う、六角残党だ!」

「火を消せ!!」

情報が錯綜していた。


光秀は無言で立ち上がる。

そして静かに言った。

「……なるほど」

その目は笑っていた。

「そう来たか、信長」


「殿!」

藤孝が叫ぶ。

「本陣を移すべきです!」

「まだだ」

光秀は即答した。


「しかし!」

「慌てるな。これは本命ではない」

光秀は扇を閉じた。

「信長の狙いは火そのものじゃない。混乱だ。

夜襲と見せかけてこちらの陣形を崩す気だよ」


すると再び伝令が飛び込んできた。

「申し上げます!!安土山南麓でも火の手が!!」


「……なに?」

さすがの光秀もわずかに眉を動かした。

「兵糧だけではない?」

藤孝。


その時だった。


ひゅるるるるるーーーー。

夜空を裂く音。


次の瞬間。

本陣近くへ火矢が突き刺さった。


「敵襲ーーーっ!!!」

外で悲鳴が上がる。


そして、闇の向こうから鬨の声が聞こえる。

「「「おおおおおおおおっ!!」」」


秀満が叫ぶ。

「織田軍!?」

「違う」

光秀が即答した。

「数が少ない」

「では誰が――」

光秀の脳裏に一つ思い浮かぶ。


「……忍びか」

信長が放った"例の者たち"。それは正規兵ではなかった。

近江に潜ませていた忍び衆。


火。そして攪乱。

戦ではなく、混乱そのものを作るための駒だった。


光秀は口元を吊り上げた。

「面白い……!」



だが次の瞬間。



「殿っ!!」

さらに別の伝令が飛び込んでくる。

「和田惟政隊より急報!

佐和山城へ向かった部隊が逆襲を受け壊滅!!」


「……何?」

初めて光秀の声色が変わった。

「伏兵にございます!惟政様の行方は知れず――」

そこまで聞いた瞬間、藤孝が顔を上げる。

「まさか……!」



光秀は沈黙した。


信長の狙い。

それは、安土山を焼くことではなかった。

和田惟政を孤立させること。

兵站線を脅かす刃を逆に切り落とすため、光秀本陣そのものを囮にしたのだ。


「……はは」

光秀が笑う。

低く。静かに。

そして、愉快そうに。


「いいねえ、信長」

炎が夜空を赤く染める。


その光を瞳に映しながら、明智光秀は初めて本当の意味で高揚していた。

「そうでなくては――天下は獲れない」




<1570年11月1日時点>

―歴史乖離率:12.5%

―安定化モジュール:出力上昇

―現実世界アンカー不安定率:不明(無効化処理済)

―管理者権限保有者:氷室真紀


<織田家>

織田信長 (36)…統86  武76  知85  政81  魅88 【真紀】

織田信広 (38)…統64  武77  知81  政83  魅84 【誠人】

柴田勝家 (44)…統89  武88  知61  政70  魅85

丹羽長秀 (35)…統82  武75  知83  政82  魅79

羽柴秀吉 (33)…統79  武67  知84  政80  魅86

前田利家 (31)…統80  武85  知69  政67  魅76

池田恒興 (34)…統72  武73  知72  政74  魅76

村井貞勝 (50)…統41  武33  知75  政90  魅84

羽柴秀長 (30)…統73  武64  知80  政85  魅88

森可成  (47)…統77  武80  知68  政65  魅69

森可隆  (18)…統74  武66  知78  政79  魅73

佐久間信盛(42)…統65  武70  知54  政52  魅48

黒田官兵衛(24)…統80  武63  知95  政82  魅77

藤堂高虎 (14)…統75  武77  知80  政71  魅74

<明智家>

明智光秀 (42)…統86  武80  知94  政78  魅81 【芳香】

細川藤孝 (36)…統76  武63  知88  政84  魅80

<松永家>

松永久秀 (62)…殺害

<徳川家>

本多忠勝 (22)…統73  武86  知59  政49  魅79

榊原康政 (22)…統75  武82  知72  政60  魅74

服部半蔵 (32)…統73  武83  知74  政45  魅73

<浅井家>

浅井長政 (25)…統82  武84  知75  政77  魅81

<武田家>

真田昌幸 (23)…統80  武72  知85  政83  魅74 【卓】

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