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氷室の野望(仮)第弐巻 ~立志編~  作者: 和音


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26 続きからはじめる(1570年11月1日 織田家・明智家)【愛知川の戦い-策謀】


『1570年11月1日 織田家――』



湖東一帯を覆う朝靄は、両軍の旌旗によって裂かれていた。

愛知川の流れは静かだった。

だが、その両岸に集結した兵たちの熱気は晩秋の冷気を押し返していた。


西岸。

安土山の麓から扇状に展開する明智軍。


東岸。

野良田から常光寺に至るまで幾重にも布陣した織田軍。


両軍の総勢14万五千。

布陣から4日が経つものの、いまだ両軍に動きはない。




--------------------------




安土山麓の光秀本陣――



この日も朝から主だった武将が集まり軍議が開かれていた。


「そろそろ、かな?」

明智光秀が扇を開け閉めしながら呟く。

「……和田惟政でございますか?」

「うん」

細川藤孝の問いに、光秀がパッと顔を明るくして答える。

「信長は正面決戦を望んでいる。ならば私はその盤面そのものを壊す」

光秀が続ける。


そして。

「いつまでも時とカネを浪費し続けるのは無駄の極みだ」

そう言って床几から立ち上がると

「さあ、楽しもうじゃないか」

両手を広げて笑いながら言った。




--------------------------




野良田にある織田本陣――



陣幕の外では、風に煽られた旗指物がばたばたと鳴っている。

朝靄は既に薄れ、愛知川の流れとその向こうに並ぶ明智軍の白旗が見え始めていた。


本陣の中。


信長(真紀)は地図の前に立ったまま微動だにしない。

周囲には、

信広(誠人)。

柴田勝家。

羽柴秀吉。

黒田官兵衛。

丹羽長秀。

織田軍中枢の面々が顔を揃えていた。


その時、陣幕の外から慌ただしい足音が響く。

「申し上げます!」

母衣衆だった。

全身に泥を浴びて息を切らしている。


「申せ」

信長が視線だけ向ける。


「南方より急使!」

場の空気が変わる。

「和田惟政勢、発見いたしました!」


官兵衛が即座に顔を上げた。

「どこだ?」

「八日市方面にてございます!」

「……八日市?」

秀吉が眉をひそめる。


官兵衛が地図へ指を走らせた。

愛知川。

野良田。

そして南東。

「まさか……」

信広が低く呟く。

「後方を遮断するつもりか」


母衣衆が続ける。

「惟政勢は六角残党を糾合。数はおよそ一万!」


勝家が吐き捨てる。

「ちっ……増えたか」

「狙いは兵站線でございましょうな」

長秀が険しい顔で言う。


織田軍総勢68,000。

その巨大な軍勢を支えているのは美濃から続く補給線だった。

そこを断たれれば。

兵糧。

矢弾。

馬糧。

全てが止まる。


「……なるほど」

信長が静かに呟いた。

「光秀らしい」

その声音には、むしろ感心すら混じっていた。


秀吉が問う。

「如何なさいますか?」

官兵衛が即座に進言する。

「勝家様の後詰を回して惟政を叩くべきにございます。

放置すれば兵站が危うい」

「ならば正面は?」

長秀。

「薄くなります」

官兵衛が即答する。


沈黙。


光秀の狙い。

それは恐らくこれだった。

正面決戦ではない。

織田軍という巨大な軍そのものを時間で腐らせる。


勝家が苛立たしげに言う。

「だから最初から川を渡って叩けばよかったのだ」


「違う」

信長が即座に否定した。

すると皆が信長を見る。

「光秀は、こちらが動く事すら読んでいる。

渡河したところを惟政に突かれれば我らは川を背に挟まれる」

「……っ」

勝家が黙る。


「奴は最初から正面決戦などする気は無い」

信長が低く言った。

「均衡を意図して崩す。奴はこういう戦をする」

そしてふっと笑った。

「だが――」

その目が鋭くなる。

「ならばこちらも盤面を壊すまでよ」


官兵衛が顔を上げる。

「……策が?」

信長は答えない。

代わりに、軍配を取り上げると地図のある一点を叩いた。


全員の視線が集まる。

そこは――


「安土山……?」

秀吉が呟く。


「信広」

「はっ」

「例の者たちは、もう入っておるな?」

信広が静かに頷く。

「既に」


その瞬間、官兵衛の目が見開かれた。


「まさか……!」

信長は笑った。

獰猛に。

まるで獲物を追い詰める獣のように。


「光秀。貴様だけが策士だと思うなよ」

そして、ゆっくりと軍配を振り上げた。

「各隊に伝令!」

本陣の空気が一変する。


「今宵――」

信長の声が陣幕の中に響いた。

「明智本陣を焼く」




<1570年11月1日時点>

―歴史乖離率:12.5%

―安定化モジュール:出力上昇

―現実世界アンカー不安定率:不明(無効化処理済)

―管理者権限保有者:氷室真紀


<織田家>

織田信長 (36)…統86  武76  知85  政81  魅88 【真紀】

織田信広 (38)…統64  武77  知81  政83  魅84 【誠人】

柴田勝家 (44)…統89  武88  知61  政70  魅85

丹羽長秀 (35)…統82  武75  知83  政82  魅79

羽柴秀吉 (33)…統79  武67  知84  政80  魅86

前田利家 (31)…統80  武85  知69  政67  魅76

池田恒興 (34)…統72  武73  知72  政74  魅76

村井貞勝 (50)…統41  武33  知75  政90  魅84

羽柴秀長 (30)…統73  武64  知80  政85  魅88

森可成  (47)…統77  武80  知68  政65  魅69

森可隆  (18)…統74  武66  知78  政79  魅73

佐久間信盛(42)…統65  武70  知54  政52  魅48

黒田官兵衛(24)…統80  武63  知95  政82  魅77

藤堂高虎 (14)…統75  武77  知80  政71  魅74

<明智家>

明智光秀 (42)…統86  武80  知94  政78  魅81 【芳香】

細川藤孝 (36)…統76  武63  知88  政84  魅80

<松永家>

松永久秀 (62)…殺害

<徳川家>

本多忠勝 (22)…統73  武86  知59  政49  魅79

榊原康政 (22)…統75  武82  知72  政60  魅74

服部半蔵 (32)…統73  武83  知74  政45  魅73

<浅井家>

浅井長政 (25)…統82  武84  知75  政77  魅81

<武田家>

真田昌幸 (23)…統80  武72  知85  政83  魅74 【卓】

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