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氷室の野望(仮)第弐巻 ~立志編~  作者: 和音


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25/36

25 続きからはじめる(1570年10月27日 織田家・明智家)【愛知川の戦い-布陣】

第弐巻における天下分け目の大合戦の始まりです。

今回初めて画像を取り込みましたが、見辛い点はご容赦願います(汗。


『1570年10月27日 織田家――』



愛知川。

南近江の淡海乃海(琵琶湖)へと繋がる、湖東にある平野を貫く川だ。

この日、明智軍と織田軍はその愛知川を挟んで対峙していた。



明智軍は愛知川西にある安土山の麓に本陣を構えた。

率いるのは総大将である明智光秀でその数3万。


左翼率いる細川藤孝は正覚寺方面に位置しその数は2万。

右翼は和田山山頂に陣を構えた。将は明智秀満で数は1万5千。

また、遊撃隊として位置が定かではない和田惟政率いる5千と、後詰として荒木村重率いる7千がいた。


明智軍の総勢は77,000であった。



対する織田軍は愛知川東側に陣を構えた。


第一陣の丹羽長秀軍1万5千は細川藤孝軍のほぼ正面に位置する常光寺に陣を構えた。

第二陣の羽柴秀吉軍8千はそのやや後方に陣を構えた。

本隊、織田信長率いる3万は、距離はある者の光秀の正面に当たる野良田に本陣を構えた。

第四陣、後詰の柴田勝家率いる1万5千は愛知川の更に東側にある宇曽川に陣を構えた。


織田軍総勢68,000。



稀に見る大規模合戦である。


挿絵(By みてみん)




--------------------------




安土山麓の光秀本陣――



「いやはや。壮観だねえ」

光秀が言う。


「まことに」

藤孝が短く答える。


「信長は自らを囮に使い、誘うかのような陣形ですな」

荒木村重。


「惟政は予定通り?」

「はっ。御指示の通り動いております」

「よしよし」

藤孝の答えに光秀は笑みを浮かべ頷く。


「さて……ここからどちらが先に動くか。ヒリヒリするね」

楽しそうに独り呟く光秀。


「殿」

「ん?」

村重が聞いてきた。

「これからどのようになると思われますか?」


すると光秀は床几に腰掛けたまま、遠く織田の陣を眺めた。

風が吹き、白地に桔梗紋の旗が揺れている。

「……信長は、まだ動かないよ」

静かな声だった。


傍らの藤孝が視線を細める。

「こちらの出方を待っておりますな。

兵数では我らが優勢。

ゆえに攻めさせて川を渡らせたいのでしょう」

「うん。実に信長らしい」

光秀は笑う。


「不利な地で戦う愚は犯さぬ。

自分を餌にしてでも敵を崩す。そういう男だ」


荒木村重が腕を組んだ。

「されど、こちらが動かねば膠着。

兵糧では尾張・美濃を抱える向こうが有利となります」

「その通り」

光秀は頷くと立ち上がった。

光秀の目は、遠く野良田の織田本陣を真っ直ぐ射抜いている。

「だから信長は、私が焦れると思っている」

「違うのですかな?」

村重が問う。


光秀は口元を吊り上げた。

「私はね、勝てる戦しか始めないんだよ」


その言葉に、本陣の空気がわずかに張る。


藤孝だけは表情を変えない。

「焦るな。楽しいのはこれからだ」

光秀は楽しげに扇を閉じた。


「さあ――天下を決めようか、信長」




--------------------------




一方、野良田にある織田本陣――



本陣中央に据えられた馬印「永楽通宝」が冷たい風を受けて揺れている。

周囲には母衣衆が隙なく控え、幾重にも張られた陣幕の内では静かな緊張が漂っている。


その中心。

信長(真紀)は床几にも座らず、軍配を片手に地図を見下ろしていた。


「……動かない、か」

誰に言うでもなく呟く。


傍らに控える織田信広(誠人)が口を開いた。

「光秀はこちらの狙いを読んでいますな」

「読めぬ奴ではないであろうな」

信長は短く返した。

その目は鋭い。


羽柴秀吉が扇子を揺らしながら笑う。

「普通なら7万も抱えれば焦りまする。

兵糧も銭も、まるで底なし沼のように消えますからな」


「だが奴は違う」

信長が言った。

「勝ち筋を作ってから戦を始める。あれはそういう男だ」


柴田勝家が鼻を鳴らしながら言う。

「ならばなおさら叩き潰すのみ。

川を渡って来ぬなら、こちらから踏み潰せばよい」


「それが出来れば苦労はないぞ、権六」

苦笑いしながら信長が言う。


すると黒田官兵衛が地図上を指でなぞった。

愛知川。

安土山。

和田山。

そして――空白。


「……和田惟政」

官兵衛。

秀吉の笑みがわずかに消える。

「姿が見えませぬな」


「見えぬ、ではない」

信長は顔を上げた。

「見せておらぬ」


本陣の空気が少し重くなる。

長秀が低く問う。

「奇襲……ですか」

「十中八九な」


勝家が不快そうに眉をひそめた。

「たかが5千。何が出来ましょうや」

「5千だからこそ厄介なのだ」

信広が横から言う。続けて

「軍は大きいほど鈍る。小勢は消えることが出来る」


「よい」

信長はゆっくり軍配を置いた。

その眼が、真っ直ぐ西岸を射抜く。

「光秀が仕掛ける前に、こちらが仕掛ける」


秀吉が目を見開く。

「まさか……渡河を?」

「うむ」

信長は不敵に笑った。

「奴はこちらが待つと思っている。ならば、その読みごと喰い破ってやる」


そして信長は明智軍を見据えて、口元を歪めた。

「光秀……」

低く。

愉しげに。

「謀略で天下が獲れると思うなよ……」



両軍の総勢14万5千。

一大決戦の火蓋が切られようとしていた。




<1570年10月27日時点>

―歴史乖離率:12.5%

―安定化モジュール:出力上昇

―現実世界アンカー不安定率:不明(無効化処理済)

―管理者権限保有者:氷室真紀


<織田家>

織田信長 (36)…統86  武76  知85  政81  魅88 【真紀】

織田信広 (38)…統64  武77  知81  政83  魅84 【誠人】

柴田勝家 (44)…統89  武88  知61  政70  魅85

丹羽長秀 (35)…統82  武75  知83  政82  魅79

羽柴秀吉 (33)…統79  武67  知84  政80  魅86

前田利家 (31)…統80  武85  知69  政67  魅76

池田恒興 (34)…統72  武73  知72  政74  魅76

村井貞勝 (50)…統41  武33  知75  政90  魅84

羽柴秀長 (30)…統73  武64  知80  政85  魅88

森可成  (47)…統77  武80  知68  政65  魅69

森可隆  (18)…統74  武66  知78  政79  魅73

佐久間信盛(42)…統65  武70  知54  政52  魅48

黒田官兵衛(24)…統80  武63  知95  政82  魅77

藤堂高虎 (14)…統75  武77  知80  政71  魅74

<明智家>

明智光秀 (42)…統86  武80  知94  政78  魅81 【芳香】

細川藤孝 (36)…統76  武63  知88  政84  魅80

<松永家>

松永久秀 (62)…殺害

<徳川家>

本多忠勝 (22)…統73  武86  知59  政49  魅79

榊原康政 (22)…統75  武82  知72  政60  魅74

服部半蔵 (32)…統73  武83  知74  政45  魅73

<浅井家>

浅井長政 (25)…統82  武84  知75  政77  魅81

<武田家>

真田昌幸 (23)…統80  武72  知85  政83  魅74 【卓】

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