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サワヤマの回想 1

 このクソ鳥がっ! 


 オレの死角に回り込んで来た黒い鳥が撃ち出した光の輪が右肩を切り裂いていった。いてえなちくしょう……。

 正面から高速で飛んで来る攻撃を“物干し竿”で辛うじて弾いた瞬間に死角を突かれた……。

 危なかった! 今のはヤバかった! 

 《蜃気楼(ミラージュ)》で産み出した次元の断面を盾に出来なければ腕が飛んでいた……。

 一息つく暇も無く、連携して飛ぶクソ鳥共がオレの行動を阻害する。

 コイツらっ!

 撃ち出した“物干し竿(ビー・オー・エヌ)”の《加算斬撃(チャージ・ショット)》がクソ鳥の片割れに弾かれる。

 クソっ牽制しか出来ないっ! 

 背後に迫るクソ鳥の追撃から逃れるために《蜃気楼(ミラージュ)》の中に飛び込んだ。

 屈辱だぜ……あんなおっさんの使役するクソ鳥に追い回されて《次元潜行(ダイブ)》するなんて……今のオレでは《次元潜行(ダイブ)》は5秒が限界だ……たいして休めねえ……せめて傷を治さないと……。


「《物質体再生(リジェネレーション)》……!」


 オレが使える唯一の魔法。詠唱後2分間はどんな怪我でも治しちまうチート能力。腕が飛ぼうが脚が断ち切られようが治ってしまう。即死さえしなければ……いや、たぶん死んでも再生されるハズだ。

 再詠唱待機リキャスト・ウエイティングも実質無い無敵のチート魔法なのに……魔力(マナ)の残存量がヤバイ! 

 クソ鳥共のせいで何度も《物質体再生(リジェネレーション)》を掛け直す羽目になった!クソっ!クソっ! 


 《物質体再生(リジェネレーション)》の効果発揮時間(インヴォーク)の間に多少の無茶をしてでも《次元断》を叩き込めれば……いや、ダメだ……火力が足りない……クソっ!……せめて“物干し竿(ビー・オー・エヌ)”の能力換装カートリッジに《破壊(ブラスト)》をセットしたら……ダメだ……《蜃気楼(ミラージュ)》じゃなければクソ鳥の猛攻を躱せない……。


 なんだよこのクソ鳥の強さは! 

 正直……想定外だ……ふざけやがって! 

 マジで意味わかんねぇ! 

 なんで……こうなった? 




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 オレがこっち側に来てから半年……ぶっちゃけつまらねえ毎日だ。


 最初は良かった。


 いきなり事故って死んでしまい後悔しかなかったオレが生き返れたんだからな。

 しかも……《アスタリスク・サーガ・オンライン》の世界のようにスキルと魔法でオレTueee出来たんだ! 

 クソモンスター共をぶっ殺してやるのは最高の娯楽だった。


 あっちにいた時は、何をやってもそこそこ出来たし女に困ったこともねえし、楽しく適当に生きてたハズなんだよ。でもそんな毎日がモノ足りなかった。退屈してたんだ。唯一熱くなってたネトゲの《アスサガ》じゃ、課金ぶっ込んで世界ランキング常連のチームに入ってtueeeやってさ。

 それなりに満足してたけど……やっぱり所詮はゲームだったんだなって。


 こっちの世界のリアル感。


 これを知ってしまったオレに以前の生活なんて出来るわけねーじゃんか。


 オレは《サワヤマ タケル》。21才の日本人。

 大学からバイト先に行く途中に死んだ。

 で、生き返った。

 素養があるからって導きの神様ってのが生き返らせてくれてスゲー能力までくれた。

 使命つきってのがアレだが、それでも最高にラッキーだった。

 今では六日に一度訪れる異世界転移でたまーに帰るくらい。

 充実した時間。生きてる実感。特別な能力。異世界での地位と名誉。あっちで遊んできた今までの女達なんか霞んじまうマジもんの美人を自由にオモチャに出来る快感。

 そんなもんが突然退屈な人生のまま終わってしまって後悔しかなかったオレに転がり込んできたんだ。


 アマエラに聞いたんだが、スキルは人を顕すってさ。


 オレは鬼神(ライオット)

 

 固有能力《戦闘の天才(バトル・センス)》と専用魔法《物質体再生(リジェネレーション)》そして専用兵器“物干し竿”(ビー・オー・エヌ)で退屈な日常をぶった斬る闘いの権化だ。


 オレはこっちで自由に生きる! せっかく生き返ったんだ。毎日最高に充実した異世界ライフを始めちゃいます。


 オレは越境者(ボーダー)としてケウシプスって国と契約した。

 なんの偶然かわかんねぇが、オレより前に来てケウシプスと契約してた越境者(ボーダー)が知ってるヤツだったからだ。

 初めてこっちでこのクソ男と会ったときはわからなかったけどな。

 だってハンドルネームしか知らなかったし。

 むこうから説明されてマジでひっくり返ったぜ。

 越境者(ボーダー)はまさかの《アスサガ》でのチームメンバー「ルル」だった。

 現実での名前は《レオン カツラギ》。24才。目が青い。半分ソーセージとビールの国の人だったのかよ。

 しかもネカマじゃねーかテメー!……マジでふざけんなよ姫プレイしやがって……貢いだ《アスサガ》通貨返せよクソ男……。

 本気で怒りをぶちまけたオレを馬鹿を見る目で見やがった。

 なんだコイツ……マジでクソ野郎じゃんか。


 コイツの何がクソかって、スキルが最低にクソだった。


 《黒の勇者(オニキス)》。


 なんだよ技能(スキル)《勇者》って。

 普通《勇者》って職業(ジョブ)だろ! 

 だがオレが知ってる《アスサガ》のようなゲームの世界と違って、ここじゃ《勇者》はスキルだ。ふざけんなよマジで。


 そんなクソスキルを持ったクソ野郎とセット扱いで気に入らないこともあるが、《|越境者》としての特典を享受するオレのポジションも悪くない。モロ好みの超絶美女アマエラを貰えたし。

 だからとりあえずは……まあいいかって感じ。


 何だかんだでオレと《レオン》は使命の為に《遺跡(ダンジョン)》を探ったり、ケウシプスを助けて魔物を狩ったり、好きなときにアマエラを抱いたり、とにかくスキルで得た力を振り回して暴れてた。

 これが異世界無双ってやつ? 

 

 そんなとき、越境者(ボーダー)としての格付けをする話になった。 

 変な話だがこっちの世界には神様ってのがいっぱいいて、その中に戦闘(バトル)専門の神様がいる。この神にランク認定してもらった《位階戦士(ランカー)》ってのがいるんだが、オレも《レオン》もこっちの戦士の中じゃ余裕でぶっちぎってる。

 比較対象が無い超SランクのXランクに認定されてるくらいだ。

 だったらX同士ならどっちが強いのか格付けしないとなって。

 オレがこっちに来たばっかの時に、しょうもない因縁つけて来たからぶちのめしてやったケウシプスの兵士の親玉(Cランクのクソ雑魚ね)が言い出しやがった。

 オレはやることにした。

 《勇者》のネームバリューでオレよりちやほやされてることに頭に来てたし、単純に戦闘オタク(バトル・マニア)として《勇者》との戦いに興味もあった。

 何より鬼神(ライオット)の能力《弱肉強食(レーティング)》でステータスを盗み見た感じだとオレの方が強い……《弱肉強食レーティング》の評価は《危険(たたかうな)》だったが……オレだって希少技能(レア・スキル)持ちだ。ぶっちゃけ《勇者》より《鬼神》の方が上なんじゃないか? 

 だって神だぜ神。ゴッドのが強いっしょ! 

 付き合う内にコイツに対して気に入らないことが盛り沢山だし、ずいぶん不満も溜まってた。

 《アスサガ》でもオレより上位だからって偉そうにしてやがったしな。

 ……マジで痛い目見せてやる。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ……オレはメタクソに負けた。


 マジで意味がわからなかった。《勇者(オニキス)》にオレのスキルは歯が立たなかった。オレはこっちでも《レオン》の下につくことになっちまった。《弱肉強食レーティング》はオレを守ってくれるスキルで、その評価は信じるべきだと学んだ。

 

 それからオレは……つまらねえ毎日を我慢して過ごすことになった。

 正義感ぶった《勇者(オニキス)》が人気取りの為にやってるしょうもない博愛路線に強制参加しなくちゃいけなくなった。本当は名前どおりのドス黒い魂を持ってるくせに。聖人君子のように振る舞いやがって。


 しかもいつの間にか増えた《勇者》の取り巻きになった異世界人にまで舐められてる。オレにふざけた態度を取ったから()()()()()をかましたヤツらまでいやがる。クソ共が。

 でもオレじゃ《勇者》に勝てないからぶちのめすのを我慢しなきゃいけなくなった。


 気がつけばあっちの時のようにルールとモラルでがんじがらめだ。


 なら魔物モンスター共を狩ってウサ晴らししようかとすれば「暴走(スタンピード)が起こるからやめろ」って……マジでふざけんなよ。

 でもしょうがねえ。こっちの世界は人口より魔物口の方が遥かに多い歪んだ世界だ。あまり無茶をやらかすとオレでもヤバいことになるかもしれん。

 こっちの世界は「剣と魔法の世界」だけあって、兵士の中には見た目は普通のおっさんでも結構強いヤツがいたりする。そりゃ剣に魔力込めて石を斬ったり、手から火の玉を撃ったりするんだもんな。

 それでもオレからしたら雑魚だし、たぶんあっちの兵士の方が強いな。

 拳銃ぶっぱなしたらこっちの大抵のヤツを殺せると思う。

 人間のレベルはその程度。

 だけど魔物は違う。 

 象ぐらいのサイズでチーター並のスピードで突っ込んでくる《魔獣種》みたいなヤツもいれば、空から雷の雨を降らすような《竜種》のヤツもいる。

 ぶっちゃけ魔物の方が遥かにハイスペックでヤバイ。

 噂では神様も殺すような《魔王種》までいやがるらしい。

 そんなヤツをオレの憂さ晴らしで怒らすワケにはいかねえしな……。

 

 まったくつまらねえ毎日だ。


 だけどある日、また変化があった。

 新しい越境者《ボーダー》が来ることになったからだ。

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