VS.《サワヤマ》 ②
オレ《ゴトー》は性格の悪いボス猿のテリトリーに土足で踏み込んでやりました。
先に牙を剥いて吠えたのはあっちです。絶対に一発返してやろうと思います。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
チューん!
オレの頭上で雄々しく?雄叫びを上げている白い羽の雀型魔導兵に心から感謝した。
助かった……ありがとう!パロ助!
それにしても……さっきの《サワヤマ》の攻撃はかなりヤバかったハズなのに完全に防ぐなんて……。
そういえばパロ助の設計をした時に、支援防御という目的に合うように組み込んだ素材の中で1つだけ飛び抜けて高ランクのものがあった……。
ランク9素材《地竜王の甲羅》。
あれが思った以上に高性能だったのか、《サワヤマ》の攻撃はパロ助によって完全に遮断され、オレの結界にはダメージがまったく無い。
越境者とやり合うのに防御の切り札として位置付けている《絶骨くん》の召喚を温存したのは致命的な判断ミスだったのかと後悔していたが……あれは対魔力攻撃として特化させたもので、対物理攻撃として持つ《超高硬度盾》の防御性能はオレの結界オーブとさほど変わらない。冷静に考えれば《サワヤマ》の“物干し竿”を防ぐためには足りなかっただろう。
パロ助を創成する時に《エー・エー》からいくつかの素材選択プランを貰っていたのだが、防御ガチガチの《命を大事にプラン》を選択しといて良かった……。
実は設計図の情報イメージで見た地竜王のフォルムが、モロに子供の頃に大好きだった空を飛ぶ亀型怪獣そっくりで、思わずテンションが上がって選択したのだが……。やはりガ○ラはオレのヒーローだった! ありがとうガ○ラ!
余裕を取り戻したオレは1つ深呼吸してから腕組みをし、《サワヤマ》に向けて「余裕で防いでやったぞ」的な空気を飛ばす。
おそらく必殺技っぽいノリの攻撃だったから悔しいんじゃないかと思うがどうよ?
お、案の定驚いて固まってやがるっぽいな……ざまーみろ。
内心ヒヤヒヤもんだったがそんな様子なんて微塵も出さねーぞ。
おっさんを舐めんじゃねー。へへーんだ。
興奮覚めず心の中で毒づくオレを《エー・エー》のアナウンスが引き戻す。
『感知網作成用観測データ入手の為に視認情報の更新を実行と報告です使役者』
チュチューン!
《エー・エー》のアナウンスと同時に、足元で黒い羽の魔導兵が立体映像の投影を開始した。
……あ、そうか。
オレがビビって目を閉じたから《蜃気楼》感知網を完成させる為の視覚情報が足りなかったのか。
反省するオレの目の前に立体映像が映し出されていく。
「鬼神・次元断っ!」
《サワヤマ》が蜃気楼を介し空間を超えて放った“物干し竿”の巨大な斬撃が投影されオレの眼前に出現する。
次元断だって? 確かに凄いエネルギーの斬撃だが、厨二丸出しのネーミングの攻撃してきやがって。
本当は「一旦別次元に飛ばしてから対象の目の前に出現させます斬り」だろうが。違うか?
「チューん!」
その攻撃を防ぐためにパロ助の背面からレーザーフレームのような光の翼が6枚展開し、それぞれの先端に六角形のエネルギーシールドを生む。
その光の翼が《サワヤマ》の攻撃を受ける瞬間に花の蕾のような形に収束し、それぞれのエネルギーシールドを合体させて拡大強化し斬撃を弾く。
おおおかっこいいぞパロ助! あれが《地竜王の甲羅》を組み込んだシールドユニットか。すごいぞガ〇ラ!
「なんだ今のは……」
立体映像を確認しているオレに《サワヤマ》のつぶやきが聞こえてくる。
「バカな……指定範囲の空間ごと斬ったハズなのに……」
え?なんだって?……なんか聞こえたぞ?
空間ごと斬っただと?……本当に空間を斬ったのかよ……あっぶねーヤツめ……。
「……貴様ぁ!……戦闘中に余裕ぶっこいてビデオ鑑賞かよっ!……舐めんじゃねぇぇぇ!!」
キレたように叫んだ《サワヤマ》が、再び魔力を込めた“物干し竿”を右肩に担ぐような構えを取る。
うわ!またさっきの攻撃やるつもりかよ!?
さっきより魔力の輝きが大きい!……マジモードか!?
最近の若者はキレやすいね!
“物干し竿”から響く魔力の猛々しいプレッシャーがヤバイ。
攻撃される前に少しでも撹乱しないと……!
《義足》に全開で魔力を流して《サワヤマ》が構えた反対側に回り込むように連続跳躍し、右肩に構えた“物干し竿”の死角に入る。
先手必勝だ!
跳躍と同時に《義手》も戦闘モードに起動し、《炎》オーブを発動させる。
何とかして攻撃態勢を崩してやる……。
そっちはオレの攻撃を防御出来るのかよ? くらえっ!
「炎の弾丸!」
魔力を充填した《炎》オーブのエネルギーを、拳銃型に構えた人差し指から2連続で射出する。
命中率を上げるためにプロは必ず2発撃つってハードボイルド系の小説で読んだことがあるんだよ! 当たれっ!
オレの指先から高速で撃ち出された炎の疑似魔法が《サワヤマ》の無防備な左半身目掛けて飛んで行き……着弾……しない!?
いつの間にか《サワヤマ》の前に蜃気楼が出現している。
あれで2発とも防がれたのか!?
ならば……これでどうだ!
続けて3連射した炎の弾丸がが左肩、右大腿、左脛を狙って飛んでいく。
一発目が蜃気楼に防がれる。
別の個所を狙った二発目、三発目も《サワヤマ》の半身を覆い隠すように広がった蜃気楼に吸い込まれるようにして消えた。
全然通らねえ! 無敵防御かよっ! チート野郎めぇ!
「ちょこまかとショボい魔法撃ってきやがって……こっちのターンだろうがよぉっ! 食らえ!《次元双断》っ!!」
咆哮と共にオレの疑似魔法を防いだ蜃気楼の防壁に向けて《サワヤマ》が特大の斬撃を放つのが見えた。攻防一体かよ!?
「パロ助!」
一瞬後にオレの目の前の空間に蜃気楼が2つ出現した。
左右から挟み込むように出現したその揺らめきの中から切り裂くように斬撃が飛んでくる!
双断って言ったもんな! 斬撃も2発か!?
パロ助!頼む!
ギャイィンッ!!
ギャガンッッ!!
斬撃とシールドの衝突が二度起こり轟音を響かせた。
オレは背中を冷や汗でぐっしょり濡らしながら腕組みしたまま目の前で繰り広げられた攻防を睨み付けた。
情けないがオレには防げないし回避のタイミングが解らない。
だったらせめて根性だろ。
オレは全身全霊の気合いを込めて虚勢を張った。
《サワヤマ》にはオレやパロ助の情報は無いから「余裕で防ぎました」という大物感を漂わせる事には意味があるハズだ。
それと併せて「防御を成功する度に腕を組んでいる」という印象を残しておく。上手くいけばその印象を利用して引っ掛けることが出来るかもしれない。
新しく得たスキル《思索成知》がオレに鉄の心を生み出し瞬間的に行動方針を決定したことで、オレは身動き一つせずに腕組みしたまま斬撃の前に立った。気分的には仁王立ちってやつだ。
さあどうだ。また防いでやったぞ……パロ助がな!
驚いただろ?
《サワヤマ》の反応を探りながら、さらに《思索成知》を重ねて行動立案だ。
このレベルの攻撃ならばパロ助が防いでくれる。
ならば……《蜃気楼》の解析が終わるまでは攻撃あるのみ!
オレは《炎》オーブに残ったエネルギーを収束させてモードチェンジを行いグレネード弾を装填した。
長時間燃焼の範囲攻撃ならどうじゃい!
ヒュンッ!……ドドッ!シュボアアァッ!!
《サワヤマ》の足元を狙って撃ち出したグレネード弾が弧を描くように飛んでいき……蜃気楼の防壁の少し手前の地面に着弾して爆発した。
炸裂したグレネード弾が紅蓮の火柱を撒き散らし《サワヤマ》を飲み込むように炎が包む。
どうだ!……しかし《サワヤマ》は前面に展開したデッカイ蜃気楼で炎の渦を吸い込んで防いでいる!
グレネードは防がれている……だが……炎の渦が残っている今なら!
スパ太!
チューん!
オレの念話に反応して、防御体制をとったまま横でホバリングしているパロ助の影から黒い羽の魔導兵が飛び出した。
もう一体のオレの使い魔……攻撃特化魔導兵の性能を見せてやれ!
曲線の軌道を描き《サワヤマ》の頭上を飛び越すようにして背後に回り込んだスパ太がパロ助と同じような光の翼を展開し、翼の先端から円盤型のエネルギーを射出する。
オレの専用兵器・草刈り機の回転する光刃をイメージして、ランク9素材の《炎鳥帝の尾翼》を使って設計したスパ太の主武器、追尾式円月光輪。
高速で撃ち出された6枚の光刃が《サワヤマ》を襲う。
グレネードを蜃気楼で防いでいる瞬間に背後からの同時攻撃。これならどうだ!?
背後から襲う光刃を《サワヤマ》がもう1枚の蜃気楼の防壁を生み出して防ぐ。
3枚の光刃が蜃気楼に吸い込まれて消えた。しかし残った3枚の光刃が、軌道を変えて2枚の蜃気楼の防壁の死角となる側面から追撃する。
どうだ!?……その追撃を《サワヤマ》は跳躍して避けた。
一瞬目で追えなかった……早い!……そして高い!
コイツ身体能力も異常かよ!
しかしその《サワヤマ》を光刃が追尾して追いかける。
次の瞬間、《サワヤマ》の腕と脚が赤い液体を撒き散らしながら飛んだ。
4m程の頭上からくぐもった悲鳴を上げた《サワヤマ》が落下し……蜃気楼の中に消えた。
当たった!?よっしゃぁぁ!…………。
オレはおそらくやり返すことに成功したらしい。
しかし……テンションはあまり上がらなかった。
あれだけ腸が煮えくり返ったハズなのに……同じ人間の血と悲鳴を感じてオレの心は萎縮した。
《サワヤマ》の腕と脚が切断されていた?……オレは人に致命傷を与えてしまったのか?
……やりすぎだ……。
アイツはクソガキだとは思うが……そこまで大怪我をさせることは無かった……。
沈んだ気持ちを更新するべく《思索成知》が発動して思考を纏める。
間違いなくスパ太の攻撃が命中した。しかし地面を濡らす大量の血しか根拠となるものが無い。《サワヤマ》が消えたからだ。蜃気楼と接触した瞬間に消えたので亜空間に潜伏したのかもしれない。
だが……おそらく近くにいる。強大な魔力がまだこの空間にも残留しているのを感知してスパ太とパロ助が警戒を解かないからだ。致命傷を与えたと思ったが……どの程度のダメージを負っているのか? もしかしたらある程度は防御されたのかもしれない。
その防御手段として《サワヤマ》が生み出す蜃気楼の防壁は平面防御だ。しかもサイズが自由に変えられる。実際に散らして撃った《炎の弾丸》を防壁を延長して防いでいた。だが、グレネード弾と同時に行われたスパ太による背後からの攻撃には防壁を延長せずに別の防壁を出現させた。つまり防壁は平面方向にしか延長出来ないってことだ。1枚の防壁がどの程度まで範囲を拡大出来るかは解らないが……多角的な攻撃はおそらく有効だ。
しかも《サワヤマ》は2枚の蜃気楼を防壁として使用した後に回避した。そして回避に失敗してダメージを受けた。つまり同時に出現させることができる蜃気楼の防壁は二枚が限度か。しかし反撃のために割いていた魔力があるのかもしれない。これについては要検証だ。
《サワヤマ》はダメージを治療する方法を持っているだろうか? もし必要になるならば……交渉して回復させてやらなければ。
「ゴトー殿!」
思考を進めていると戦闘範囲から避難していたアマエラが声をかけてきた。
「《サワヤマ》はすぐに復活します!」
……なんだって!?
「彼のスキルには肉体再生の……きゃあっ!」
「おい……人の秘密をべらべらと漏らすんじゃねーよ。」
アマエラが突然揺らめいた空間に弾き飛ばされた。一瞬後《サワヤマ》がその場所に出現する。
「アンタ……クソみてえなステータスのクセに……強いな。」
ほんの10秒ほどだぞ……。
「そのチュンチュンうるさいのは使い魔か?……やられたわ。すげえ痛かった。」
アマエラよりもピッタリとしたデザインの服は、確かに腕と脚の部分が切断されているが……中身の腕も脚も10秒で傷も残さずにくっついてる。
「そのクソ女が言いかけてたから教えてやる……オレの魔法で怪我は治るんだよ。」
マジかよ……。
「でも自分だけね。アンタは治せないよ? 」
……。
「カスステータスだと思って舐めてたよ。まさか《次元断》を防いで反撃までされるなんてな……。」
まさか……これから本気だぜ!……のパターンじゃないよな?
「別に殺すつもりはないけどよぉ……ちょっと頭に来たから本気で相手してやる……簡単に死ぬなよ? 」
ほーらきたよ……。
初めての感想をいただきました。嬉しいです。ありがとうございます。まだまだプロットも手直し入れながらの不定期更新ですが・・頑張ります。




