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魔導兵創成 2

 オレ「ゴトー」の足元には犬型ゴーレム【ハチ】がじゃれついています。


 初めて創成した魔導兵(ゴーレム)です。


 愛玩目的ではないのですが……かわいいです。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。


 足元にじゃれついた【ハチ】は使命を与えられたことに対して歓喜を爆発させるかのように、オレの周りを高速で駆けずり回る。


 マジで速い。

 残像が残るほど早い。


 ちょ……ちょっと落ち着きなさい!


 意思が通じたわけではないだろうが「ピタっ」と止まって、指示待ちするようにオレを見上げへっへっ言ってる。

 

「オマエの兄弟を起動するからちょっと待ってておくれよ」


 オレの言葉を聞いた【ハチ】の瞳が理性的に輝き『おすわり』の態勢を取った。


 明らかに理解している。人並みの知能レベルだもんなー。賢いわ。それにさすが犬型ゴーレムだけあって運動性能も凄かったな……一瞬だが分身が見えたぞ……。


 オレに視線を向けたままお座りして尻尾をパタパタと振っている魔導兵(ゴーレム)が表情で『はやくはやくー』……と言っている気がする。だが遊ぶ前にやることがあるのだすまん。


 【ハチ】を起動したので要領はわかった。次は同じ動物型のこいつらを起動しようかな。


 オレの目の前には、正確には足元には、体長10cmほどの小さな魔導兵ゴーレムが二体、奇妙なポーズで立っていた。黒色と白色の2体だ。金属の鎧に覆われた小さな体は、オレのイメージどおり、『メタル雀』だ。

 一枚一枚が光沢を放つメタリックな羽根を優雅に広げ、細い足をピンと伸ばしてクロスさせている。さらに二体のそのポーズが、まるでシンクロナイズドスイミングやフィギュアスケートのように綺麗に揃っている。……たぶん二体の小鳥型魔導兵(ゴーレム)に設定したプログラムが、コンビネーションによって行動パターンを効率化・最適化するようなプログラムだからかなあ。ピッタリと揃ったポージングから、そのプログラムの実効性を感じるぞ、うんうん。


 ちなみにオレが道具設計図アイテム・プランニングでメインプランとしたのは『偵察』と『支援』だ。この2体はオレ専用の《使い魔》として活躍してもらう計画なので、色々と()()()プログラムを設定している。例えば戦闘時のプログラムは、黒を支援攻撃に特化、白を支援防御に特化と二分化して組んでいたりする。2体を、1対としてデザインされた外観もイメージ通りに創成できてる。これは起動させるのが楽しみだ。


 その起動に必要な「真理(エメス)」キーへの個体名称の登録だが……。

 名前……どうしようかなー。

 【ハチ】はイメージのままに登録しちゃったけど安直すぎたかもなー。

 でもまあシンプルこそ至高という言葉もあるし……そのままいっちゃおうかな。


 この2体は攻撃特化と防御特化の組合わせだから……剣と盾で『ソード』と『シールド』にするか。それとも矛と盾から『ホコ』と『タテ』がいいかな。うーん……なんか面白みに欠けるなあ……そうだ、いっそのこと苗字をつけちゃおうかな。

 よし。決めた。やっぱりスズメ型だし……『黒井スパ太』と『白木パロ助』でいいかな。思い付きだったが……閃いたこの名前……しっくりきたぞ。うん、気に入った。


 どうだ?【ハチ】。結構いい名前じゃない?。『黒井スパ太』と『白木パロ助』!


 【ハチ】は考え込むように首を傾けて……『……ワ、ワン……』と小さく鳴いた。


 アレ?……リアクションが悪いぞ? あんまりな感じ……なのかな?

 

 そういえば……オレが提案したネーミングって、企画会議で通ったためしがないんだよなあ……毎回結構いいのを出してると思うんだが……もしかして……オレって……ネーミングセンスないのかな?

 



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 



 「真理(エメス)」キーへの登録が終わり無事に起動した1対のメタリックスパローは重力を無視するかにように宙へと飛び出した。そして今……オレの周りでは、【スパ太】と【パロ助】と【ハチ】が、ワンワンチュンチュンとじゃれまくっている。高速で飛び回ったかと思えば【ハチ】の背中にダイブするように着地する【スパ太】。【ハチ】の背中でパタパタやっていたかと思えば撃ち出されたかのように高速で飛び立つ【パロ助】。2体の鳥型魔導兵(ゴーレム)射出機(カタパルト)と化して楽しそうに尻尾を振りながら駆け回る【ハチ】。


 き、きみたち……ちょっと落ち着きなさいってば……。同じくオレに創成された魔導兵だからか、めちゃくちゃ楽しそうにじゃれ合ってるよ……この子たち。

 それにしても……この魔導兵(ゴーレム)達の疑似精神(シュード・マインド)、感情が豊かすぎないか?。

 再びおすわりの体勢をとりヘッヘッやってる【ハチ】と、オレの腰につけた(ワンド)ホルダーに止まって首をグルグル回して辺りを見回している【スパ太】【パロ助】を見て思った。


 かなりの戦闘能力を詰め込んだ『恐ろしき魔導兵』のハズなんだが……こいつら……かわいいぞ。


 2体の《使い魔》の止まり木となるような箇所を、装備している《忍者》防具に用意しようかと思ったが、『落ち着け指令』を受けた【スパ太】と【パロ助】は、腰につけた【創魔の魔術杖(ヴィシュバー・ワンド)】のホルダーの上に止まったままだ。妙に落ち着いてるなあ。どうやらここを止まり木と定めたらしい。しっくりきてるみたいだし……このままでもいいかな。


 ちなみに、【スパ太】と【パロ助】の疑似精神(シュード・マインド)に与えた基礎魂(ベース・ソウル)は【隠蔽した飾り窓(ハイド・ウインドゥ)】のストックから【エー・エー】が引っ張ってきた『双子の魔人』の「魂の記憶」だった。アーテラで100年ほど前に暴れた魔人らしい。魔人とは、元は人間だったが魔王の因子を得て「魔王の眷属」に転生した存在のことだそうだ。……そんな基礎魂(ベース・ソウル)を用いて創成しちゃって大丈夫なのかと心配になったが……【エー・エー】先生の解説によると、『双子の魔人』はその卓越したコンビネーションによって当時の魔王大戦で名を馳せた存在とのことだ。この魔人の「魂の記憶」を【スパ太】と【パロ助】の基礎魂(ベース・ソウル)に使用することは、『とても理に叶ったことと報告です:自信を持ってお薦めです』……ということらしい。


 ちなみに【ハチ】の基礎魂(ベース・ソウル)もだが、歴史に名を残したような「魔犬」や「魔人」の「魂の記憶」のストックが【隠蔽した飾り窓(ハイド・ウインドゥ)】に大量にあるのには驚いた。


 《創成の魔王》がストックしていたのだ。


 「魂の記憶」とは、その存在が全うした命の記憶のコピーだ。

 つまり、その生命が生まれてから死するまでに得た経験のデータから、整理して機能効率を高めた特定のデータをコピーしたものだ。それを集める方法は【エー・エー】の記憶にあって、オレも知ることができたが、今は再現する手段もないし、する意思もない。だからオレが魔導兵(ゴーレム)を創成する時には、ストックの中からありがたく活用させて頂こうと思う。


 ちなみにそのストックの中には『双子の魔人』のような強力な「魂の記憶」がいくつかあったのだが……極めつけはこれだった。


 目の前に立つ4体目の魔導兵(ゴーレム)。【エー・エー】の補佐としてデザインも似せて創成した木製の女性タイプ。その基礎魂(ベース・ソウル)に使用したのは……。


 前回の魔王大戦の敗者の内の1体。「千手魔王グリゴリアリズム」の「魂の記憶」だった。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 よりによって魔王かよ……それに前回の魔王大戦ってことは……「創成の魔王」と戦った相手ってことじゃないのか?。


『肯定です:前使役者(マスター)は、その発言を流用するに「美しき戦友(とも)であり終生の強敵(ライバル)」であると認知していた事実を報告です』


『かの「千手の魔王」は物理攻撃と結界防御を極めた強大な存在と報告です:また「亡国の美貌(ファム・ファタール)」「飽食と美食の到達者グルメ・エピキュリアン」の称号も所持と報告です:その美貌と能力を継承する「魂の記憶」が、使役者(マスター)道具設計図アイテム・プランニングにおける「補佐魔導兵(ゴーレム)」に付与する基礎魂(ベース・ソウル)の選択肢の中で最上級であると進言です』

 

 マジかー……じゃあ……それでいっちゃおうかなー……。


 ……そんなやり取りがあってこの魔導兵(ゴーレム)を創成したんだが。……「真理(エメス)」キーに登録する名前……どーしよーかなー。オレがこの「補佐魔導兵(ゴーレム)」に求める最大の要素は【ラボ】の整理と、オレのための調理なんだよなー。「魔王の魂」にそんなこと頼んでいいものかどうか。ちょっと葛藤があるが……使役者として活用させて頂くことにしようかな。

 

 よし。キミの個体名称は【ジー・エー】だ。希少創成道具|【エー・エー】の補佐並びに始原創成道具オリジン・クリエイトアイテム【ラボ】の管理及び防衛、そして使役者(マスター)であるオレの食事オーダー対応だ! よろしく!


 オレの指令を受けて起動した【ジー・エー】の両目が青く輝く。


 オレのプランでは【エー・エー】っぽい外観でプランニングしたんだが、【エー・エー】の記憶データに本体(ベース)情報があったので、そっち寄せでプラン調整して貰った。


 その結果、起動して立ち上がった木製の魔導兵(ゴーレム)の姿は……。


 神々しいまでに美しい顔。胸の前で組まれた細い腕。くびれたウエストから伸びた長い足。

 その(ボディ)を彩る数々の装飾品の全ても木製だ。まさに美術品のようだった。 

 そして軽くウェーブのかかった腰まで伸びた金色の髪。その髪を掻き分けるように背中に生えた6()()()()


 これは……アレっぽいな。千手観音の木像だ。ちょっと西洋風にリメイクされてるけどね。


『よろしくお願いいたします使役者(マスター)。早速ですが何かお食事をお作りいたしましょうか?。』


 美しい声が響いた。


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