魔導兵創成 1
オレ「ゴトー」はようやく「魔法」の疑似再現に成功しました。
スキルを使いまくって精神的に疲労したので、ちょっとだけ休憩のうたた寝です。
いびきをかいていなかったか心配ですが。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
目が覚めた時、天井を見上げていた。
オレは寝相がいいらしい。嫁さんによく言われる。
仰向けで『気を付けの姿勢』の時もあるらしい。
そしてどうやら今もそんな姿勢で寝ていたっぽい。
真上に見上げた【ラボ】の天井は……夜空だった。
正確には星空か。
おそらく……『宇宙から見た宇宙』だと思う。
星の輝きがまったく揺らいでいないからだ。
昔に読んだ雑誌に載ってた宇宙飛行士のインタビュー記事を思い出した。
成層圏のカーテン越しに見た宇宙は二次元的だが、『宇宙から見た宇宙』は、とても深い三次元的な奥行きがあって、吸い込まれそうになると。
わかる気がした。
【ラボ】の天井にくっきりと輝く数多の星は、反則的に綺麗だった。
それにしても……この【ラボ】が存在している異空間にも宇宙があるのか、それとも天井越しに見る光景だけがオレ達の世界の宇宙を映し出しているのか……。
そんな疑問も浮かんだが、すぐに放り投げた。
ここは時の停留した空間。
たまには星を眺めるのもいいだろう。
そんなことを思いながら、寝ころんだまま星を見上げて惚けていたオレは、しばらくしてからごそごそと身を起こした。
傍らには、台座に乗った木製の美しい人形が、オレを見守るように立っていた。
【エー・エー】……オレはどのくらい寝てた?
『A:アーテラ時間で2時間3分18秒です使役者:睡眠計測準拠は「魔力減少時間」です』
ん?……α波とかじゃなくて? 「魔力減少」で計測?
『肯定です:正確には睡眠時に起こる「微弱な魔力の波長」の出現時間です:越境者を含む「アーテラ型星幽体」全般の特徴です:「アーテラ型星幽体・亜種」である使役者も同様と報告です』
オレが「アーテラ型星幽体・亜種」……。
その星幽体って一体何なんだ?
『A:精神と魂を構成する因子です:肉体を構成する物質体と対を為す存在です』
『補足説明として星幽体と物質体を結びつける要素がアーテラとベーテラでは異なります』
『アーテラ型は「魔力因子」によって、ベーテラ型は「霊力因子」によって結びつけられます』
『アーテラ型において、「魔力因子」が不足し、それを何らかの因子で補っているような不完全な星幽体が《亜種》と呼称される事実を報告です』
『現在の使役者は、不足した「魔力因子」を【魔王の因子】で補足して成立したアーテラ型星幽体・亜種であると報告です』
その【エー・エー】の説明を聞いて……思い返す。
「越境門」に行ったときに「導きの三柱神」は言った。
『希少技能を持たない越境者はアーテラで生きることが叶わぬ存在だ』と。
オレは……異世界に転生して、つまりアーテラ型星幽体に魂の構造が造り替えられて、魔力とスキルを使えるようになった。
だが、「魔力因子」が不足した出来損ないのようなオレがスキルを使用出来たのは【エー・エー】のチュートリアルとナビがあったからだ。
現在スキルを使用出来ているのも条件付きでのことだ。
【創魔の魔術杖】を手にしていないとオレはスキルを使えない。
転生時に修復されるハズだった物質体も十分ではなかった。だから左腕と左脚は再生されなかった。
さらには【専用兵器】の貸与も承認されなかったのでシステムエラーを引き起こしてアーテラ言語の発音も出来ない有り様だ。
つまりオレは……アーテラ型・星幽体としては不完全な存在なのだろう。
もし魔王との一件が無かったら……まさに「導きの三柱神」が言っていたアーテラで生きることが叶わぬ存在だ。
だからこその亜種なのかな。
確認だけど……その星幽体ってのがオレの場合は【魔王の因子】で補填された「アーテラ型」の「亜種」なんだな?
『肯定です:「亜種」型の「星幽体」は少なからず存在ですが、【創成の魔王の因子】を所持した星幽体・亜種はおそらく使役者1個体のみと推定です』
『使役者の存在で【エー・エー】の稼働が可能です:【エー・エー】の疑似精神は喜びの波動を申し上げます』
得ることが出来なかった「越境者」の権利や能力がどんなものか羨ましく思う気持ちもあるが……オレは魔王から受け継いだスキルと【エー・エー】達があって良かったと喜ぶべきなんだろうな。
「越境者」の能力は知らない。
だが、オレがプログラムを組むなら……オレのような存在は作らない。
あくまで制作中のスマホゲーを想定しての話だが。
「破壊する存在」になりかねないからだ。
オレは自分がとんでもないことをしている自覚がある。
もしこんなことが出来る能力の持ち主がデフォルトでゴロゴロいるような世界だったら……一瞬でパワーインフレだ。
実はそれが有り得る可能性も考えて、必死に自己強化に勤しんでいたワケだが、【エー・エー】の『オレ1個体だけ』という表現がすっと胸に染み込んだ。
そうだよな。
なんたって魔王大戦を勝ち抜いた魔王の因子持ちだもんな。
楽観的に行ってみようかな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
気持ちも頭も切り替えたオレは、本題の魔導兵創成に取りかかった。
必要な魔導兵は、アマンダの護衛用に一体と【エー・エー】の雑用に一体だが、追加でオレの【使い魔】用に一組を加えた道具設計図を【ノート】に書き込んだ。
主人公をサポートする【使い魔】はファンタジーの王道だぜ。
オレがファンタジーの主人公に相応しいかどうかは別の話です。
【エー・エー】、魔導兵のプランも【ノート】にあるからチェックして貰えるかな?
『了解です:【魔導兵】プラン確認します……完了です』
『特定必須項目の達成を条件に全プラン創成可能です』
『該当項目:疑似精神の創成と合成が必要と報告です』
疑似精神……【エー・エー】のそれみたいなやつか?
『肯定と否定です:同タイプの疑似精神ですが【魔導兵】に必要なランクは【エー・エー】とは異なります:【エー・エー】の疑似精神は【希少創成道具】の名称に恥じない逸品であると報告です』
ああ……そ、そうすか。
そりゃそうだよね。【エー・エー】並の補佐が出来る魔導兵がそんなにいるわけないよな……。
やっぱりオレは【エー・エー】みたいな希少で超優秀な道具を使役出来るなんて恵まれてるよなぁ……マジでありがとうな。
それを伝えたことにより巻き起こった「喜びの波動」をたっぷり感じたところで、【エー・エー】にプラン提案を続ける。
じゃあオレのプランニングの目的に併せて疑似精神の設計を頼めるかな?
『了解です:使役者』
こうしてオレは初めての魔導兵創成を実行した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
オレの目の前に4体の魔導兵が並んでいる。
ついさっきまでは……土の塊だった。
初めて魔導兵を作ってみて知ったのだが、宗教伝承などに出てくるゴーレム=泥人形はアーテラでも同じだった。
必要なものは体型に見合うだけの「魔導泥」。
関節や主要器官の核となる魔石を必要数。
起動に必要な「真理」のキー。
そして行動プログラム。
その4つだけだった。
超シンプル。
もっとも、オレが創成する魔導兵には、行動プログラムの代わりに疑似精神を合成してスペシャルプログラムを与えている。
更に外郭には、個性と、用途と、オレの厨二願望に併せた外装を、希少素材もケチらずにぶち込んでおいた。
おそらく通常のアーテラで作られる魔導兵と比べると破格の性能になるハズだ。
そうして完成したオレ印の魔導兵だが、結果的には……我ながら会心の出来だった。
まずアマンダの護衛用に創成した犬型だが、石の鎧をまとった姿の中にもなんとも言えない可愛らしさがある。
例えるならシベリアンハスキーの子供って感じかなー。
「真理」鍵には使役者が個体名称を登録をしなければならないので、道具設計図のイメージのままに『ハチ』の名を登録しておいた。
オレを使役者と認識したからか、ヘッヘッと舌を出しながら、ギザギザした石製の短い尻尾をブンブンと振ってオレの回りを駆けずり回っている。
ナチュラルな犬感に、まるで本物の犬が石の鎧でコスプレをしているんじゃないかと錯覚を覚えたぞ。
【エー・エー】……この子の疑似精神……大丈夫か?
えーっと……性格とか知能って、個体差も年齢層も経験値も関係してくると思うんだが……。
『肯定です:種族「魔犬」の精神パターン再現率は90%:とても賢い個体です:知能ランクは種族「人」準拠:性格は基礎魂準拠です:個体名|【ハチ】の基礎魂情報は「魔犬使いの主人と共に魔物と戦った黒魔犬」です:個体名【ハチ】の存在目的に最適と判断です』
うーん……ヘッヘッいいながらオレの足にスリスリしている姿を見ると若干の心配はあるが……それなら大丈夫かなあ……それにしてもコイツ……カワイイぞ。やばい、情が湧いてしまいそうだ。アマンダの護衛指令は出してるが、大丈夫そうになったら呼び戻しちゃおうかな……。
ちなみにこの子とこっちとの通信手段ってあるのかな?
『【ラボ】に直通端末を設置しています:【エー・エー】経由でいつでも状況確認・指示伝達が可能と報告です』
なるほど……それなら安心だな。
よし。『ハチ』! お前の任務はアマンダ及び周辺区域の索敵と護衛だ。付近エリアの情報収集も併せて発令する。善処せよ!
「ワン!」
誇らしげに吠えて、千切れんばかりに尻尾を振る『ハチ』。
……カワイイやつめ……。




