【ラボ】での創成 3
オレ「ゴトー」は【ラボ】で【ノート】に貯め込んだ道具の創成を一気に行ってしまおうと思いましたが……壁にぶち当たりました。
「魔法」を再現するのはハードルが高いです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
試行錯誤を繰り返した道具設計図だったが、現在、道具は無事に創成され、オレの体に装備されている。
【翻訳機・改】は発音機を仕込んだチョーカーを首に、念話オーブは【義手】の親指に装着した。
【エー・エー】相手に何度か試してみたが、念話については【エー・エー】の疑似精神とは通じなかった。どうやら有機体との交流が必要らしい。後でアマエラにでも試してみよう。
興味があるのは……精神を持った有機体であれば対象はどんなものでもいいのか?ということだ。
例えば……バイアのような魔物にでも念話で意思を伝えることが出来るのか?
可能ならば……上手く活用したら魔物使いのようなことも出来たりして……。
これもいつか試してみようかな。
【変身ベルト】も腰にバッチリ装着済み。
創魔の魔術杖と以前に創成した短刀も、背面の帯剣・帯杖ホルダーに装備された。
ちなみに握り手が左右交互に出るように工夫もした。
生身の右手で魔術杖を、パワーのある左手の【義手】で短刀を抜けるようにしたのだ。
飾り鎧も【ラボ】の割りといい位置に3体並んで美観の保全に貢献している。
左には、黒く輝いたパーツの一つ一つが分厚く大きい重厚な鎧【黒銀】。
中央には、金色の彫刻が全身に装飾された白銀に輝くシャープな鎧【雷光】。
そして右には、巨大な盾を構え《黒銀》に劣らない重厚な鎧をまとった骨兵士が屹立している。
なかなかの迫力だった。
気に入った。
新しい《鎧》候補になる希少な鎧が手に入るまでは只の飾りの予定で置いた骨兵士だったが、勿体ないので……ある目的のために多少の改良をした。
最後に難問だった【魔法オーブ】だが……
結論から言うと、無事に【義手】の拡張スペースに装着されている。
オレが最終的に選択したプランは、使用方法を限定した複数のオーブを組み合わせる方法だった。
まず【義手】上腕のオーブLサイズに【電池式魔力放出装置】を合成した。
そう、電池だ。
オレは莫大な魔力を込めただけの電池的なオーブをLサイズで創成した。
魔力を回復するプログラムを併用するのが難しいならいっそのこと削ってしまったらどうか。
その分、大容量に特化してしまえばいい。大は小を兼ねる正義だ。
そう割りきったオレは、高ランクの希少素材も大量に使用して、贅沢な「使い捨ての電池」を併せて5つ創成した。
【エー・エー】の計算では、このオーブ1つでもアーテラの大賢者が一生かけて使用するような膨大な魔力量を充填出来ているらしい。
そんなモノの予備が4つもあれば、仮にオーブの魔力が枯渇しても安心だ。オレは石橋でも安全を確かめながら渡るタイプです。
もしかしたら1つでも足りるかもしれないが……いざとなったら最終兵器として投下できるような裏設定も用意してみた。もし魔力量が満タンの状態で爆発させたら……ちょっとシャレにならん威力が出るとのことです。これでオレも究極必殺技《電池爆弾》をGETだぜ!……まったくもって必殺技感のないネーミングだけど他に表現のしようが無いからしょうがないぜ……まあ使うことはたぶん無いっすけどね。
次に【義手】前腕のオーブMサイズに【魔力接続回路】を合成した。
文字通り、「オーブ間に魔力を流す」だけのオーブだ。
【電池式魔力放出装置】から魔力を吸い出し、指に装着されているオーブSサイズの「魔法効果」に乗せる。
ただそれだけの装置だが、オレはこれに適時調整出来るプログラムを追加した。
ただし外部操作で。
色んな「魔法効果」を発揮させるプログラムを詰め込む予定のオーブSサイズに、威力や範囲を微調整するようなプログラムは組む余裕が無い。なら組まない。
この【魔力接続回路】を、スキル道具支配と【エー・エー】の補佐で操作したら、プログラム抜きでも精密な威力や範囲の調整出来るんじゃないか?
オレの質問に対する【エー・エー】の回答は『肯定です』だった。
結果これが大正解だった。
【義手】の人指し指を突きだし拳銃のような形にして構える。子供の頃によくやったあのポーズだ。
人指し指のオーブSサイズには赤竜と魔人の希少素材を使用した高ランクの炎エネルギーを放出するオーブを合成している。オーブ【炎】だ。
【魔力接続回路で操作してオーブ【炎】に魔力を流し込み、炎エネルギーを充填していく。
この状態でイメージと連動して設定したトリガーを引けば、充填された魔力を餌に作り出された炎エネルギーが放出される。
これがオレが「魔法」を再現するために構築した「疑似魔法効果」システムだ。
スキル創造主と道具支配をフルに駆使して作り上げたオレだけのシステム。
威力と範囲に関したプログラムについては【エー・エー】の補佐で3パターン構築した。
実際の魔法スキルの威力が解らないので、オレの想定でわかりやすく10段階にレベル分けして設定した。
パターン1は、威力レベル1、直径1cmの炎弾を10発装填、高速で射出する。拳銃のイメージだ。
パターン2は、威力レベル5、直径10cmの炎弾を2発装填、中速で射出し、着弾点で炎エネルギーを炸裂させる。グレネード弾のイメージだ。
パターン3は、威力レベル最大、直径3cmの純粋な炎エネルギーを充填し、超高速で射出する。レーザー弾のイメージだ。
試し撃ちは……想像の遥か上を行って上手くいった。
指先から灼熱のエネルギー弾が放出される。撃ち抜き、燃やし、炸裂する。
威力も範囲もばっちりだ。
これはかなり「魔法」っぽいんじゃないか?
オレ的には大満足だ。
気を良くしたオレは、【炎】と同じようにパターン設定をしたオーブを創成し合成した。
中指の拡張スペースSサイズに《暴風》オーブSサイズ。
薬指の拡張スペースSサイズに《回復》オーブSサイズ。
掌の拡張スペースMサイズに《結界》オーブMサイズだ。
結果的に【義手】に用意した拡張スペースを使いきってしまうことになったが、満足してる。
なんてったってオレの能力はまったく選択肢がなかった。
いざ戦闘になった時に【義足】【義手】【専用兵器】で攻撃する以外の行動が選べなかったワケだ。
全力で殴るか蹴るか草刈り機でぶった切るかだけ。攻撃力はあるが、それ以外何もできない。まさに脳筋。
そんなオレが疑似的な魔法攻撃と回復行為と結界防御が出来るようになったわけだ。
凄い成長と進歩だと思う。
しかもそれを……戦闘行為の繰り返しで経験値を貯めるとか、修行するとかを行わずに、この【ラボ】で、オレ自身のスキルだけでやったのだ。
投資の必要を認めたオレは、どのオーブにも希少素材をふんだんに使用した。そもそもオレには前所長が貯めこんだ希少素材の価値が解らない。ひょっとしたら消費したことに後悔するような素材もあったかも知れないが……後のことは考えるのをやめた。活用できる環境にあるなら活用しきる。奪い取った形で受け継いだ遺産も活用資源だと割り切る。現状でオレが安全になるように全力投球だ。下衆いかもしれないが、偽りないオレの本心だった。
結果的に……オレはかなり自信をつけることに成功した。
魔法と回復と防御。
これが出来るというのは異世界で生きるための最低条件だとオレは考えていた
つまりこれでアーテラで生きていく為の最低能力が整ったと思っている。
この能力で「異世界転移」を手に入れるのに近づけた実感をして……オレは笑った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ちなみに【ラボ】内で試し打ちが出来るように骨兵士を的として使用出来るようにしようと思いついたオレは思わぬ副産物を創ってしまった。
試し撃ちでもオーブに貯めたエネルギーを無駄にしたくない貧乏性なオレは、骨兵士を骨護衛兵士に進化させて、さらに二つのオーブを創成し合成した。
【魔力障壁・吸収】効果のオーブLLサイズと、【電池式魔力放出装置生成】効果のオーブMサイズだ。
ただシンプルに魔力を吸収するだけの効果と、吸収した魔力が一定量に達したら【電池式魔力放出装置】を生成するだけの効果を骨護衛兵士につけた。
一つしか在庫が無かった希少素材ランク10《真理の魔輝石》を思い切って使用した為に、魔力攻撃なら完全に遮断して吸収出来るスペックらしいんだが……これって結構凄いと思う。
この一つしか無い素材を使っていいか迷ったが……何故か使わないといけない気がした。直感ってやつかな。だからオレはこの希少素材もぶち込んだ。
結果出来上がったモノは異常だったよ……試し撃ちしてみたら骨護衛兵士の周囲に障壁が展開し、オレが射出したエネルギーを全て吸い込んでしまった。
色々試したが、全力で撃ったレーザーはもちろん、《専用兵器・草刈り機》の光輪までも吸収してしまった……。
ただの飾りにするつもりだった骨兵士は、【絶対魔法防御・骨護衛兵士】に進化したわけだ。
我ながらやばい存在を創成してしまった。もはや名前が長すぎてめんどくさいな。略して《絶骨》くんと呼称しよう……。
本当はこの【魔力障壁・吸収】効果のオーブは自分に装備したかったんだけど、LLサイズの拡張スペースを用意できないんだよね……まさか体のどこかをほじくり返してスペース空ける訳にもいかんしなあ……でも、もしも、大規模な魔法攻撃を受け止めなければいけない状況が来たら、この《絶骨》くんを転送すればいいから大丈夫かな……てゆーか出来るだけそんな状況にはなりたくないけどね。
さいわい《絶骨》の拡張スペースはガバガバに余ってるので、オレが指定した位置に転移出来るように【目標点】と、転移先で移動出来るように【浮遊移動】、それから物理攻撃の防御も出来るように【超高硬度盾】も合成しておいた。
これがオレが創った思わぬ副産物の正体です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、後は本題の魔導兵の創成なんだが……。
ちょっと疲れたからひと眠りしてからやろうかな。
この、時を停留した【ラボ】にいるとわからなくなるが……。
もう夜9:00くらいのハズだ。
アマエラ達が、時の神アガベーは二つの世界の時間を揃えた、と言っていた。
ということは、オレの世界でも同じ時間になっているってことだ。
あっちでのオレって……どうなっているんだろう……。
家族……悲しんでるのかな……。
おれは……どうなるんだろう……。
不安な気持ちで考えてたら急激に眠気が押し寄せてきた。
あー……やばい……意識が薄れていく……。
魔力を使い始めたばかりだから、体に負担がかかったのかもしれない。
眠いな……。
しかし……【ラボ】で睡眠を取ってしまったら時差が出来てしまうのではないか……?
それに……オレが死んで、越境門を通って、こっちの世界に来る間に……5時間くらい経過していたってことか?……その空白の5時間に……オレは……。
浮かんだ二つの疑問をかき消すようにして……。
オレは眠りに落ちていった。




