『調停者』
五人がゆっくりと明るい周囲を見回しながら長いスロープの上のフロアに上がるとそこは明るく、操作盤のようなものとその前に椅子が6脚、等間隔に円弧状に並んでいた。どうやらそこはブリッジのようだった。
沈黙と好奇心の中、アテナが口を開く。
「殿下、これはブリッジでは?」
「イクでいいよ。そうだな、システムが動いているということは……。この艦のコントロール聞こえるか?」
「お待ちしておりましたドクター。私はこの艦を司るエデンと申します。以後お見知り置きを」
「エデン、この艦にはイクと私の二重の誓約が整えられて実現された形になっているわ。これはどういうことなの?」とソフィア。
「はいマスター、私は皆様六人をお迎えするために地中にて待機しておりました。これは私の創造者の意志でございます」
「いま六人って言ったわね、エデン。ここには五人しかいないわ」
「クレア様のことですね?当然クレア様ももうこの艦の乗員の資格をお持ちです。マスターとドクターがこの艦に足を踏み入れたこと、それ自体が契約でございます」
「契約とはなんだ?エデン。契約なんて聞いてないぞ」ぼくは抗議するように言う。
「契約とは『調停者』になること、でございます」
全員が一斉に言う。
「『調停者』?」
「一言で言えば、3次元宇宙の均衡を保つ者のことでございます」
「おいおいどれだけ宇宙が広いと思ってるんだ。アンドロイドの体をもってしても時間は無限にあるわけじゃないんだぞ」
「存じております。それ故の私なのです」
「まさかエデン、お前光速を超えられるのか?」
「はいドクター。そのまさかです。そのための私なのです。そしてマル様のイオ級艦にもわたくしエデンが搭載されております」
「マスター、ドクター、みなさん外がだいぶ騒がしくなって参りましたので一旦衛星軌道上に移行致します」
「移行って!?」
「着きました、ドクター。艦長代理兼操縦席へどうぞ」
「あっという間だな」
「マスターは中央の艦長席へどうぞ」
「アテナ様は攻撃防御システム担当官席へ」
「みんな席に付いたほうが良さそうだな、座ろうよ」
エデンに促されてネリネが情報担当官席、ルミナが通信担当官席に座る。宇宙空間でも自然に重力が発生しているとは!これはどういう原理で!?
「エデン、君の創造主はどうやらぼくらのことを詳しく知っているようだな?」
「ええドクター。よくご存知です」
「マルの言う4次元知的生命体のことか?」
「左様です、ドクター」
「マスター、ドクター、どうやら地球軍が物騒な動きを始めました」
「そりゃそうだろう、異星人の襲来への備えとしての地球軍でもあるからな。あっ、この艦って未登録機体だよな?いきなり衛星軌道上に来たからうっかり忘れてた」
「エデン、攻撃防御システムはオートで可能なの?航行はオートで可能なの?」とソフィア。
「どちらもイエスです、マスター」
「通信回線音声のみ開け、防御、攻撃態勢で待機」とぼく。
「通信が入ってるわ、ソフィア」とルミナ。
「我々は地球軍宇宙空軍。そこの登録ナンバー不明機、試作機なのか?」
「試作機ではありません、でも私たちの大切な船です」とソフィア。
「地上に降りなさい、これは命令だ。航宙法違反の現行犯で逮捕する」
「機体はどうなりますか?」
「その機体は証拠物件として接収し調査する。航行軌道記録があまりにも不自然でもあることだしな」
「マスター、ドクター。投降はお勧め出来かねます。地球文明にこのアルカ・ソフィア号は全てが新し過ぎるからです。構造は現代の彼らにとても理解の及ばない代物ですし、マスターたちは厳しくこの技術について問われることになるでしょう」
「宇宙空軍の行動範囲は太陽系内だ。エデン、太陽系外へ出ればいいのか?」
「そうですが。ドクター、徐々に包囲され続けています」
「イク、アラームが鳴りっぱなしですぞ」アテナが慌てて言う。
「いく、いいほうほうおもいついた!」
「何か思いついたのか?マル」
「いくよ?どーん!」
その時、正体不明機体ばかりに注意を取られていた宇宙空軍は驚愕の光景を目にした。




