銀河系パトロール中央部聖葬封印作戦
ぼくはいつになく緊張した面持ちでアルカ・エリュシオン号に乗り込んだ。離陸するとアルカ・ソフィア号もそれに続く。
まずは『暴走意識体』この痕跡を辿るのだ。意図的に破壊された惑星や損なわれた生態系、あるいは恒星などの、不自然な物理現象を追うことにした。
4時方向ゼルカディア星から銀河系中心部に向かうと、惑星が無残に食いちぎられた痕跡が見つかり、その先銀河系中心部方面に似た痕跡が半円となって続いていることが分かった。これを辿れば『暴走意識体』に必ず辿り着くだろう。
(ルミナ、奴の思念は感知できないか?)
(うん、まだね)
「マル、どうだ?」
「まだおくのほうみたいだよ」
攻撃防御システム担当席にはミルルがクロノエルに実体化して座っている。
「兵装展開、防御シールド展開を維持」とクロノエル。
「エデン、異常は検知できますの?」と艦長席のセラフィーヌ。
「今のところ検知できません、マスター」
小ジャンプを繰り返しながら中央部へ近づく。
「エデン、この付近で星のほどんどない空間はあるか?」
「あります、絶好の場所が」
「そこへジャンプ!」
アルカソ・フィア号も追随して来ている。
「ここに『暴走意識体』を引き寄せる」
(各員手筈通りに、イレギュラーな事態には柔軟に対応のこと)
(了解)
「マル、例のこんにちはー!をやってくれる」
(こんにちはー!)マルが思念全開で挨拶する。
(ルミナ、反応はあるかい?)
(サイキック・コミュニオン。まだ反応が無いわ)
(こんにちはー!)と今度はクロノエルが挨拶する。
(!)
ルミナとマルとクロノエルの反応が以心伝心で伝わって来た。
「来たか」
(こんにちは)とぼく。
(お前たちは何者だ?意識体が二人、テレパシーが使える物質体が七人か。なぜ意識体と物質体が一緒にいるんだ?)
(意識体はマルとクロノエル、それからぼくら物質体の方はイク、セラフィーヌ、ソフィア、クレア、ルミナ、アテナ、ネリネだよ。旅をしてるんだ。君の名は?)
(おれに名などない。旅だと?何が面白いのだ?ガラクタだらけのこの3次元で?)
(ま、知らないことが多いからね)
(お前たちも俺と同じでガラクタを壊して回ってるのか?)
(いやそうではなくて、星々の多様性を見て回ってる)
(多様性だと俺を生み出した連中も言ってたな、存在の多様性だとか)
(君はどこかで生み出されたのかい?)
(ああ、思い知らせてやったがな。俺を生み出した奴らも俺を封印しようとした奴らにもだ)
(なんでこんな銀河系中心にいるんだ?もし良ければ答えてくれるか?)
(ここは星々や文明が密にあるからな、壊し甲斐があるからだ)
(なぜ壊すんだい?そのままにしておけば勝手に滅びるだろうに)
(絶望を与えてやるのさ。物質体如きが及びもつかない意識体がいることをじっくり教えてやるのさ、じわじわとな)
(物質体がそれほど憎いのか?)
(俺を勝手に生み出しておきながら封印しようとしたんだぞ?怒って当たり前だろ)
(そうか、それはそうだろうな。でも、他の星々は関係あるまい?)
(お前、他の生命体と何か違うな。なんなのだ?見通せない部分も多い)
(ぼくは君と同じく勝手に生み出された、アンドロイドだ。生命は勝手に生まれるものだ、本人の意思に関係無くな)
(お前はお前を勝手に生み出した連中を呪わないのか?)
(ぼくにはどうでもいいな。それより生き方と死に方が重要だと思うからな)
(分からないな、俺には)
(なあ、もし良ければ一緒に旅をしないか?)
(この俺とか?)
(そうだな、それもいいかもな。なんて言うと思ったか!)
(無理か)
(無理だな、俺は壊し足りない、壊す壊す壊す壊す!宇宙ごとぶっ壊し尽くしてやる!)
(その果てに、この宇宙が終わったとして、君はたった一人でどうするんだ?)
(別の宇宙へ行って滅亡させてやるさ、じわじわといたぶりながらな)
(そんなに物質体が嫌いか?)
(ああ)
(物質を壊すために、物質干渉するために自ら実体化して物質化する必要があるのにか?それは自己矛盾ではないかとぼくは思うけどな)
(うるさい!じゃあまずお前からじわじわ殺してやる)
(光剣を使えるか?それで試合をしよう。ぼくに勝ったら勝手にすればいい、だがぼくに負けたらぼくの意思通りにする。体はぼくの形を真似るといい)
(その余興に乗ってやる。お前が白なら俺は黒だ、艦の上に出ろ)
ぼくが金色の光剣を持って艦上にテレポートすると、そこには黒髪で黒衣を来たぼくがいた。




