遺言
旅の準備が始まった。必要物資を買い込み、アルカ・ソフィア号とアルカ・エリュシオン号に積み込む。今回ばかりは艦が損壊するかもしれないし、バージョンアップしたぼくらの体も持たないかもしれない。『暴走意識体』との決着は何が起きるか分からないのでぼくらはマルとミルルを除いて遺言をマザーズに個々に依頼することにした。願わくばそうならないことを祈るが。
専用秘匿回線。
「こんにちはマザーズ」
「こんにちはドクター」
「相続の話なんだが」
「なに?みんなして。どこかに死にに行くみたいじゃない」
「可能性の話さ。アンドロメダの『悪い奴』がいただろ?あれの亜種が作られ銀河系中央部に向かったようだ」
「詳しくは記録データを渡す」
「!」
「これは本当なのね?」
「残念ながらそうだ」
「太陽系に来なかったのは幸いとして、あなたたちはこれから死地に赴くのね」
「そうだ」
「人口知性人格認証法、通称アンドロイド法によると、アンドロイドは人間と異なって子孫を持たないが家族を持つことが許されている」
「そうよ」
「だから、クレア、ソフィア、ルミナ、アテナ、ネリネ、セラフィーヌを家族としたい」
「遺産相続者を彼女たちにして分与するのね」
「そうだ」
「マルとミルルについては意識体だから法的には想定されていない。それに彼らは株式や貨幣に興味を持たない」
「法的にはそうなるわね」
「もし誰かが生き残った場合、IK Andoroid社のぼくの株式と財産は彼らに均等に分配されるようにしたい。そして会長にはクレアを、クレアもいなければシャインを会長にしたい」
「できるだけ非課税な手段を取った方がいいのよね」
「そうだ」
「了解よ、それで弁護士と書面を作るわ」
「では、宜しくたのむねマザーズ」
「無事を祈ってるわ」
これで肩の荷が下りた。




