定期健診
セラフィーヌが真新しいボディになったので、こんどはバランスを取るべく『調停者』側の健診を行うことにした。羽田第一宇宙港に着くと見たことがなかった五人はアルカ・エリュシオン号の輝くパールホワイトの機体に絶句していた。パールホワイトの機体とマットブラックの機体の対比が真に宜しい。全員がアルカ・ソフィア号に乗るとぼくは地球衛星軌道へ上がり、4次元へ遷移した。
「ソフィアさんソフィアさん、1番の診察室へどうぞ」
「どこか具合の悪いところはありますか?」
「特にないわ」
「ではスキャンしますので診察台に仰向けに寝てくださいね」
「スキャン開始、治療開始」
「はい、ソフィアさん終わりましたよ」
「やだもん」
「は?」
「やだもんがでたもん」
「お姫様抱っこするから降りようね」
「うん」
「クレアさんクレアさん、1番の診察室へどうぞ」
「どこか具合の悪いところはありますか?」
「先生こそ働き過ぎじゃないんですか」
「そんなことを患者さんに言われたのは初めてです」
「とくに具合の悪いところはありません」
「ではスキャンしますので診察台に仰向けに寝てくださいね」
「スキャン開始、治療開始」
「はい、クレアさん終わりましたよ」
「だっこ」
「は?」
「靴履かせて」
「はいはい、降りましょうね」
「ルミナさんルミナさん、1番の診察室へどうぞ」
「どこか具合の悪いところはありますか?」
「ぜんぶ」
「は?」
「ぜんぶ悪いからちゃんと診て」
「はいはい、ではスキャンしますので診察台に仰向けに寝てくださいね」
「せんせも一緒じゃなきゃやだ」
「は?一人で寝てくださいね」
「また眠くなるの?」
「ちょっと眠くなりますがすぐに終わりますので」
「えっちなことするんでしょう?」
「……ぼくは『医師』ですよ?」
「スキャン開始、治療開始」
「はい、ルミナさん終わりましたよ」
「えっち!」
「風評被害はやめて」
「アテナさんアテナさん、1番の診察室へどうぞ」
「どこか具合の悪いところはありますか?」
「イクが悪い」
「何がですか」
「胸がドキドキするんだ」
「前回もそんなことがカルテに書いてありますね」
「胸部のどこらへんですか?」
「スケベ」
「なんでですか。胸部に鼓動感あり、と」
「抱きつきたくなるんだ」
「衝動性行動障害の疑い、と」
「はい、ではスキャンしますので診察台に仰向けに寝てくださいね」
「覆いかぶさろうとしてるな」
「……しませんよ、ぼくは『医師』ですからね?」
「スキャン開始、治療開始」
「はい、アテナさん終わりましたよ」
「もう?」
「ええ」
「何事もなく?」
「……ぼくは『医師』ですよ」
「ネリネさんネリネさん、1番の診察室へどうぞ」
「どこか具合の悪いところはありますか?」
「具合と言えば具合かもしれませんけど」
「膝に乗らないで、首に腕を回さないで、椅子に座ってくださいね」
「ではスキャンしますので診察台に仰向けに寝てくださいね」
「脱いだ方がいいでしょう?」
「いえ脱がなくてもオーケーな最新型なんです、これが」
「ちっ」
「スキャン開始、治療開始」
「はい、ネリネさん終わりましたよ」
「せんせ、本当にもう終わりですの?」
「膝に乗らないで、首に腕を回さないでくださいね」
「残念」
「?」
「いくさんいくさん、いちばんのしんさつしつへどうぞ」
「どこかぐあいはわるいですか?」
「いや大丈夫だと思いますよ、マル先生」
「ではすきゃんしますので、しんさつだいにあおむけにねてね」
「すきゃんかいし、ちりょうかいし」
「はい、いくさんおわりましたよ」
「マル先生、ありがとうございました」
「おだいじに」




