地球帰還
3508年にぼくたちは地球へ帰還した。羽田第一宇宙港に着いて早々にマザーズに連絡する。エリシア星と死神の星、ゼノヴァ星の件だ。
専用秘匿回線。
「マザーズ、今帰還した」
「お帰りなさい、ドクター」
「今回はなかなか厄介なことが2件あった。今データを送るよ」
「超文明にブラックホールにウイルスで死滅した星ですって!?」
「うん、実に厄介な案件だった。ゼノヴァ星のウイルス関連についてはその情報を最大機密にしてもらいたい。今の地球の生化学水準では死神の星のような破滅的な事故になることもあり得るからね」
「それはそうね」
「次は12時方向へ向かう。まず会社に顔を出すけどね」
「銀河系の向こう側ね。気を付けてね」
「ありがとう、ではまた」
回線を切るとみんなを見回してぼくはため息をついた。
「正直自分から足を突っ込んでおいて言うセリフではないけど、今回の死神の星には堪えた。自ら滅びるとは」
「あなたもみんなも休養が必要ね」とソフィア。
「そうよ、休んだ方がいいわ」とクレア。
「それは思いますな」とアテナ。
「ミルルがいたからよかったものの」とルミナ。
「いくがんばった」とにこにこするマル。
「みるるもがんばる」と足をブラブラするミルル。
「上陸前にとっておきのティーカップでお茶をいかが?」とネリネ。
今日の紅茶は少し苦い味がした。
翌日は快晴だった。クレアのフォーチュン・ウィヴィングのおかげかな?みんなでシャインに会いに行くのだ。シャインは本社の副社長室にいた。
「みんな二年ぶり!」とシャイン。
お昼の食事をみんなでしながら、相変わらずひまわりみたいな明るさに心がほどける気がする。シャインから報告があり、例の地球防衛のための軍事部門の事業化が順調に進んでいるから安心してとのことだった。軍事研究所も新築したそうだ。データ更新したら、じゃあ早速軍事研究所に行ってみようじゃないか。
軍事研究所はさすがに警備が厳重だった。五か所の個人承認を通らないと辿り着けないようになっていたが、もちろんぼくは全て素通りだ。不意打ちの訪問だったが、研究所員は会長とはそういう神出鬼没な人だと知っているので平常運転だった。
「所長、リバースエンジニアリングの進み具合はどうかな?」
「プラズマパルスガン、イオンパルスガンは解析を終えました。が、グラビティパルスガンにはやや遅れています。何しろ重力制御技術そのものですから」
「それはそうだろうな。どこで煮詰まっているんだ?」
「図面で言えば、この部分です。重力干渉波発生装置の核たる部分ですね」
「ここは逆トポロジーに展開するとこのような回路になってるんだな。それを最適化されているから返って分かりにくいんじゃないかな」
「なるほど。そう逆展開すると見えて来る構造がありますね」
「そうそう」
「ご教授ありがとうございます、会長」
「レールガン、EMPダート、指向性マイクロウェーブ・ディスラプターはどうかな?」
「はっ、そちらは順調に開発が進んでおります。会長が特にレールガンという物理攻撃手段も持つべきだというお考えと伺っておりましたので、少し工夫をしました」
「複数の異なる手段を持つことは優位性を高める。それはどんな工夫を?」
「まず、初速向上。そして推進力強化。そして着弾時のドリラーですね」
「つまりねじ込むことで装甲を内部まで貫通するようにしたと?」
「所長、君、優秀!」
「お言葉ありがとうございます」
こうして軍事研究所の視察を終えて、佃の自宅に帰った。
「ミルル、今度の旅は銀河系12時方向だからミルルがいたところに近いんだけど、行きたいところはある?」
「えーとね、えいれなっていうほしの、みれのあのまちにいきたいの」
「エイレナ星にミレノアっていう都市があるんだね?」
「むかしあったの。でもいまは……」
「分った、そこに一緒に必ず行こうね」
「うん。てれぱしーでおくるね」
送られてきた都市ミレノアはルクシエル星系のエイレナ星にある失われた都市だった。映像からは人がいないため荒涼としてはいるが、とても芸術性が高い建築物がそこかしこに建っていることを窺わせる。ここにミルルの意識が縛られていたということは、何かとても深い理由があるのだろう。詳しくはソフィアのアストラル・アーカイブで見てもらえば歴史が分かるとは思うが。
マルが地球で生まれ、銀河系の真反対側にミルルはいた。これは偶然なんだろうか。それでも、ミルルのいた太陽系と真反対側に何か重要な意味あるような気がするのは、ぼくのただの当てずっぽうな勘ではないような気がするのだ。




