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銀河系パトロール10時方向

 研鑽の結果もあり、自分の剣技を整理して重力制御とテレポートを基礎とした光剣無刀流の型が完成した。

 五輪塔と五輪書の空、風、火、水、地。

上から空、「雲足(うんそく)」。

局所重力場を足掛かりとして雲の上で歩を進めるが如くに動く足捌き。

そして風、「旋風」。

局所重力場を横にして剣風をまとい螺旋状に捩じり込む技。

そして火、「鳳翔」。

これは栗千代師匠から受け継いだ鳳凰の如くに弧を描いて遠方を斬る技。鳳翔を円にして飛ばす「鳳翔・円」も新たに身に付けた。

そして水、「流水」。

流れる水の如く剣筋を受け流す技。

そして地、「金剛」。

これは栗千代師匠譲りのプラズマガンやレールガンすら弾く超速防御技。

そして固有スキル奥義、「心眼」。

弱点を見抜く力。

そして光剣無刀流奥義、「刀取(とうどり)」。

無刀のまま相手の剣を奪い取る技、無刀取りだ。

 後は更なる修練あるのみだ。


「いく、つよくなった。これあげる」とマル。

受け取ってみると光剣だが、カチッとボタンを押すと金色の光が迸った。これって、栗千代師匠やウィリアム師匠と同じ色では?

「マル、これを受け取っていいのか?師匠たちと同じ色だぞ?」

「いいの、よくできましたしょうだから」

「よくできました賞かあ。ありがたく貰っとくよ。ありがとうな、マル」

「いくおめでとうなの。よかったね!」

「ありがとう、ミルル」


 ぼくらは再び今度は銀河系パトロールの10時方向へ向かうことにした。シャインに後は頼むと託してから、アルカ・ソフィア号の外に必要物資を山のように積むと、エデンに艦内の生活ブロック倉庫へテレポートしてもらう。全員が装備を整えて所定の席に着くとソフィアが言った。

「エデン、調子はどう?少しは休めた?」

「ええ、温泉で疲れを癒しましたとも。絶好調ですよ」

「それでは、アルカ・ソフィア号離陸」

「オーケー、アルカ・ソフィア号衛星軌道へ移動」とぼく。

その頃、アルカ・ソフィア号が離陸したとのニュースが地球では流れていた。

「兵装展開、防御シールド展開完了」とアテナ。

「それでは行きましょう」

「エデン、行くぞ。ジャンプ!」

「まって、ほろびそうなほしがあるの」と珍しくミルル。

「サイキック・コミュニオン。9時50分辺りの星域ね。透き通るような高度な知性を感じるわ」

「ソフィア、寄り道するか。滅びそうな星と聞いて黙って見過ごせないだろ」

「そうね、その近くへ移動しましょう」

「オーケー、ジャンプ!」


「エデン、この星系と惑星名は分かるか?」

「もちろんですとも!ここはアルカディア星系エリシア星ですね、首都はノクティアですね」

「マル、危険性は感じるか?」

「ないよー」

「そりゃ何よりだ。首都らしき都市の上空静止軌道に亜光速で移動する」

「こりゃなんだ!?こんな水晶宮みたいな美しい都市があるのか!」

「アストラル・アーカイブ。文明が興ってから50万年は経ってるわね。地球文明の100倍は歳を取ってるわ。自制の歴史が感じられる高度な倫理と文明を持つ星よ」

「星から通信が入ってるわ。繋ぐ?」とルミナ。

「繋いで頂戴」とソフィア。

「私はエリシア星評議会議長のヴァレリアと申します。こんにちは。あなた方はどこからいらしたのですか?」

「私たちは太陽系の地球という星から来ました。『調停者』として旅の途中です。初めまして」

「『調停者』!あなた方は『調停者』なのですか!?」

「はい。でもどうしてヴァレリア議長殿は『調停者』のことをご存じで?」

「浮遊交易自由都市アウレリア港へ行かれたでしょう?私どもの船も寄港していたのです」

「つまり黒鉄軍団とのいざこざとその決着については知っているというわけですね?」とぼく。

「ええ、その経緯は存じております」

「訪問させていただいても宜しいでしょうか」とソフィア。

「ええ、もちろんですとも。私たちはあなた方を歓迎致しましす」


 会談をするために首都ノクティアの宇宙港に着陸すると、既に大勢のエリシア星人たちが見学に来ていた。彼らは言ってみればエルフを思わせる風貌の色の白い背の高い人たちだった。金色の絨毯が引かれた道をちょっと面はゆい思いをしながらぼくらは歩き、ヴァレリア議長の挨拶を真似てこの星の流儀で挨拶を返した。ぼくの両肩に座るマルとミルルは短い手を振ってテレパシーで(こんにちはー!)と挨拶している。


 水晶でできたような議事堂らしき建物に入ると、歴史と文化を感じさせる彫刻やレリーフがあった。勧められるがままにぼくら六人は着席し議会メンバーと挨拶を交わした。

 話は実に切実で深刻なものだった。小さなはぐれブラックホールがこのアルカディア星系へ向かっていて、あと数世紀もすればその影響によりエリシア星の環境は激変し、滅亡しかねないということだった。もしこのアルカディア星系にブラックホールが近づいたら惑星ごと軌道を外れ極寒の宇宙へ吹っ飛ばされる可能性が大なのだ。彼らの先進技術を以てしてもこの天体運動をどうすることもできずにいるという絶望的な話である。これには我々も沈黙せざるを得ない。ぼくらは『調停者』であってブラックホールの運動などというものを左右できる力は持ち合わせていないのだ。

 そこで唐突にミルルが口を開いた。

「なんとかできるよー」

これにはそこにいた評議会の面々とぼくら六人は同時に「は!?」と言った。ミルルは足をブラブラさせてにこにこしている。

「みるるならできるよ、ぼくにはちょっとむずかしいけど」とマル。

「ミルル、どういうことなの?」とぼく。

「はぐれぶらっくほーるなのかな?だれかがそうしたとおもうの」

「ミルルはどこかの誰かがエリシア星を滅ぼそうとしてる可能性もあると考えるんだね?」

「だって、こんなことがおきること、まずないんだもん」

「ミルル、これはとってもこの星の未来を左右する大事な話だ。何とかできるって?どうやって?」

「やってみるから、ぶらっくほーるにできるだけちかづいて」

「分かった。ソフィア?」

「やってみましょう」

「私どもはここでご無事をお祈り申し上げております。何卒宜しくお願い致します」


 ぼくらはアルカ・ソフィア号に乗り込むと上昇した。エリシア星の船も一隻付いて来るようだ。

「エデン、こちらに向かっているブラックホールできるだけ近傍にジャンプしてくれ。危険時は4次元回避だ」

「了解しました、ドクター。確かに小さなブラックホールが主星のアルカディア星に向かっていますね。確率的にあり得ない軌道で」

「かえせばいいの」とミルル。

「えっ?ブラックホールを返す?もしかして呪い返し的な?」

「到着しました。ここなら安全でしょう」とエデン。

「うわ、降着円盤があるな、ジェットも出てる。ミルル、何とかできるか?」

「なんとかするの。おうちへおかえり!りぼん!」

一瞬空間が捩じれたように見えたがどうなったんだ?

「エデン、ブラックホールの軌道はどうなってる?」

「それがですね、引き返しました」

「引き返した?」

「はい、元来たおうちに帰るように」

「みるる、やったね!」マルとミルルが飛びながらハイタッチしている。

「アルカディア星系エリシア星に戻ります」とソフィア。

「行くぞ、ジャンプ!」


 ノクティア上空に待機して着陸許可を求めると直ぐに許可が出た。ぼくたちが下船するとそこは群衆の歓喜の声声声。アルカ・ソフィア号に付いてきた先のエリシア艦がいち早く事態の好転を報告したようなのだ。

 ぼくらを出迎えたヴァレリア議長を始め議会の長老たちも涙を流さんばかりに手を取って迎えてくれた。ノクティアのメディアはこのことをミルルの奇跡と呼んでいた。全部ミルルのおかげでぼくらは今回何もしてないけど嬉しい。当のミルルはとまんざらでもなさそうだ。

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