地球帰還
帰る星があるというのは良いものだ。3506年にぼくらは地球へ帰還した。羽田第一宇宙港に向かって着陸許可を求め降下するとビーコンで別な区画に誘導された。そこは地球軍宇宙空軍のすぐ隣で、どうやらアルカ・ソフィア号のために厳重な警備区画として地球軍が用意したらしい。1回目の航行は宇宙軍に犯罪者認定されてからの逃亡だったのにと思いながら、時の流れを感じる。
マザーズに専用秘匿回線で帰投した旨の報告を入れる。
「久しぶり、マザーズ」
「ドクター、お久しぶり。今度はどこに行ってたの?」
「太陽系から遠くない銀河系の浮遊交易自由都市アウレリア港というところでね」
「銀河団ジャンプをするあなたたちの遠くないという感覚はちょっと分からないわね」
「そこでカルゼグという本星がある連中といざこざがあってね」
「また何かやらかしたのね?」
「黒鉄軍団というバカでかい船を持ってて、アウレリアを自分たちの物にしようとする悪い奴らだったから、戦艦もろとも本星と皇帝を滅ぼした」
「何ですって!?今聞いたのは何かのSFかしら?」
「いや事実だ」
「あなたはいつも軽く言うのね、宇宙の歴史を変えてるというのに」
「そこで地球軍に土産があるんだ」
「また何か分捕ってきたの?」
「人聞きの悪いこと言うなよ。きちんと店で買って来たガンだ」
「それは悪かったわ。どんなガンなの?」
「プラズマガンとイオンパルスガン、グラビティガンだ。これは革新的技術だと思うぞ、地球には」
「何ですって?小型軽量のプラズマ発生器と対電子装備、重力干渉装置じゃない!これは一大事だわ」
「ぼくらは宇宙で地球文明がいかに遅れているかを思い知っている。マザーズとの技術革新のロードマップ合意を大きく逸脱することはしないが、いささか進化が遅いと思うんだ。だからロードマップの範囲でIK Android社は軍事産業へ参入する」
「それはまた大ニュースになるわね」
「それらのガンは交易自由都市アウレリア港では普通に出回ってる物だ。リバースエンジニアリングでどちらも大いに参考になるだろう」
「じゃ、いつも通りアルカ・ソフィア号の外に出しておいてくれる?地球軍が回収に来るわ」
「了解、段ボール箱に『お土産』と書いて置いておくよ」
「いつもありがとう、地球のために」
「ぼくの生まれた星だからな。それも二度も。それじゃ、宜しく」
「はい、またね」
思いついた基本特許を副社長兼研究所長のシャインに渡すため、会社人間ならぬ会社アンドロイド2人を含むぼくら一行は本社ビルへ向かった。
「ただいまシャイン!」
「イクお帰りなさい、クレアもみんなも元気そうね」
「これから取締役会があるんだけど、二人とも出る?」
「出ようかな、約400年ぶりだけど。社の方針転換をする議題を提案する。詳しくはぼくの記憶を読んでくれ」
「私も出るわ」とクレア。
ぼくはシャインとクレアとぼくを分岐ケーブルで繋いだ。
「!」シャインはひたすら驚いている。
「つまりIK Android社は軍事産業へ進出するということなのね?」とシャイン。
「そうだ。時空を超えられる文明を見ていると地球が心配でね。今回持ち帰ったプラズマガンとイオンパルスガン、グラビティガンを含めて渡した資料のレールガン、EMPダート、指向性マイクロウェーブ・ディスラプター等の基本特許を押さえる。そのバリエーション化と大規模兵器化へ展開する。防衛はアンドロイドとロボットが中心に行う。宇宙空間は人間には荷が重いからな」
「また帰ってきて早々、驚くべき提案をするのね」とシャイン。
「じゃあ、取締役会室へ行きましょうか」とクレア。
「ああ、資料は頭に入ってる」
取締役会ではマザーズとぼくとの協力関係は伏せたものの、会長のぼくと社長のクレアは外宇宙の技術レベルについて力説し、太陽系防衛を真剣に考える時だと力説した。役員たちに大きなどよめきが起きたが、このIK Android社の事業拡大案は彼らに拍手を持って迎えられた。この日をもってIK Android社は地球防衛のための軍事産業へ事業展開することになった。




