表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/52

黒鉄軍団

 船型の大型戦艦がゆっくりと高度を下げ宇宙港に着艦した。人々は不安げに見上げている。

「サイキック・コミュニオン。イク、あの戦艦よ」とルミナ。

「でかいな」

(エデン、あの戦艦はどこの星系の何者だ?)

(あの艦はドレグマ星系の本星カルゼグを本拠地とするこの星域を半分以上は支配している黒鉄艦隊ですね。通信を解読しますと準旗艦マレフィカですね。将軍はヴェスペラ、カルゼグ三将の内の一人です。恐らくは補給と奴隷補充のための寄港かと。情報を集めますね。注意してください彼らはプラズマガンやプラズマランス、光剣を使います)

(宜しく頼む、ありがとうエデン)

「アストラル・アーカイブ。この浮遊都市はかつて浮遊大陸だったその後発展して侵略された痕跡は無いわ。カルゼグの動きは要注意ね」とソフィア。

「だとすると嫌な雰囲気はどこからするのかな?」とぼく。

「あそこ」とルミナとマルとミルルが同じ黒鉄艦隊準旗艦のブリッジを指す。取り敢えずカフェみたいな店に入る。お茶みたいな飲み物を注文し、来たカップにコア・ディサーンメントを使いながら安全か否かを判断する。大丈夫みたいだ。

(飲んでも大丈夫だ)

みんなほっとして飲み始める。やはり水分を必要とする異星人が多いのか水系の飲み物は基本問題ないのかも知れない。

そこへ黒のビニールのような光沢のあるぴっちりした軍服を着た五人が入って来た。人間に似ているが、言ってみれば口が牙みたいで蜂か蟻に近い風貌だ。コア・ディサーンメントで見ると、我々と同じくサイボーグかアンドロイドだと分かる。入ってきてカウンター席へ座って飲み始めた。あの黒鉄艦隊の兵たちだろう。アルコール飲料の類だろうか、それを頼んで飲んでいる。アテナの大剣をチラ見しながら何やら言っている。翻訳機で侮蔑的な言葉であることは分かった。奴隷にしようかなどと言っているのだから。

「店を出ようか」とみんなに促すぼく。

チップカードで清算して店の外に出る。

店を出る時、最後尾だったアテナの腕を五人の一人が掴んだ。たちまち逆にアテナに手を掴まれ店の外へごみのように吹っ飛ばされる黒い兵隊。アテナに掛かれば当然だ。残りの四人もワッと外に出てきた。掴みかかって来たのでぼくは裏拳で顔面を打ち一人気絶させた。ネリネも背後に回り首筋に手刀で一撃して倒している。残りの二人がガンを抜いたのでテレポートして居合の要領を使って素早く光剣でガンを叩き落す。あのガンはもう使い物にならないだろうし、脇を見るとソフィア、ルミナ、クレアもパルスガンをすでに抜いている。三人の黒い兵隊は2人を担いでかなわないと思ったのか足早に逃げて行った。「もめ事は店の外でやれ」、ソフィアが言ったことは地球の荒くれのいる場所でも常識だし、彼らはもたもたしてたら危なかったかも知れない。だが、この立ち回りが黒鉄艦隊の注意を少なからず引いたことをぼくはまだ知らない。


 カルゼグの準旗艦マレフィカでは事実が誇大に伝わっていた。なぜなら同じぐらいの背格好の異星人にこんてんぱんにやられたとあっては、好戦的でプライドの無駄に高いカルゼグ人にとって恥辱以外の何物でもないからだ。その風貌はいつしかそれが上層部へ伝わり、とんでもなく強い異星人がいたという話に、艦長のヴェスペラ将軍は警戒心と好奇心を持ち、その映像を募って得ていた。そして艦内には内々にその異星人を捕えよという命が下った。ヴェスペラ将軍自らも五人の副官兼護衛たちを連れて浮遊交易自由都市を視察していた。その主目的はアウレリア港商工会の会頭に服従を迫るためであった。


 商工会長のメウドは突然のヴェスペラの来訪に危機感を覚えていた。なにしろ相手はカルゼグ星人の3将軍の一人だ。下手を打てば殺される。かといってこの自由貿易港をカルゼグの支配下にしたくはない。しかしこの星域ではカルゼグに対抗し得る勢力は無い。

 ヴェスペラの訪問はやはりアウレリア港商工会のカルゼグへの服従であった。それと共に意外な映像を見せられた。それはカルゼグ兵五人を白っぽい身なりの異星人三人があっという間に叩きのめす場面だった。その者たちを探せという要求をヴェスペラは突き付けてきた。ここにメウドは一縷の望みを見出した気がした。

 メウドはその白っぽい一行の行方をモニター記録から探しアルカ・ソフィア号へと辿り着いた。その艦は異様で何の物質で出来ているのか分からず、円盤状の上部と下部の半周大きさにに五芒星が尾を引きながら互いに回り続けるオリジナルマークが燦然と輝いている美しい機体だった。秘匿回線で早々にメウドは艦長に連絡を取った。

「浮遊交易自由都市アウレリア港商工会会頭のメウドでございます」


「初めまして、こんにちは。メウド会頭」ソフィアが挨拶する。

「突然通話する無礼をお許しください。カルゼグ軍があなた方を探しております、例の一件で」

「なるほど動きが速いですね。ご忠告ありがとうございます。でもお話はそれだけではないのでしょう?」

「実はカルゼグ軍はここアウレリア港を支配下にしに参ったのでございます。この聖域は彼らの勢力圏と言ってよく、ついに私どもの都市へも侵攻してきました。出来ますればあなた方の腕を見込んでご助力願えないかと、こうしてご相談に伺った次第です」

「しかしこちらは六人です、なんの足しになりましょう」

「御冗談を。秘めたる力、未知の力を見抜けなければ会頭は務まりません」

「こちらでご助力出来るかどうか、仲間と話す必要がありますのでご返事は後程になりますが宜しいでしょうか?」

「それで結構です、願わくばよいご返事をお待ちしております」

通信は切れた。

「来たか」とぼく。

「黒鉄艦隊をアウレリア港から退ける、永遠にな。ここは星間の中間点の自由商業都市だ。この中立的都市は守られるべきだろう」

「私もそう思うわ。自由が圧制に晒されようとしているのを見過ごすことは出来ないわ」とクレア。

「将軍には将軍を、願わくばその時は不肖アテナにご命令を」とアテナ。

「この都市について聞きたいこともありますから、一度商工会へ訪ねてみましょう」とソフィア。

「エデン、カルゼグ皇帝の情報はあるか?」

「本星カルゼグのヴァルゼク皇帝は正体が不明です。こればかりは本星へ近づかないと分かりません」

「ま、取り敢えずお茶でも飲もうか、ネリネ頼むね」

「かしこまりました。今お入れ致します」


 アウレリア港商工会議所にて。挨拶も自己紹介も済ませて本題に入る。

「足をお運びいただき、誠にありがとうございます」とメウド会頭。

「早速ですが、この交易自由都市の理念をお聞かせくださいませんか」

「この浮遊大陸近隣は資源が乏しく、この星域の商業の拠点として存立してきたのです。即ち自由な交易、それがこの浮遊交易自由都市アウレリア港の存在意義でもあり目的でもあります」

「そこでぼくからお尋ねしたいのはカルゼグ艦隊の勃興についてです。かれらは以前からこのアウレリア港に寄港していましたか?」

「いえ、近年の情報によりますと突如黒鉄艦隊なるものが付近の惑星を侵略していますが、それ以前にはそのようなことはなかったのです」

「突如というのは非連続的だ。通常の文明の発展過程ではちょっと考えられない変化だな」

「そうなのです。それにヴェスペラ将軍は突然いらしてアウレリア港はカルゼグの支配下に入れとお命じになられました」

「よくもそんな理不尽を突き付けてきたものですな」とアテナ。

(ルミナ、彼の言葉に偽りはあるか?)

(無いわ。言葉通りの思念だもの)

(ありがと)

「微力かもしれませんが、『調停者』として私どもは尽力させていただきます」

「『調停者』ですか、初耳です。何卒よろしくお願い申し上げます」


 浮遊タクシーでも拾おうかと地上で待っていると、一台の浮遊車が近づいてきた。全身真っ黒な姿で先頭の者は黒のマントを羽織り顔を覆う卵型のヘルメットを被り、そのヘルメットには後方に向けて鋭角三角形のアンテナのようなものが付いていた。アウレリア港商工会のビル前、黒づくめの六人、先頭だけは異なる姿、それが誰であるか明瞭だった。

 先頭の者が部下にやつらを捕縛しろ奴隷にすると命じた。甲高い声だ雌型か?五人がグラビティガンを撃ってくるが重力制御出来るぼくらにはその手は通じない。ぼくらは一斉に光剣を抜いた。アテナは大剣を肩に担いでいる。

「私はヴェスペラ。お前たちも光剣を使うのか?ならばこれで相手をしてやろう」

と黒っぽい色の光剣を構えた。

「お前たちはサイボーグか?かなり身体強化しているな」

「ほう、それが分かるのか?ならば投降しろ」

「断るね、ぼくは無理強いをするのもされるのも大嫌いな性分でね」

「ならば奴隷にしてやろうと思ったが殺す」

「寝言は寝て言え!出来るならやってみろ!」

(心眼。急所は胸中央の動力炉だ。ネリネとぼくらは後ろの五人を片付けるぞ、アテナ、その女王バチみたいなやつの相手をしてやれ、行け)

各々が重力制御とテレポートを繰り返しながら敵に接近する。ぼくはテレポートと同時に一人の胴を両断。ネリネは別の一人の背後へ現れ気付かれ間もなく胸を串刺しにした。ソフィアは正統派剣術らしく袈裟懸けに切り倒し、ルミナは突き技でハチの巣にし、クレアは相手の光剣を自分の光剣にきれいに添わせるように滑らせると胸を刎ねた。

「ヴェスペラ、お前に勝ち目はない。降伏してとっとと星へ帰れ。アウレリア港に今後手出しをするなとお前の上に伝えろ」

「ふざけるな、お前ら如き私一人で十分だ!」

神速のアテナの大剣を光剣でかろうじて受けている。驚くべきはマルが4次元製の謎金属をぬりぬりして強化した虹色の大剣は光剣に接触してもなんともないことだった。アテナの超速機動剣撃の重圧にヴェスペラは何とか耐えている。しかし、アテナが大剣を上段に構え「ハイパーキネティック・ソードクラフト!」と唱えた直後にヴェスペラの黒っぽい光剣は弾き飛ばされ体が右肩から両断された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ