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双子文明

 艦内が寝静まった操縦席でぼくは一人銀河系を見下ろしていた。

「なあ、エデン」

「なんでしょう?ドクター」

「この銀河系にもマルの言う意識体の『悪い奴』がいるんだろうな」

「いるかも知れません」

「それならマルの仲間もいるんだろう?」

「いるかもですね」

「どちらも宇宙では稀有な存在だということは確かだ」

「そうですね」

「人は善性や悪性の両方の面が立ち現れる性質を持つ。『悪い奴』も反対側の性質を持つ意識体も、一分でももしかしたらそうなのではと思ってね」

「天秤で測るようなお話ですね、ドクター」

「何を持って善と見るか何を持って悪と見るか、4次元知的生命体は3次元の図を眺めながら何を基準にしているんだろうな?」

「私は彼らの被造物ですので彼らの意図は分かりかねますが、時空を超える観測者としての能力を持つ私が思うことは、彼らはとてつもない未来の3次元の予測を思慮しているようだということですね」

「どのようにこの宇宙が収束するか。破綻点に至るのか否か。そういうことかな?」

「ええ」

「それ以上は直接4次元知的生命体に『調停者』として問い合わせてくれ、ということだな?」

「ええ」


 自室に入る。僕のベッドにもぐりこんでるルミナ発見。

「何でぼくの部屋で寝てんのさ?」

「え?あっ、部屋間違えちゃったー、てへっ!」

「あのね、君ね」

「それより、聞いてよ!」

「随分ストレートな話の逸らし方だな」

「思念の感度が上がったんだけど、銀河系で気になる思念を拾ったのよ」

「あの頭蓋の謎な材料ってそこまで感度を上げるのか...」

「ちょうど太陽系の反対側辺りのところ」

「それでどんな思念なんだ?」

「感じたことのない異質さが際立った思念。もうちょっと近づければはっきり分かると思うけど」

「明日、近くまで飛んでみるか。自分の部屋にもう帰りなさい」

「やだ」

「帰りなさいって」

「やだー」

「帰りなさいよ」

「やだぁ」

 いつのまにか他の三人が部屋に来て見てる。

「いつまで続けるのか面白いからそのままどうぞ」とソフィア。

「粘りますなぁー、ルミナ殿」とアテナ。

「あらあら、いいわね、うふふっ」とネリネ。


 ブリッジにネリネが紅茶と満載のお菓子を運んできた。

「お紅茶が入りましたよー」

「ありがとう」とみんな。

「ところでさ、昨日聞いたルミナの異質な思念っていうのが気になるからさ、ちょっと調べてみようよ」

「そうね、ルミナが気になる異質な思念って言うぐらいだから異質なんでしょう」とソフィア。

「何があるか分からないから、兵装は展開、シールドも張っておく」とアテナ。

ルミナがぼくの右肩のマルを見ながら、

「場所はちょうど銀河系辺縁の太陽系から180度のところ。気になるというのは、その思念がどこかマルに近いのよ」

「生物ではなく、もしかすると意識体ってことか?」

「マルは何か感じる?」

マルは長靴をブラブラさせて、

「うーん、なにかな、なにかなー?」

「そっかー、よく分かんないかあ」とぼく。

「銀河系の正反対側に、宇宙でも稀と言われる意識体がいるんでしょうか?」とネリネ。

ぼく、紅茶を飲みながら。

「まあ何にしろ、意識体を想定すると小ジャンプで徐々に近づいて行ったほうが良さそうだな」

「そうね。ルミナとマルも思念感知をお願いね」とソフィア。

「ええ、引き続き注意するわ」

「いいよー」

「それじゃ、行きますか!」

「エデン、調子は?」

「私はいつも絶好調ですよ、ええ」

「じゃあ、まず銀河系円盤中心からその位置へ接近する。距離を半分までまず詰め、それから目標までの距離の半分を詰めるといった接近の方法を採るというのはどうかな」

「了解です、ドクター」

「ジャンプ!どうだ?ルミナ?マル?」

「まだはっきりしないわ」

「なにかなー、わかんない」


「この星域で高エネルギー反応あり」とネリネ。

「エデン、何か分かる?」とソフィア。

「どうやら拮抗した勢力が艦隊規模で撃ち合っているようですね」

「小ジャンプして接近する」とぼく。

「かなり発達した文明同士です。面倒くさそうな連中ですねえ」とエデン。

「この艦のシールドでも防げない可能性もあるな」とアテナ。

「ここは敵対する思念がむき出しですごいわ」とルミナ。

「近くに小惑星がある。そこに着艦して徐々に推進する」

「小惑星のフリですか、面白いことしますね。それなら光子迷彩も施しましょう」とエデン。

「ここからなら状況は把握しやすいだろう。ネリネ?」

「異なる恒星系の衝突でしょうか。ジャンプを使用した陽電子砲の撃ち合いになっていますね。戦闘機、機動部隊も確認しました」

「双方が陽電子砲を持ってるのか。反物質の対消滅兵器は確認出来るか?ネリネ」

「いえ、そこまでの反応はありませんね」

「さてと。どうするか」

「エデン、彼らがジャンプして来た方角と文明圏は分かりますか?」とソフィア。

「よくぞ聞いてくれました。もちろん分かりますとも、ええ」得意げにエデン。


「それではご説明させていただきます。双方の主星はおよそ200光年離れた位置にあり、銀河系中心方向にあるのがカルドア星系、辺縁方向にあるのがミレアス星系で、両者の対立はここ数千年続いています。どちらも拮抗した文明と勢力を持ち覇権を競っているという、まあ、言うなれば生物によくある現象ですね、ええ」

「ありがとう、エデン。どういう因果があるのかまでは調べないと分からないな、ソフィア」

「そうね。二つの星の歴史を知る必要がありそうね。銀河系中心方向のカルドア星系の惑星にまず行きましょう。次にミレアス星系へ」

「私はカルドア星系の思念を探るわ」とルミナ。

「警戒体制を維持する」とアテナ。

「エデン行くぞ、ジャンプ!」


 カルドア星系に到着した。

「ここの第三惑星が恐らく本拠地だろうな」

「地球とはちょっと違うけど、思念としては雑多な感じで攻撃的ってこともないわ」とルミナ。

「重力は地球より少し小さいくらいですわね。水惑星ですけどテロスと違って陸地が広いですわ」とネリネ。

「過疎地に降りてみよう。ソフィアのアストラル・アーカイブが必要だから」

「各自武装装着、防御フィールド展開」とアテナ。

寂れた荒野に着艦、大地に降りる。

「アストラル・アーカイブ」

膨大な情報が流れ込んでくる。生物進化、淘汰、文明の発生、闘争、文明の発展、エネルギー開発、星系内への進出、カルドア星系外への進出、そしてミレアス星系文明との接触、戦争への経緯。

「一度艦に戻るわ」


「エデン、この星の記憶を保存するわね」

「ほうほう、こんな進化をしてきたのですね」

「次はミレアスだな。エデン行くぞ、ジャンプ!」

「ミレアス星系の第二惑星が本星ですね。ちょっとカルドアより少し緑が濃いですね」とネリネ。

「ルミナ、思念のほとんどない地域に降りたい。どこかあるか?」

「氷の極が良さそうね。その方向からの思念が無いわ」

「そこへ着陸する」


 吹きすさぶ吹雪の中を着艦。大地に降りる。

「アストラル・アーカイブ」

今度はミレアス星系の膨大な情報を読み取っていく。生物進化、淘汰、文明の発生、闘争、文明の発展、エネルギー開発、星系内への進出、ミレアス星系外への進出、そしてカルドア星系文明との接触、戦争への経緯。

「これはどういうこと?詳しいことは艦で話すわ」とソフィア。


「エデン、この星の記憶を保存するわね」

「はいはい、いつもごちそうさまです」情報を嬉しがるエデン。

「端的に言うわね?つまり...」

四人とも、

「生命進化と文明進化が酷似しているだって!?」

「もしかして元は同じなのか?」とぼく。

「そんなことがあるのか?」とアテナ。

「だから思念の質がとても似ているのね」とルミナ。

「考えられなくもないことです。もし第三者が関与していたとしたら?」とエデン。

「他の生命体が関係しているの?」とルミナ。

「例えばだけど、彼らよりも遥か昔からあった超文明が行ったことかも知れないぞ」

「きっと、にたものどうしなんだね」

「エデン両言語解析は出来る?」とソフィア。

「ええ、終わっていますとも。この二つの星暦を両言語に変換しますか?」

「お願い」

「終了しました」

「エデン、君、有能!」

「毎度、ありがとうございます」

「これを両方に渡して様子を見ましょう」

「マル、戦闘地域近くに行くから、挨拶とエイコーンシールドの周囲展開を頼む。ルミナ、サイキック・コミュニオンで両方の思念を拾ってくれ」

「わかったー」

「了解よ」

「兵装展開、防御シールド展開する」

「ジャンプ!」


「戦況は拮抗状態のようですね。まるで双子が殴り合ってるみたい」とネリネがぽつんと言う。

「えいこーんしーるど!」

アルカ・ソフィア号を含むイオ級艦の周囲に、イオ級艦の直径ほどの光る透明な盾が4枚出現した。アルカ・ソフィア号とイオ級艦の両方を覆うような壮大な形だ。

マルが思念全開で挨拶する。

(こんにちはー!)

カルドア宇宙軍司令官。

「!」

ミレアス宇宙軍司令官。

「!」

両艦隊通信担当。

「黒い機体と惑星が突如出現、通信を求めています!」

両軍司令官。

「繋げ!」


 モニターには三人の異星人。三人とも通訳ブレスレットをしている。一人は中央に立ち光る石を散りばめたものを身にまとっている異星人。左には白い衣を着た背の高い赤金眼の異星人。頭の横に小さく白いにこにこしたものを乗せている。右には全身真っ白な衣装の光を思わせる異星人。

「こんにちは、どちらの言語も分かります」とソフィア。

両軍司令官。

「一体何者だ?」

「我々は『調停者』。あなた方にお渡ししたい情報があります。あなた方の星暦比較です」

「双方に送りました、マスター」

「始原からよく比較なさってください。何かに気付きませんか?」

カルドア宇宙軍司令官は言う。

「確かに我がカルドア星系の歴史だが、始原も発展の歴史もミレアスと同じだと?」

ミレアス宇宙軍司令官も言う。

「確かに我がミレアス星系の歴史だが、始原も発展の歴史もカルドアと同じだと?」

両軍司令官が同時に。

「これではまるで、双子!?」

(どちらも戦意が消えたわよ、イク)

(ありがとう、ルミナ)

「この酷似の仕方は確率的に考えてあり得ないほどだということはもうお分かりでしょう?我々はこの戦争に関与しませんが、まずよく相手をご理解なさって、あなた方でお考えになった方があなた方のためだろうと思いまして、少しお時間をいただきました」とぼく。

カルドア宇宙軍司令官が問いかける。

「『調停者』とは何なのですか?」

ミレアス宇宙軍司令官も問いかける。

「まさか、裁きを下す者ですか?」

「我々は、ただ天秤の釣り合いを執る者です」とソフィア。

「ミレアスがカルドアと酷似している理由は何なのですか?」

ミレアス宇宙軍司令官の疑問はもっともだ。

「始原が同じとは、では一体何者がそうしたのでしょうか?」

カルドア宇宙軍司令官も問う。

「それは分かりません。もしかしたら太古から存在する超文明が行ったことかも知れません。ただ言えることは、あなた方は同じと言って良いぐらいに非常に似ているということです」とソフィア。

カルドア宇宙軍司令官が言明する。

「これは重大事項ゆえ我々は本星に帰還します」

ミレアス宇宙軍司令官も追随する。

「我々も本星に持ち帰り検討します」

双方の艦隊がそれぞれの本星へジャンプした。

「双方の艦隊ジャンプ、残艦無し」とネリネ。

「マスター、どちらも本星へジャンプ、その航跡を確認しました」


「兵装解除、シールド維持。ひっさびさに緊張したなー」とアテナ。

「これで済めば良いんだがな」とぼく。

「そうね」とソフィア。

「いうことがおなじだったね。きっとうまくいくとおもうよ」

「ここでお茶にしましょうね!」とネリネ。

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