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ミルル

 気を取り直してルミナの言う気になる思念方向へと向かう。

「ジャンプ!どうだ?例の思念は?」

ルミナが珍しく真剣な表情だ。

「サイキック・コミュニオン。なにかしら?こちらに移動している!?逆に思念探知された!もうここにいる!」

「ぼくとおなじいしきたいだー!」

マルがテレパシーで話しかける。

(こんにちはー)

謎の意識体。

(!)

謎の意識体。

(あなたは、わたしがわかるのね!)

(ぼくはまる。きみはだれ?)

(みるる)

(ぼくはおはなばたけでゆめふうせんをつくってる)

(おはなをそだててるのね?)

(うん、あそびにくる?)

(うん!)

(こんなきれいなほしはじめてみた!)

(ありがと)

(ここにいていい?)

(いいよー)

(みるる、ここのくろいふねのひとたち、てれぱしーできるよ)

(こんにちは、みなさん。みるるです)

(こんにちは、ソフィアといいます)

(みるるちゃん、こんにちは。ぼくはイク。まるはぼくの相棒なんだ。マルのお友達なってくれるかな?)

(うん、まるのおともだちになる!)

(こんにちは、ルミナとよんでね)

(こんにちは、アテナです)

(こんにちは、ネリネいいます。宜しくね)

ミルルの嬉しいという気持ちがこちらに伝わってくる。寂しかったという気持ちも涙が出るほど切実に伝わってくる。きっとマルも宇宙を彷徨っていた頃に同じ思いをしたことだろう。

「マル、ミルルに実体化の方法を教えられるか?」

「できるよー」

(みるる、みんなにみえるように、じったいかのやりかたをおしえるね)

(じったいか?かたちをもてるのね?)

(うん、やりかたは、こう)

(やってみるね、こうかな?)

 突然ブリッジの中央テーブルの上に淡いピンク色したマルそっくりの姿が現れた。マルはぼくの右肩の上でにこにこしながらぱたぱたと拍手している。ただ違うところは色だけでなく、マルがよく赤いちっちゃい風船を右手に握っているのに対し、ミルルはあたまの右に赤いリボンがあった。かわいらしいが、マルのガーデニング用長靴もなぜか淡いピンク色で再現されている。


 女性型アンドロイド全員が中央テーブルに集まった。

全員、

「かわいいー!」

ミルルが喋った。

「まるのかたちになりたいとおもったの。りぼんがすきなの」

「可愛すぎる!ミルルちゃん!」

「ねえ、ときのもりびとってなに?わたしとおはなししたおともだちがくれたなまえ」とミルル。

「もしかして、4次元知的生命体と接触して名を与えられたのか?『時の守人』、即ち時を死なせないために守る者ってことだな」とぼく。

「ときをまもるもの?」

「うん、ミルルはまず間違いなく時間を守る役割を与えられたんだ、時間が止まるということはこの宇宙が死ぬということだ」

四人とも驚愕。

「!」

「だとすると、他の能力や固有スキルもとんでもないものを貰っていそうだな」

「マルのイオ級艦のような宇宙艦は貰ってないのかしら」とソフィア。

「みるるはまるのふねみたいなのはないよ」

「そうなのか、マル?」

「まるのふねきにいってるし」

「なるほどな」


 意識体は同時に異なる場所に存在出来る並列存在だ。そもそも意識体には3次元で場所という概念は薄い。それでも、マルのイオ級艦が気に入ったのなら良い居場所にもなるだろう。そしてこのアルカ・ソフィア号とテレパシーの通じるメンバーもだ。ミルルは一体誰の肩の上に座るのだろうと思った時、ミルルは透明な2枚一対のマルと同じ羽をぱたぱたさせてぼくの左肩に座った。よほどマルと離れたくないらしいし、マルとテレパシーで常に会話しているようだ。


 ミルルの特徴をまとめるとこんな感じだ。

ミルル(意識体)

銀河系の太陽系と反対側でルミナやマルと接触した意識体。まだ意識体になってそれほど経ってないようでマルを気に入っている。4次元知的生命体に与えられた役割は『時の守人』、即ち時を守る者。姿はマルを真似ており、全体として淡いピンク色で頭の右に赤いリボンがある。


 そしてミルルに聞いてみると、固有スキルは見かけの可愛さとは裏腹に、なかなかにえげつない。

4次元知的生命体に任命されたミルル『時の守人』意識体固有スキルはこうだ。


・アインシュタインリング 局所重力場による一種のレンズ効果による盾で粒子を逸らせる。

・マグネター 超高強度の磁場を発生させ大量の高エネルギー電磁波を一方向に放射して電子機器等を狂わせる。

・ブラックホールボール 小さなブラックホールボールを任意の場所に出現させる。

・リボン 空間を捻りリボンのように結んだり曲げたりして、対象の軌道や距離を接続したり別方向へ流したり循環させることが自在に出来る。

・メビウスループ 対象がどう動いても同じ位置関係に戻されてしまい行動を繰り返す。

・パララックスヴェール 対象に見えている位置と実際の位置をずらす、入れ替えることで対象を混乱させる。

・タイムエコー こちらの一瞬前の残像や行動の跡をまだそこにあるかのように対象に見せる。対象は残像に反応してしまい判断を誤る。

・アバター 多数の自分を複製する。

・ミルルバッグ 保存した対象を分析しデータ化することで、能力の再編統合や融合、創造、生成が、補正と消滅付きで出来る。

・ミルルノート 完全記憶と完全記録の能力。


 新しい意識体ミルルが見つかったし、ミレアス星とカルドア星の仲裁の見込みも立ったので、ぼくらは一度地球に戻ることにした。

 今のところ銀河系で2体の意識体が存在するわけだが、我々の銀河系でも例の意識体『悪い奴』に近しい存在がいるかも知れない。それに他の星の文明が攻めてくる可能性も考慮に入れないといけない。そのためには銀河系を中心とする調査がまず必須だろう。地球の技術水準の底上げをするには前回のような200年後などと悠長なことはとても言えなくなってきた。なのでジャンプを主にしてワープも用い、今回は3500年の地球に帰還することにした。

「エデン、3500年の地球衛星軌道へジャンプ&ワープ」

「了解しました、マスター」

「行くよ、ジャンプ&ワープ!」


 あっという間に着いた。青い地球に異変はなさそうだ。今マザーズに報告すべき事実はセキュリティの高い会長室か社長室が妥当だと思われるので、例の通り羽田第一宇宙港へ着陸し、一行でIK Android社本社にタクシーで向かう。

 社に着くとともかく守衛所に寄る。今度は丁寧に挨拶されて過去二回の入れろ入れないのトラブルはなく社長室へ向かえた。クレアは在席していた。

「ただいま、クレア」

「おかえりなさい、イク、みんな」

「今度の旅は早かったのね?どうだったの?」

「いろいろあってね、それは追々話すよ」

「ところで、左肩にもマルがいるんだけど?ピンクマル?」

「ああ、ピンクのほうはミルルっていう名前で、マルの友達なんだ」

「こんにちは、ミルルちゃん」

「こんにちは、くれあおねえちゃん」

「マルもおかえり」

「ただいまー、くれあおねえちゃん」

「ソフィアは少し痩せた?」

「なにアンドロイドジョーク言ってるの、クレアったら」

「みんなソファーでくつろいで、お茶入れるから」

「ぼくはマザーズに話があるから、ここの回線を借りるね」

「分かったわ、どうぞ使って」


マザーズとの秘匿回線。

「マザーズ、久しぶり」

「6年ぶりね、今回は早かったのねドクター。お帰りなさい」

「地球が無事で安心したよ」

「ということは、また何かに巻き込まれたのね?」

「まあね。ともあれ事実データをまず渡すね」

「了解」

「これは!」

「だろ?」

「あなたたち一体何やってるの?」

「特に何もしてないが、勝手に出来事に出会うのでね」

「その新しい意識体は善なる者なの?」

「今のところそう見える。あとは育ち方次第じゃないかな、まだ幼く見えるし」

「かといって能力はマルと同じで宇宙災害レベルじゃない」

「うん、マルが好きみたいだから。それに最初に接触したルミナにも懐いている」

「マルが好きってことはあなたも好きってことでしょう?またとんでもないことになってるわね」

「というよりアルカ・ソフィア号のメンバーみんなも好きみたいだけどね」

「一息ついたらまた出かけるのでしょう?」

「うん、そういうことになるとは思う。それから基本特許データを渡すね。アンドロイド関係はクレアに、それ以外の地球の防衛力底上げの技術に関してはマザーズの裁量でいつ実用化するかを検討してくれ。くれぐれもぼくらが目にした光景のように地球がならないように導いてもらいたい」

「分かったわ。それに相変わらずおかしな量の基本特許を出すわね。気を付けてね」

「うん、いつもありがとう、マザーズ」


 ついでに現代の情報と社の実情を把握するため回線経由で知識を詰め込んだ。こういうのはマメにチェックしないと。これは後でアルカ・ソフィア号の調停者全員で共有する。

相変わらずぼくの持ち株比率は過半数を超えている。資産はもはや世界一らしい。ピンと来ないけど。


 先生、ぼくは今、右肩に二人の実体化した神話級意識体を乗せています。

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