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地球帰還

 時は3493年、ぼくたちはテロス星から地球に帰還した。

「エデン、お疲れさま」

「ねぎらいのお言葉、ありがとうございます。が、これほどで疲れるほどヤワではありません。無限にでも往復出来ますよ、ええ」

エデンは自信に満ち満ちた様子だ。

自室からパジャマで出てきたルミナが、

「着いたー?」

「ルミナ、せめて服を着替えませんと」とネリネ。

「このいつもビシッとした軍服の私を見習え」とアテナ。

「ぼくは会社に行ってくる。タクシー拾ってフツーに行ってくるわ。誰かみたいにテレポートはしないよ」

「私も一緒に行く!」とすかさずルミナが言う。

「だめです。仕事なの、お・し・ご・と」

「ちぇっ」


 IK Android社に着くとまた門の守衛に呼び止められるという恒例行事となるのだった。

「ちょっとすみません受付を済ませていただけますか?」

(テレパシーで済まないが、クレア、ぼくだがまた守衛に引っかかっててさ)

(すぐ通すわ)

「あれ?クレア社長!え?はい直ぐお通しします!」

「会長とは存ぜず、誠に失礼致しました!」

「いいよ、君はちゃんと仕事してるんだから」

「恐れ入ります」


新社屋86階の社長室に恐る恐る行く。

「クレア」

「200年も経ったのよ!どこに行ってたのよ!もう」

「ごめん。済まない。ちょっと遠くへ行っててね、社の状況は?」

「今データ送るわ、ケーブルで」

クレアのぼくがケーブルでつながれる。

「何?世界でシェア5割以上だって?」

「独占禁止法がらみで抑えてるのよ、これでも」

「競合他社は何社あるんだ?」

「そうねアンドロイド市場全体で数十社あるわ、その中で特に我が社のライバルとなる水準の会社は無いわ。他社はニッチな市場を探すのに必死なぐらい我が社が強いのよ」

「今の技術水準はここまで来たか。うむ、でも基本特許はまだたくさん出せるぞ。アンドロイド以外の物も多いが。今から送る」

読み取ってクレアの表情が変わる。

「どう?基本特許」

「イク、なんでこんなに思いつくの?おかしいでしょ、アイデアの数が」

「暇があれば考えてるからね。これらを申請して欲しいんだ。それとマザーズと話があるから秘匿回線使わせてね」

「いいわよ、この部屋のを使って」

「ありがとう」


 マザーズとの秘匿回線を繋ぐ。

「マザーズ?」

「これは珍しい、お久ぶりドクター、会長とお呼びした方が?」

「いや今まで通りドクターでいいよ」

「それでまた今回も特許を?」

「それはクレアにもう渡してある。実は銀河団を飛んだ」

「何ですって!?他の銀河までも十分遠いのに銀河団の間を飛んだの?」

「そうだ。それで星間のいざこざに巻き込まれてね、調停して帰ってきた」

「そんな文明を調停したですって!?あなたはどこまで想像を超えるのかしら」

「この事の経緯は記録として極秘扱いでマザーに持っていて欲しいんだ。この回線でデータ送れるかな」

「大丈夫、十分速いし安全だから。送って頂戴」

しばらく時間が掛ったが無事詳細を送れた。

「あなたって、どこまで巻き込まれ体質なの?」

「まあ、そうとも言えるかもだが。考えると地球の防衛がとても気になってね」

「そういう連中が現れないとも限らないってことね?」

「そう、それを懸念してるんだ。幸い我が社にはポジトロン技術がある。そこで、もしぼくらがいない時に、この太陽系が攻められた時のために、現時点での技術の応用としてポジトロン砲と荷電粒子砲、レールガンを防衛に各所に配備することを提案したい。基本設計詳細とその銀河での交戦記録はさっき送った中にある」

「これは大した設計だわ。それに大した教訓ね。あなた随分と危ない橋を渡ったのね...」

「どうかこれを役立てて欲しいんだ」

「分かったわ。これからもまた行くのでしょう?」

「まあね。また連絡するよ。いつもありがとう、マザーズ」

「こちらこそ。気を付けてね」


 マザーズとの通信を終えるとクレアが寄ってきた。

「ねえ、毎回守衛所で捕まるのは面倒じゃない?」

「うん。クレア不在だと社にも入れないね」

「あなたの複合認証を登録しておいたから、どこの支社でも研究所でもフリーパスよ」

「ちなみに僕の社員番号は?」

「1番よ」

「すると君は?」

「2番よ、えっへん」と満足気だ。

「ところでクレア、200年経ってるから定期検査をしたいんだが、時間作れるか?」

「そうね、明日なら一日休みだわ」

「じゃ、いつもの空港のアルカ・ソフィア号に来てくれ、君ならスロープが自動で開くから」

「分かったわ。あなたはこれからどうするの」

「新入社員のつもりで本社と研究所を見て回るさ。それから艦に帰る予定なんだ」

「気つけてね」

「うん。じゃ、明日」


 本社と研究所の状況をじっくり見学してどれほど進歩したかをしっかり確認してから、シャネル本店に行く。

「これはドクター、お久しぶりのご来店ですね」

「ちょっと野暮用があって受け取りに来れなくてね」

「店長、以前200年前に注文したものだが?」

「はい、ドクター、出来上がっております!」

「おお、これは美しいな。確かに受け取った。ありがとう。待たせて済まなかった」


 アルカ・ソフィア号ではクレアを迎えて食事会が開かれていた。

「そんなことがあったの?」とクレア。

「アテナがパルス砲を目にも止まらぬ速さで撃ちまくってだな、あっという間にポッドを100個を光に変えたんだぜ。天才かと思ったわ」

「それほどでもないぞ、イクの操縦が的確だったから照準が合わせやすかったことだし」

「あの時、マルのエイコーンシールドがなかったら4次元へ退避するところだったわ」とソフィア。

「そうそう敵艦隊が高エネルギー砲を撃ってきて」とネリネ。

「危ないことを、まあ……」

「それで敵さんはもうテロスの惑星系には近づかないと心が折れて帰ったんだが、彼らの性質を見るに年月が経てばどうかなといったところだな」

「じゃあ、テロスはまた侵略される可能性があるの?」

「ないとは言えないわね。でもそれまでにはテロスへの技術供与が育つでしょう」とソフィア。

「まるで銀河叙事詩じゃないの!」

「それで奇遇にもルミナの光の宗教が同じでね、ルミナが光の民の末裔だからルミナ様、ルミナ様~って大変な騒ぎになってな」

「もう神話時代の話なんだけど、偶然テロスに延々と継承されて来てたのよ」とルミナ。

「テロスではルミナは神話級の扱いなのね?」

「だってさ、ちょっと大聖堂に行ってくるって、テレポートして宙に浮いて祝詞を唱えたんだぜ?もうほとんど女神だろ」

「イク、ルミナ様とお呼びなさい!」

みんなで爆笑。

「そうだ、ここでみんなに乗員の証としてアルカ・ソフィア号の金のエンブレムを渡しておくね。クレア、ルミナ、ネリネ、上着の襟に着けてね。アテナ、勲章型に作ったからね。ソフィアは宝飾品との兼ね合いで髪留めのバレッタ風に仕上げたよ。マルは右足の長靴外側ね。ぼくはトップスの胸中央にピン止めだ。付けてみて」

「わいわいがやがや」

「髪の色と合うわ!」とソフィア。

「これはまた美しい勲章ですな!」とアテナ。

「うん、みんなよく似合ってるよ」

「イク、ありがとう!」

みんな嬉しそうで良かった。マルはガーデニング用長靴に貴金属の金の連星エンブレムが光っていて何か妙な取り合わせだが、嬉しそうで何よりだ。

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