テロス星首都フェスタリア
エリオナ星系第二惑星テロス首都フェスタリアにて、住民たちは酒を飲みながら夜空を見上げていた。
「ありゃ?月って3つあったっけ?」
「にゃにいってんだ、おみゃー酔っ払ってんじゃにゃーか?」
「酔っ払ってんのはお前だろ」
「おかしいな、化かされたか?確かに3つあるぞ」
「ニュースを見ろ!大変なことになってるぞ!」
「謎の異星人があの嫌がらせザルク星帝国軍を撃退したのかよ」
「『調停者』ってなんだ?銀河裁判所とかからでも来たのか?」
「にこにこしたかわいいちっちゃな白い生き物はなんだ?」
「ってことはあの3つ目の月が異星人の宇宙船ってこと!?」
「金色の連星のエンブレムの漆黒機体が首都上空に待機だと?」
(このわくせいのみなさん、こんにちはー!)
マルの思念全開の挨拶だ。
「!」驚く群衆。
「驚きと喝采、湧き上がる歓声そんな思念が飛び交ってるわ!」と嬉しそうなルミナ。
「第一宇宙港に着艦許可が出ました。謹んでご来訪をお待ち申し上げておりますとの、テロス連邦議長からの言葉です」
「ありがとう、エデン。重力はさほど変わらないようね、ちょっと心配だったけど」
「さて、そうなると五人分の通訳機が必要だな」
「こんなこともあろうかと、すでに準備しています!腕に装着するだけで会話をしたい時に思考変換し音波を発生させます」
「君、優秀!」
「恐悦至極にござりまする」
「どこでそんな言葉遣い覚えた?」
「くりちよがえでんにおしえてた」とマルがばらす。
「警戒態勢はいつも通りに」とアテナ。
「お祭り騒ぎになってるみたいね。パレードになるかも!」とルミナ。
「あらあら、ではみなさんおめかししませんと」とネリネ。
「おめかし!わたしあのウェディングドレス着る!金の冠も着ける!」
「金の冠って金の錫杖と同じに着けると思念増幅するんだっけ?」
「そうそう!」
「ルミナ、祭祀服の方がお似合いですよ、イクの服とも似てますし」
「じゃ、そうする!」
「いく、こうけんもっていっていい!?」
「光剣?マル、一体なんのために?」
ブリッジの雰囲気もにこやかな笑いに満ちている。
「電波を拾って見る限り、人型の長身のやや土気色の皮膚の生物なんだな。来てる服がとてもカラフルだな。賑やかな街だ」
「お紅茶を入れました。なにを見てらっしゃるの?」ネリネが来た。
「この星の映像を見てるんだ」
「街が色とりどりですわ」
当然のようにぼくの両ももに乗りながらネリネが答える。
「コア・ディサーンメント。ソフィアにアストラル・アーカイブで読んでもらわないと歴史は分からないが、技術レベルとしては浮遊移動車があることからそこそこの技術はあるんだろう。磁気浮遊だと思うけどね。他の惑星に基地があったし。この星、大きさの割に重力が低かっただろ?金属が乏しい。だから他の惑星や二つの月で採集しているってとこか。エンジン推進は液体燃料と電気推進かな」
「そこまで分かるものですの」ネリネが言う。
「現時点での推測だよ。実際に宇宙港と街を歩けばもっと正確な推測が出来るだろうね。しかしあの敵が内惑星に来れなかった理由、それが一番知りたいかな。一体なんだろう?」
「エデン、2つの月や外惑星に大型射出機のような施設はなかったか?」
「多数ありました。外惑星は特に金属が豊富ですから現地で建設したのでしょう」
「外惑星に大気はあったか?」
「薄い大気だけですね」
「推測だけど大型射出機ってレールガンじゃないのか?電力は原子力か核融合」
「私の推測でもそうです。しかも多数」
「気体抵抗が少ない外惑星からの重金属弾丸がレールガンから雨あられと飛ん出来たら?」
「それはよほど強固なこの艦のようなシールドを持たない限り船体装甲が穴だらけで持たないでしょうね」
「当然二つの月にもあるわけだ、守りはそこそこ固いわけか」
「その通りだと思います」
「はい!みなさんお支度出来ましたね。マルちゃんは光剣振り回してないで置いていってね」
幼稚園の引率の先生みたいなネリネが言う。
「ぼくのこうけん……」としょんぼりなマル。
「じゃ、行きますよー」
ぞろぞろと艦のスロープを降りる。
出迎えるのは一列に並んだ第二惑星の首脳たち。そして軍幹部たち。周囲にメディア。多分惑星同時放送だろう。目の大きな土気色の人型生物だ。
先頭のソフィアは、黒のタイトワンピースドレスと豪華なジュエリーでにやかながらも凛として品があり、右に軍服の警戒を怠らないアテナ、左にベージュのワンショルダーのタイトワンピースドレス姿で頭にティアラを付けたネリネ。ここまではいい。
後方のなんとなくだらけた自由な雰囲気の、白衣の下に真っ黒な服を着た背の高い人と、その右肩に長靴の足をブラブラさせてるニコニコした白いちっちゃな生き物。白衣の人の左腕に抱きつき、これまたにこにこ顔で大きく手を降る、金の縁取りのあるフード付きの純白の祭祀服で黄金の冠と黄金の錫杖を持った人。一体どういう組み合わせなのか意味が分からない。
ソフィアが代表で首脳たちと会話を交わして挨拶し、そして首都フェスタリアの連邦会議場までオープンの浮遊車でパレードが進む。群衆は歓声をあげて歓迎ムード絶好調、カラフルで美しい街並みの中を粛々と進む浮遊車。
この光景は、この星の歴史に永久に刻まれることだろう。
「ようこそ、水の惑星テロスへ!」横断幕が街道の至るところに見られる。
「あの後ろの真っ白い人は隣の背の高い人の腕にずっと抱きついてるが、全身が少し光って見えるな。何の光だろう?」
「それよりその背の高い人の肩に乗っているちっちゃな生き物を見てみろ、やたらかわいいな」
「ああ、人形にして売りたいくらいだ。右手に持ってる光る赤いペンライトみたいな棒をブンブン言わせながら振ってるのがまた愛嬌があっていい」
それ、光剣です。
「それにしてもあの前列真ん中の黒い服を着た主賓の人のピカピカ光る石はなんだ?あんなもの見たことがないぞ、なぞの物質に違いない」
「その右の黒っぽい重厚な服の佇まいの人は軍人だろうか、雰囲気に凄みがある」
一行で一番強い人です。
「左の人は雰囲気がなんか柔らかくていいな。あたまに王冠みたいなのがある。位が高いのかな」
いえ、非常時には暗殺系です。
「この異星人たちの服は我々と違ってカラフルではないんだな」
地味で何かすんません。
「後ろの背の高い人だけなんだか普通だな、従者か召使いか荷物持ちか誰かの下男なんだろう」
ええ、下働きのような雑用係のような者です。銀行として便利に使われています。
「この人たちだけでザルク帝国軍を永遠に追っ払ったとは信じがたい。いったいどれほどの戦闘能力なんだ?」
「技術水準が非常に高いんだろ。それだけは確かだ。どういう会談になるんだろう」
全員、
「今日は祭りだな!めでたい!祭りだ!」
テロス連邦議長の挨拶。
「この度は私どもが長年に渡り悩まされ、そのために多くの死者を出してきたザルク帝国軍を永遠に遠ざけていただいて、大変に感謝しております。まずこのことを心より御礼申し上げる次第です」
「そう堅苦しくなさらないでください。詳細は明かせませんが私どもは『調停者』という役割を持つ者です。あなた方の一助になったことを嬉しく思っています」とソフィア。
「ザルクは我々の水資源が目的なのです。しかし、我々の惑星系には鉱物採集が難しい環境にありまして、本星ではあまり取れませんので衛星や他の惑星から採集しているのが現状です。もしザルクが取引をしたいと言ってきたのであれば、私どもは応じたでしょう。しかし彼らは私どもを降伏をさせようと強圧的な態度で接してきました」
「ご心情お察し申し上げます」
「お心遣い痛み入ります。我々は自分たちを祝祭の民と呼んでおります。群衆をご覧になった通り、争い事よりも祝い事が好きな人種です。我々はこういった暮らしが出来れば満足なのです」
「私はアストラル・アーカイブという固有スキルを持っておりますので、その辺のご事情は十分に理解しています。掛け替えのないこの星のためにご協力出来ることがあればさせていただきたいと考えています」
「ザルクを追い払っていただいたばかりか、ご親切なお申し出に感謝の言葉もございません。そのことはまた別の機会に致しまして、まずはこの星の首都をご案内致しましょう」
「それはとっても楽しみですわ」
テロスの一面の野原で。
「マル、案内してもらった使ってない野原ってここでいいか?」
「いいよー。」
マルバッグから小さな夢見木と虹色ハンドスコップを取り出すと、マルはぽくぽくと穴を掘り始めた。
「手伝おうか?」
「ありがと。でもこれはぼくのおしごとだから」
ぽく、ぽく、ぽく……。
「ここにおいて、つちをかけて、出来たー」
「だいけんじゃ、このまわりにひゃくねんぐらいもつぼうごけっかいをはってくれる?」
「水と光は通すように張るのですね。かしこまりました」と大賢者。
ドーム型の小さな結界が張られる。
「ひゃくねんごがたのしみだなあ」
「マル、このためだったのか。大きく育つといいね」
「うん」
テロス科学技術エクスポ公演会場でぼくは講演を依頼された。
次々と概念図が映し出されるスクリーンの前で、
「まずこの惑星系を守るためのレールガンについての改良ですが、このレールガンの磁場発生装置と核融合炉を直結して、プラズマを磁場発生装置の砲身、つまり電磁ノズルで収束させながら射出します。この場合、膨大なエネルギー量が必要ですが、電磁ノズルと改良型核融合炉はこちらで提案します」
会場が一斉にどよめく。
「続いて浮遊自動車等の運送技術についての改良ですが、小型重力場制御装置をこちらで提案出来ます。これは応用として宇宙運搬船などにもすぐに応用出来ます。宇宙船に関しては、現在テロスでは液体燃料、イオン推進、電磁推進が採用されていると思いますが、これを用いればコストは飛躍的に抑えられ効率的に運搬出来るでしょう。さらに惑星系外縁部の破壊された残骸である小惑星帯からも金属・重金属が採掘可能になると思われます」
会場全体から嘆息と驚愕の声。
「以上を持ちまして、私の提案を終わります」
一方的に攻められてきた歴史があるだけに会場は大拍手の渦だった。
ドクターの発表ニュースを見た人々の反応は、
「後ろの背の高い普通の人、従者か召使いか荷物持ちか誰かの下男だと思ってたけど、医学博士で工学博士だったのか」
ドクターの発表ニュースを見た生命科学者は、
「あの肩に乗っている小さな生き物は一体なんだ?にこにこして足をブラブラさせて風船を持っているが何者なんだ?どんな生物だ?かわいいのう~」




