トーク7:和泉ちゃん、御勉強できるかな?
翌日。私は約束通り、律葉先輩に勉強を教えて貰うことになった。
いつも通り茶をしばく二人は私の事をニヨニヨと観察し、私達は少し離れたところで机を向かい合わせていた。
「よろしくお願いします!」
「ええ、よろしくお願いします。まずは簡単な模擬テストを作ってみたんです。今の和泉がどれぐらいの力量なのか、確かめさせてくださいね」
「はい!」
私の為にわざわざ模擬テストまで作ってくれるだなんて…!
本当に律葉先輩には頭が上がらない。
それに比べてポテトチップスをつまみながら…よく見たら濃いお茶ではなく、コーラを飲んでいるあの二人はなんなんだ…ちゃんとお茶会したらどうなんだ。
彼女が差し出してくれた紙をめくり、問題を解こうとすると…。
「なんですか、これ」
「えっ…シグマ関数、ですけど…中学でやりますよね」
「やりませんよ普通の中学ではぁ!?」
「あら、そうなんですか…?じゃあ、何をしていたんですか?三次関数…とかですか?」
「三次まであるんですかあいつ!二次関数がギリギリぐらいですよ!」
私達を横目で見ている二人が腹を抱えて大笑い。
なにおう…方程式はしただろう。一次方程式!
「そうですかそうですか…二次関数が大丈夫なら、二次方程式で何問かやってみましょうか…」
「え、今作るんですか…?そもそも二次方程式って何…」
「高校受験に向けて、問題集を暗記する勢いで解いていた事があるので…流石に普通の中学でも二次方程式はしますよね?」
「た、多分…?」
律葉先輩が裏紙に記入してくれた問題を解こうとしても、解き方がさっぱり分からない。
な、なにこれ…全然分からない…。
「…和泉?」
「す、すみません。全然、わからなくて…」
「いいんですよ。次は因数分解にしてみましょうか」
「いんすう…?」
「これも、分からない?」
「聞いた覚えが…」
「で、では一次方程式にしましょうか」
「それならわかります!」
用意して貰った問題を解いてみるが、手応えはない。
律葉先輩の表情も、見るからに困ったような感じだった。
「想像以上ですね…」
「すみません…」
「いえ、答えたくなければいいのですが、中学時代はどんな感じだったのですか?」
「…すみません。答えたくないです」
「…」
「…」
「…わかりました。では、中学のおさらいをしていくイメージで学習スケジュールを立てていきましょう」
「いいんですか?かなり時間が…」
「時間をかけてでも、です。幸いにして冷染のカリキュラムは中学一年生でやった内容さえ押さえておけば問題ないので…楽ですよね」
律葉先輩が計画を立ててくれる横で、トントンと何か音がした。
紅奈先輩がホワイトボードを手に「聖ルメールの中一カリキュラムは普通の中学の三年分らしいぞ」と書いて教えてくれていた。
…そんな激詰めカリキュラムが実在していいのだろうか。
「では、まずは…あ、ねえ、紅奈」
「なんだ〜」
「お茶、ストックなくなっていましたよね」
「…話合わせて」
「えっ…あー…そういう。おう、なくなってた。和泉、買いに行け。金は出す。釣りは返却無しでお前のおやつ代にでもしろ」
「今からお勉強する相手に!?パシリを!?」
「先輩命令が聞けねえのかよ〜あぁん?」
「ひっ…仕方無いなぁ…紅奈先輩、お金ください」
「へいへい」
紅奈先輩から二千円を預かり、私は渋々買い出しに出かける。
本当にこの先輩達は人使いが荒い!




