トーク5:理想を叫べ、乙女達
「すーーーーーーーーーるせいどがあるくうかんにいきたかったなぁ!」
「お茶会!サロン!お嬢様こーーーーー!FOOOOOOOOOOOOOO!」
「こうなると思ったから言いたくなかったんですよね。あーうるさい…」
「あ、あの…落ち着いて、落ち着いて」
本日放課後の旧校舎四階。
登校中は死体の如く動かなかった二人は放課後になったら好き放題叫んでいた。
「り、律葉先輩はどうしてこうなることを…」
「ああ…元よりこの謎の集まりが発足したのって半年前なんですよね」
「そん、なに、短いっ!」
「歴史なんてないですからね。紅奈が作った時点でお察しです」
「ああ…でも、一年生の時に、とか…あるのかなぁって」
「一年の時の紅奈というか…私達の前以外の紅奈は大人しいですよ…」
「こんなオラオラじゃないんですか」
「ええ。ヤンキーではないです。元よりいいところのお嬢様ですし、先生からの評価もいいですからね」
「嘘だぁ」
「こんなところで嘘を吐いたところで何になるんですか…」
「それもそうですけど…」
紙コップにレモンティーをガボガボと注ぎながら、話を続ける。
叫び続ける二人は、あえて放置しておいた。関わりたくない。
「ストレートに言わせていただくと、和泉以外は全員優等生側ですよ。成績良好。先生からの評価もよし。本人が望めば聖ルメールにも行けたような存在ばかりです」
「知ってましたぁ…」
「もう少し勉強しましょうとは…いいません。貴方の性格からして、勉強はしているでしょうし…」
「律葉先輩…!」
あんな成績だし、公立受験に落ちてこの学校に来たってだけで勉強してない側だと思われがちだったし、クラスメイトからも「勉強嫌いでしょ〜?うちも同じ〜」とか声をかけられるけれども!
実際にはちゃんと時間を決めて勉強をしていると言い出せなかったけども!
勉強していても、勉強してないって思われがちだけど…!
まさか、出会って四日の人が私がちゃんと勉強してるって、信じて…!
「なんで泣いているんですか…」
「勉強してるって言って貰えたの初めてでぇ…」
「貴方も大変そうですね色々と…片道二時間に、勉強していない疑惑…中学時代はさぞかし大変だったでしょう。先生とかにもとやかく言われていそうです」
「…先生は、とても良くしてくれました。進路状況とか、教えてくれて。ここならって」
「貴方…いえ、もしかしたら方法に問題があるのかもしれません。どういった勉強を?」
「そう、ですね…とりあえず教科書を読んで、片っ端から問題を解いての繰り返しですかね」
「んー…普通といえば普通ですね。一度見て見て、貴方に合う方法を探してみましょうか。そうですね、ここにいる間は勉強を見ましょうか?」
「いいんですか?」
「まあ、集う仲ですからね。ただ駄弁って時間を浪費し続けるよりは、効率的ではないですか?」
「嬉しいです、ありがとうございます。お言葉に甘えてもいいですか?」
「ええ。勿論です」
「律葉先輩って、御姉様みたいです。ほら、聖ルメールには姉妹制度があるんでしょう?」
「え、ええ…そうですね。中等部時代にも何人か高等部の先輩と結んでいた子がいましたね」
「実際に体験したら、こんな感じなのかなって」
「そう…ですね。私は中学時代、御姉様に恵まれませんでしたが、もし姉妹制度結んでいたら、こんな感じなのかもしれませんね」
ここに、姉妹制度なんて存在しない。
だけどもし、あったなら。もしも、頼れる存在がいてくれたなら。
律葉先輩が御姉様と呼べる存在であれば…ちょっと、楽しそうだなと思えた。
「———和泉」
「舞先輩?」
「誰が、お前を、ここに連れてきたか忘れたかぁ…?」
「ま、舞先輩…ですよね」
「なに律葉先輩といい感じになってんだ!私となれよ!そういうの!御姉様って呼ばれたいんだよぉ…」
「お、お断りします…」
「そうですよ。拒否権はあるんですよ。無理矢理迫るのはよくないです」
「やーい、ふられてやーんの」
「やーい、お前のお茶会紙コップ〜」
「やんのかおらぁ!」
「こいよおらぁ!」
「あーうるさい。あ、和泉。レモンティーのおかわりいります?」
「お腹いっぱいです」
「そうですよね」
騒ぎ立てる二人の声に混ざるように、私達は喉を潤す。
今日はレモンティー。勿論ペットボトル。
爽やかな口当たりだけど…私は昨日のミルクティーが好きだなぁ…。
ふと、耳を澄ませば…足音が聞こえてくる。
まっすぐ、こちらに向かっているような…。
「足音!?」
「ああ…大丈夫ですよ。今日、来ると言っていたので」
「先生が!?」
「いえ、それよりはマシですが…面倒な女です」
扉を勢いよく開けた人物は、雑に巻いたであろうネクタイを揺らしながら立ち入ってきた。
ネクタイの色は青。紅奈先輩と律葉先輩と同じネクタイということは…三年生みたいだ。
それにこの人、どこかで見たような…?
「律葉!遊びに来たわよ!あら…人数増えた?」
「ええ。一年生が混ざりました」
「へぇ…」
「和泉、こちらは琴寄月乃。入学式の在校生挨拶で顔を見たかと思いますが、本校の生徒会長です」
「…ああ!だからどこかで!」
「それだけではないと思いますがね。ちなみに高校六年生です」
「律葉先輩、ここは小学校じゃないですよ」
「いえ、本当に六年いるんですよ。この女…」
「留年している方が生徒会長ってどうなっているんですかこの学校!?」
「私が聞きたいです…」
入学式で挨拶してくれていた生徒会長は本当に格好良くて、一瞬でも憧れを抱いた私が馬鹿だった。
…この学校には、変な人しかいないらしい。




