5話 攻略士
ーー千春を探して2時間後
「ね、ねぇお兄ちゃん、あの人どこ行ったの?本当にさ」
「知らないよ、仕方ない禁じてを使うか」
兄はそう言って救難信号を出すべく、緊急用端末に触れた。
「いやいやお兄ちゃん、それはダメだよ」
そう言って紗季は、兄を制しさせた。
「そうは言ってもな紗季よ、こんだけ探さて見つからないとなると、こっちも奥の手を出さねばならない……」
「お、さっきの2人組じゃねぇか」
兄が諦めかけていたその時、偶然千春が通りかかった。
「あ、さっきのおっさん!」
「おっさんってな、俺はまだ38だぞ」
「おっさんじゃん」
あっさんと呼ばれるのに耐えかねた千春はそう言い返し、自分の年齢をカミングアウトしたが、紗季にそれも含めておっさん呼ばわりされてしまった。
「……くっ、そうなのか俺はおっさんなのか、てかお前らこそ幾つだよ」
そう言って千春は何故か2人に年齢を訊ねる。
「21です」
「19です」
兄妹は、千春の問いにそう答える。
「10代なのかよお前ら、20歳近く年下なのは驚きだわ」
千春は驚きつつそう言った。
「ま、まぁ年齢の事はいいじゃないですか、それよりもおじ様は、どういうお人なのでしょか」
一見失礼ともとれる日本語を兄は千春へと放つが、兄に失礼な事を言っている気配を感じなかった千春は、間をおかずに口を開く。
「えっと、俺は攻略士だよ1級のね」
『攻略士!』
千春からその名を聞いた2人は、同時にそう言葉を復唱した。
攻略士とは、国から認可を受けた特別な攻略者の事であり、1級ともなれば国内に10人もいない激レア職種である。
「おう、まぁだが、俺は今休暇中なんだ」
そう言って千春はまた歩き出す。
「き、休暇中だったのですね、そんな時に助けてもらえるとは、大変ありがたいですー」
兄はゴマすり全開でそう千春に話す。
「お、おう、てかお前さっきから態度がキモイぞ」
「え?そ、そうですかねぇ」
せっかく見つけた自身のチャンネルの目玉を逃すまいと自然と媚び諂っていた兄だったが、千春にそう言われハッと目が覚める。
「お兄ちゃん、ほんとの事言った方がいいよ、今のままだと違和感半端ないし」
紗季はそう兄へと話す。
「わかった正直に話すよ、あのぉおじ様差し支えがなければ私どもと、組んだりしませんか?」
兄はまた絶妙に嫌な日本語でそう千春に語りかける。
「えっと、おじ様じゃなくて大木でいいよ、あと組むってなに?」
千春はそう兄へ話す。
「おお失礼しました大木様、組むとは俺たち兄妹と組んで配信活動をする事です」
兄は笑顔でそう説明する。
「配信?いやいいよ、俺はお前らだけでやれ」
「え、いやいやお金がたくさん儲かるんですよ」
「金じゃねぇんだ、俺がダンジョンに来てる理由は、だからごめんな」
そう言って千春はまた、2人の前から姿を消すべく走り出す。
「お兄ちゃん、逃げられちゃうよ」
「わ、わかってる後を追うぞ!」
そう言って2人も千春の後を追いかけるのだった。




