2話 ドラゴン討伐
ーーダンジョンにて
「おいお前ら!大丈夫か」
仰向けになったドラゴンを背後に置いて、千春はそう2人に話しかけた。
「だ、大丈夫です!」
「おっさんすごいね!」
「……おっさん?」
紗季のおっさん発言に思う事ありげな顔をしつつも、千春は背後のドラゴンに注意を向ける。
「今のでやっつけたんですか?」
兄はそう千春に訊ねる。
「いやまだだ、こっからが本番ってところだろ」
『カチャッ』
そう言って千春はピッケルを肩に担いだ。
「お、お兄ちゃん、や、やばいよ同接5万行きそうだよ」
紗季はダッシュボードを見て恐る恐る、兄へそう伝える。
「5、5万だと!」
「何だお前ら、カメラなんか持って、観光地じゃねぇぞここは」
千春は驚く兄妹を尻目にそう言って、身体をドラゴンの方へと向ける。
「す、すみません、僕ら配信者でして」
「配信者?ああ、最近増えてきたあいつらかよ、ま、大人しくしてればなんでもいいや」
千春は保険会社時代ずっと仕事詰めだった、そのためSNSや動画サイトの存在は知ってはいるが、内容はわかっていない。
故に時代遅れのおっさんと化している。
「お、お兄ちゃん、コメ欄やばいんだけど……」
そう言って紗季はスマホを見たまま固まってしまう。
「何だよどうした……ハッ!これは」
ーードラゴンvs千春サイド
『グオオオオオ』
「起きたか、さぁてこっからが本当の討伐タイムだぜ」
ダンジョンモンスター"穴蔵ドラゴン"推定レベル120。
難易度的にはかなり高く。
単独での討伐はまず現実的ではない。
しかし千春は別である。
「いくぞ"パワーピッケル"」
『カチャ』
超級アイテム"パワーピッケル"
千春が初めてのダンジョンで見つけた激レアアイテムであり、その威力はレベル200オーバーのモンスターすらも撃破できるほどである。
「超級アイテム"ジェットブーツ"起動」
『ドシャア』
千春がそう言うと、履いているブーツからロケットが噴射した。
「お兄ちゃん!見てあれあのおっさん飛んだよぉ!」
「す、すげぇ」
ーーそしてその配信を見ているコメ欄では
"おいおい、なんだよあのおっさん"
"只者ではない雰囲気"
"空飛ぶ工事現場のおっさん笑"
などと、この手のコメントが濁流のように流れていた。
「とりゃああああ」
千春はジェットブーツの勢いそのままに、ドラゴンの頭へと一直線に飛んでいった。
『グオオオオオ』
ドラゴンも迫り来る千春に危機を感じ、大きく口を開く。
「ちっ、ブレスかよ」
『キュオオ』
ドラゴンの口の中に豪火が灯る。
ーーコメ欄にて
"おいおい何だよあれ"
"おっさんやばいじゃん"
"大ピンチじゃん"
千春のピンチに大盛り上がりを見せ、同接は7万を超えていた。
その時ーー。
『ブオオオ』
空中のおっさんにブレスが直撃した。
「嘘、そんな」
「や、やばすぎる」
驚きつつもその様子をガン見する2人、そして炎の中からヘルメットが顔を出す。
『ヒュオ』
「あっぶねええ、死ぬかと思ったぜ」
間一髪炎を潜り抜け、少し焦げた千春が炎の中から抜け出した。
一方コメ欄では。




