6/10
6【ゾクッと】幸せになれるボタン
僕の勤めるブラック会社から5日ぶりに帰れるという日、僕は不思議なおばあちゃんにであった。
黒いローブに身を包み、大きくてシワシワした鼻が特徴的。
こんな魔女みたいな人、40年間生きてきた僕ですら出会ったことがない。
「お前さん。大学を出てから、幸せと思ったことが無いねぇ」
出会い頭に僕はそう言われた。
なんでも、おばあちゃんには人の幸せを見る能力があるらしい。
「幸せになりたいかい?」
「は、はい……。なれるなら、そりゃまぁ……」
「じゃあ、このボタンをあげよう。この”幸せになれるボタン”を」
突然僕はボタンをもらった。幸せになれるボタン。
僕は、大学を出てからというもの幸せとは無縁の生活だった。
だからなのだろう。こんなバカ怪しいボタンだったとしても、こんなのに縋ってしまう。
「これを押せば本当に幸せになれるんですね?」
「あぁ、そうだよ」
僕は思い切ってボタンを押した。
カチリ。
おばあちゃんはニンマリと笑い、僕の目の前に手鏡を突きつけてきた。
「なッ!?なんで!?さっきまで大学に居たはず……。ていうか!なんで僕こんな中年になってるの!?」




