↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不思議の国のクリスティーナ――転移国家ニホンとの出会い  作者: 星空 ある


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/32

第28話 メイド・イン・ジャパン

 帝国との稚内沖での交戦1週間前、リシャール辺境伯領リシャール邸の庭にて。


 今ここには、ボアザック王国からこの反攻軍の最高司令官に就任した私、リシャール辺境伯、リシャール辺境伯家の嫡女のガブリエル、ウォレス伯爵がいる。


 日本からは、ジュドー殿、私の護衛として梢、そしてこれからの説明の発表者として八月一日殿が来ている。


 私の最高司令官就任の条件の1つとして、八月一日殿と梢はこれからも一緒に行動をしてもらうため、父上に強く要望を出した。


 その結果、ボアザック王国から日本国へ、正式な要望として彼らの同行が実現した。ただ、彼らは自衛隊からNWSに所属を変える(シュッコウ(出向)というらしい)ことになったが。


 今日はこの庭で、日本製の武器を八月一日殿が説明(ぷれぜん(プレゼン)というらしい)してくれる予定だ。


 すると、ジュドー殿が長槍を肩に載せて、片手で柄を持って現れた。


「なっ、長い!だがあれでは……。」


 ウォレス伯爵が、思わず声を上げる。


 そう、長槍の長さは精々6メートルが限界だ。しかし現れた長槍は6メートル以上はある。あれでは重すぎて扱えない。その上、先端が垂れてしまい、場合によっては折れてしまう。私たちの世界の技術ではだが。


 軽々と扱って見せるジュドー殿を見たリシャール辺境伯は、小さな声でつぶやく。


「一体、どうなっている?」


 ジュドー殿が槍の扱いを一通り行った後、八月一日殿が説明を始める。


「この槍は、6.6メートルあり、王国が使用している物より60センチ以上長いですが、重さは2.5キロと約半分です。」


 王国側の人間は、信じられないというように目を大きく見開く。


「そんな馬鹿な……。」


 ウォレス伯爵の一言に、私は以前自分自身が体験した驚きの連続を思い出す。


「持ってみますか?ジュドーさん、ウォレス伯爵にそれを。」


「はい。伯爵、どうぞ。」


 渡された槍を持つウォレス伯爵。


「軽い!なんて軽さだ!!」


「あと、構えた時にほとんどしなりません。柄には高弾性カーボンファイバーという、木ではない素材を使っています。」


「確かに、構えた時に先端が垂れない。しかもこの軽さだ。突くスピードが上がる。」


 彼は、空中を何度か突いて見せた。


「はい。その通りです。では次にそこの訓練用の人形を突いてみましょう。その人形には、王国のパイク兵がつける一般的な、ハーフのプレートアーマーを着せてあります。ウォレス伯爵、それを突いてみてください。」


「プレートアーマーを突くのか?はじかれてしまうぞ?」


「大丈夫です。どうぞ。」


 ウォレス伯爵は、手がしびれるのを恐れたためか、大した力を入れずプレートアーマーを突いてみる。


「サクッ」


「!!」


 穂先はプレートアーマーを、紙でも突くように貫通し人形に突き刺さる。


 またも王国の人間が驚く。私もこれには驚いた。


「どういうことだ、これは本当にプレートアーマーか?」


「はい、間違いありません。では今度は刺した槍を抜いてみてください。」


「スッ」


「簡単に抜けた……。私は夢でも見ているのか?」


 彼が驚くのも無理はない。私も何度も経験しているが、一度刺した槍はなかなか抜けないものだ。だがこの槍は何の抵抗もなくスッと抜けた。すごいなこれは。


「この槍の穂先は、完全に焼き入れされた高炭素鋼でできていて刃こぼれしにくく、形状も先端が髪の毛の先ほどまでに絞り込まれています。さらにフッ素樹脂コーティングもされていて、抜く時の抵抗を減らします。」


 わからない単語がたくさん出てきて、王国の人間は何を言っているのか理解できていないだろう。私を含めて。だが、日本の科学技術が優れているのは理解できている。悪魔のようなこの槍も、日本には作ることが可能なのだ。


「次は防具です。これがパイク兵がつける、ハーフプレートアーマーと兜です。」


 八月一日殿は、それを軽々と持って見せる。


「こちらも、軽く重さは従来の物の1/3となっています。アーマーの方は超高張力鋼で、兜の方はFRPで……、あー、とにかく軽くて丈夫です。」


 彼は察したらしく、少し引きつった笑みを浮かべて説明する。


 ウォレス伯爵がやはり装着して確かめているが、案の定、驚いていた。


「これで本当に、防げるのか?」


「あちらの人形にこれらと同じものを装着してあります。先ほどの我々が作成した槍で、突いて見てください。」


 再び渡された、例の槍で、ウォレス伯爵が今度は力いっぱい突いてみる。


「うわっ!」


 槍は貫通せず、アーマーの表面を滑って、ウォレス伯爵は前のめりで転びそうになった。


 一同唖然となる。なんと、あの悪魔のような槍を防ぐとは、これはさしずめ聖なる鎧か。


「重装騎兵のランスも、貫くことはできません。内側にも衝撃を吸収する素材が張ってありますので、完璧ではありませんが、ある程度の衝撃も防ぐことができます。」


 すると、リシャール辺境伯がフルプレートアーマーを着けて現れた。そういえば、少し前から姿が見えなかったのは、このためだったのか。


「軽い、軽すぎる!落馬しても一人で立てるぞ、これは!それに暑くない!」


 彼は興奮して、大きな声で叫ぶ。


「こちらのフルプレートアーマーはさらに、衝撃の吸収を強化してあり、通気性にもすぐれています。馬用防具も同じです。」


 暑くないのは非常に重要だ。戦闘をしなくても、暑さで倒れてしまうことがあるからだ。


 しばらくして装備した馬が連れられてきた。リシャール辺境伯が、難なく一人で馬に乗った姿を見た一同は……、もう説明はいらないだろう。


 彼を乗せた馬は、庭の端に駆けて、素早く切り返し戻ってくる。かなり速く小回りも効く。


「これは重装騎兵の動きではない!軽騎兵だ!!」


 再び叫ぶリシャール辺境伯。私も同意見だ。



 この後、折れないランス、馬が滑らない蹄鉄、弓は2種類が説明された。


 一般的に、重装騎兵のランスは1回突けば折れる。でなければ騎兵の腕が大ダメージを受けてしまうからだ。だがこのランスは、衝撃を吸収するのも関わらず、折れないのだ。


 蹄鉄は、小回りが利くような特殊な素材が張られているらしい。


 弓は、一方は私たちが使う弓と見た目は同じだ。もう一方はなんとも複雑な形をした弓で、滑車みたいなものもついていて、これが弓かと思うほどのものだ。どちらの弓も300メートルも届くそうだ。


 どれも驚くようなものだったが、さすがにもう、驚くのも疲れてきた。


 最後に靴が出てきた。私も自衛隊の服装と一緒に、靴も使っているが、これは大変優れたものだ。しっかりと大地を捕らえ、底が厚く疲れにくい。私たちの物とは比べ物にならない。



「これがあれば、数に勝る帝国軍に対抗できるかもしれん!」


 相変わらずリシャール辺境伯、興奮しているな。


「ただ少し問題はあります。」


「問題?」


「はい、武器の数です。帝国は今、王都を手に入れ2週間、一旦軍の補給と編成を整えているようです。おそらく整え終わるのにあと1か月はかかるでしょう。それからここに進軍してくるのにもう1か月。槍とハーフプレートアーマーなどパイク兵の装備は、1か月で10000を生産可能です。先ほどの一般的な弓も2000は作れます。靴や蹄鉄も問題ありません。これらの基本的な扱いは、今までとほとんど変わりはないので、特別な訓練はいらず、慣れていただく程度です。重装騎兵装備も扱いの点では同じなのですが、オーダーメイドになりますので、100騎分の生産が限度です。」


「重装騎兵100は少なすぎる!我々の騎兵は1000はいるのだぞ!」


「足りない分は、従来の装備となってしまいます。ただ、100騎でも十分な戦力だとは思います。」


「うーん、そうなのか……。そうかもしれんが……。」


 リシャール辺境伯は先ほどとはうって変わって、しょんぼりしてしまった。重装騎兵の大活躍を想像していたのかもしれない。


「あと複雑な形をした弓ですが、これは今までの弓とは扱いが異なりますので、訓練が必要です。2週間で10揃えた後は、ひたすら訓練となります。」


「たった10で、何の役に立つ?」


「立ちますよ。おそらく今後この弓は、重要な役割を果たすことになるでしょう。ところでガブリエル様は、弓がお得意と聞きましたが。」


 八月一日殿は、ギャビーを見てにこりと笑う。


「えっ、私?」


「はい、ガブリエル様にはこの弓の扱いをマスターし、精鋭10の弓兵で重要な役割を担っていただきたいと思っております。」


「そっ、そうなの?」


「はい。こちらの滑車のついた弓は、先ほども言いましたが、今までの弓の戦い方とは違います。今までの弓は面での攻撃を主としていましたが、この弓は……。」


 彼の説明は、驚くようなものだった。それにしても、説明がうまいな。本当に軍人なのだろうか。ギャビーは、目を輝かせて彼の話を聞いている。


 私たち、ボアザック王国軍は、これら日本の武器で生まれ変わる。しかし数で数倍勝る帝国軍に対し、質で対抗することになるのだが、果たして大丈夫だろうか。いや、ここまできて何を心配しているのだ、私は。私は日本を信頼した。この力を使って、王国から帝国軍を一掃するのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
> 日本製の武器 なるほど、日本の素材技術を応用した槍やプレートアーマーを供与する。銃火器のなかった世界では有用でしょうね。それに日本としても商品の取っ掛かりとしては中々良い。数もそれなりにですから…
日本が現地に供給する武器として人気なコンパウンドボウの登場ですか、数こそ揃えられていませんが、それなり以上に戦果を上げるでしょうね。 ただ、あくまで自衛隊が動くまでの時間稼ぎくらいだと思います。 帝国…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。