第24話 強行な方針
クリスティーナがスバンドール公国遠征軍総司令官ダンカン・ウォレスと接触する前、日本国総理官邸の会議室では、先日行われた日本・ボアザック王国・スバンドール公国の3国で行われた会談について話し合われていた。
この席でボアザック王国はスバンドール公国に対し、正式に謝罪し、損害の賠償を約束した。これによりボアザック王国とスバンドール公国との戦争は終戦した。
ただ王国の現状では賠償を行うことはできないため、破壊されたものの修理、賠償に見合うインフラの整備を日本が無償で行うこととなった。
この代価として、王都南にある直轄地の50年間の租借、石油の独占採掘権、免税・自由通行、日本警備会社の限定的駐留を、ボアザック王国と日本との間で結ばれることとなった。
経済産業大臣が発言する。
「王都南の王国直轄地で採取されたものは、調査の結果、良質な石油と確認が取れました。埋蔵量は少なくとも、現在の日本で消費される50年分はあるということでした。」
別の大臣が言葉を発した。
「それはすごい。それにしても好条件だな。この世界では石油は全く使われていないのか?」
「元居た世界では、かなり昔から建築の接着剤や防水・防腐などに使われていました。ただこちらでは、これらのことは魔法が解決していたようです。ですので、こちらの人たちは石油とのかかわりがなく、異臭を放つ水という認識のようです。」
「かなり都合がいいな。」
ここで防衛大臣が変わって発言する。
「確かに好条件なのですが、問題があります。まだ王国は健在とはいえ、王都が帝国の手に落ちたことにより、この直轄地の租借が危険を伴うものになってしまったことです。」
「確か王都から南方に300キロほどのところだったか。」
先ほどと同じ大臣の発言に防衛大臣は答える。
「はい、そうです。300キロはそれなりの距離ではありますが、王国軍はもっと南のリシャール辺境伯領に集結中ですので、ここは無防備状態です。」
「ここに自衛隊の派遣は、今の我々の法では難しいうことだな。」
「おっしゃる通りです。残念ですが、一旦「アントン」拠点は撤収します。一部はもう撤収を開始しております。」
「ここを放棄してしまっては、条約の意味がないだろう。」
「はい。ですので、王国には帝国に反撃する力を、持ってもらわねばなりません。」
再び経済産業大臣が発言する。
「ここからは、私から。王国に何としても帝国を押し返してもらうため、武器を輸出することにします。」
「まさか、自衛隊の装備を?!」
「いえ、それはしません。輸出する武器はこの世界に見合った武器です。ただ日本製ですが。これらの武器の設計生産運用は済んでいます。NWSが王国潜入で使っていたやつです。これを大量に生産して、王国に輸出します。」
「輸出と言っても、日本は王国から何をもらう?」
「実は直轄地の50年間の租借の賃料の中に、武器が含まれています。」
発言者以外の閣議メンバー全員が一瞬息をのんだが、それに対し異議は出なかった。
「それで王国は、帝国を押し返せるのか?」
「えぇ、帝国軍はいったい何が起こっているのか、理解できないといったことになるでしょう。」
経済産業大臣の笑みが少し悪い。
ここで南雲総理が口を開く。
「先ほど経済産業大臣の発言通り、王国には何としても自力で、帝国を押し返してもらなければなりません。現時点で日本にできる最も有効かつ迅速にできることを実施します。経済産業大臣、この方針で準備を進めてください。責任は私が。」
「はい。わかりました。」
さらに日本政府は、ボアザック王国の要請により、以下の2つの事柄について、自衛隊派遣の方針を決定した。
1.スバンドール公国遠征軍へ、あくまで人道支援的補給のための自衛隊の派遣
2.リシャール辺境伯領へ、リシャール辺境伯軍と交代で、害獣駆除目的の自衛隊の派遣
これら資源の問題と、人命にかかわる内閣の方針は、今の日本の国会では、問題なく通ることとなるだろう。
これにより新生王国軍の再編が進んでいく。それと同時に、日本はボアザック王国への支援を、本格的に進めていくことになった。




