表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不思議の国のクリスティーナ――転移国家ニホンとの出会い  作者: 星空 ある


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/25

第16話 国王王妃救出

今回のお話、ちょっと長いです。

 ジュドーたちのBK117は、王都の牢城の南5キロの荒野に着陸し、全員がここで降りる。目的地の牢城は、王都の南西の端にあり、城壁に密着した形で隣接する小さな城といった具合だ。そこまでは徒歩で進む。2機のBK117はここで待機となる。

 

 30分ほど歩くと、日は落ち辺りは真っ暗になる。ナイトビジョンを装着したジュドーたちの上空には、先導するドローンが飛んでいる。さらに30分ほど歩くと、牢城が見えてきた。

 


 見えてきたな。ここまでは、誰にも遭遇することはなかった。まあ城門は閉鎖されているし、そもそも夜に城壁の外にいる者などいないだろうけどな。

 

 俺はそんなことを思いながら、小走りで進むよう全員に指示し、城壁までたどり着く。

 

 そして、先導のドローンの真下あたりまで移動し、城壁の頂上にタクティカルペンのライトを向けた。すると上から2本のロープが下りてくる。俺たちは、そのロープを伝って、城壁を要領よく昇る。

 

 最後の俺が昇り切ろうとしたところに、上から手が差しのべられる。俺はその手を取り、城壁を昇り切ると、手を差し伸べた男性が小さな声で話しかけてきた。

 

 城壁を昇った場所は、狭間胸壁と呼ばれるところで、デコボコした防壁を含めた、てっぺんの戦闘スペースだ。

 

「自分はボアザック王国日本防衛駐在官、八月一日幸太郎です。あなたがジュドー警備長ですか?」


「は、はい。私がジュドーです。」


 俺は、めったに役職付きで呼ばれたことがないので、ちょっと面食らった。


 俺を確認をした八月一日駐在官が、話し出す。

 

「警備に当たっている近衛は全部で9人です。」


 八月一日駐在官はみんなの反応を見ながら続ける。

 

「3人ずつの班に分かれて、牢番、巡回、休憩をローテーションしているようです。国王陛下の牢番が2人、王妃陛下が1人となっています。」


 やはり衛兵を引き抜いちまったことが大きいな。当初の予想よりずいぶん少ない警備人数だ。

 

 俺がその言葉にうなずくと、八月一日駐在官は続ける。

 

「警備以外のスタッフは男女7人です。すでに陛下たちと近衛の食事は終わっていて、今はスタッフたちが食事するのに、全員食堂に集合中です。最後に、陛下たち以外の収監はありません。」


 うん。事前の調査通りの状況だ。ここで八月一日駐在官を含めて、もう一度時間を合わせた。

 

「それでは、自分は一旦待機しているヘリに行きます。皆さんご無事で。」


「はい。八月一日駐在官も。」


 八月一日駐在官は敬礼をした後、脇に置いてあった装備を身に着け始める。あれがパラグライダーってやつか。初めて見たな。

 

「よし。……行動開始!」


 あっぶね、「状況開始」って言いそうになった。もうこれは訓練じゃない。

 

 俺のチームの2人とシャラのチーム2人が食堂へ。ヤンのチームは近衛の詰め所(休憩所は詰め所とつながっている)。シャラともう一人体格いい女性は王妃の牢へ。俺と俺のチームのもう一人が国王の牢へそれぞれ向かった。

 


 国王陛下の牢は、訓練通りの場所にあった。俺は通路の角の影から、牢番が扉の両脇に一人ずつ立っているのを確認する。距離は10メートルくらいか。こっちは全くの暗闇で、向こうからはこっちを確認できない。

 

 俺はハンドサインで相方に装備を出すよう指示する。相方は静かにその装備を雑のうから出す。「レーザー眩惑器」だ。相方から準備OKのサインをもらう。

 

 俺は、剣の柄で壁を打つ。

 

「カーン」


 牢番の2人がこちらを見る。と同時に相方が2人に向かってレーザー眩惑器のスイッチを入れた瞬間、「バシュッ」というわずかな電子音とともにエメラルドグリーンの光が、牢番たちに浴びせられる。すると2人は両手で目を押さえバランスを崩して、その場にしゃがみ込む。

 

 俺たちは素早く距離を詰め後ろに回り込み、あごの下から腕を通し頸動脈絞めで、気絶させる。

 

 牢番の手足を縛り、猿轡をはめその場に放置する。

 

 すると、扉の向こうから声が聞こえた。

 

「おい!どうした!何かあったのか!」


 俺は扉の近くまで行きあわてて小声をかける。

 

「お静かに。ボアザック王国国王陛下であられますか?」


「お前たちは何者だ。」


 陛下は一応小声で、聞いてきた。

 

「私は、日本の傭兵でジュドーと申します。クリスティーナ殿下の要請を受けて、陛下を救いにまいりました。」


「何?ニホンの傭兵だと?ティナの?!ティナは無事ということか。サーシャとカーチャも無事か?」


「はい。3人とも無事で日本の保護下にいます。今鍵を壊しますので、少し離れてください。」


 とはいっても別に危険は無いんだよな。ただちょっと見られると困るだけ。

 

 相方が肩ひもでかけている特殊カッターで、南京錠の蔓の部分を切る。「パチン」小さな音がして南京錠は用をなさなくなる。

 

 扉の蝶番に潤滑スプレーを吹き付け、静かに扉を開ける。

 

「陛下、脱出します。」


「あ、あぁ……。」


 陛下は音もなく開いた扉を、不思議そうに見つめながら牢を出る。

 

 俺たちは陛下を連れて中庭に出る。ちょうどその時、反対の方からシャラたちがやってきた。王妃は体格のいい女性にお姫様抱っこされている。

 

「王妃、無事であったか。」


「はい。陛下もご無事で。」


 2人は手を取り合って、お互いの無事を確かめ合っている。そして食堂に向かった4人も中庭に現れ、俺のチームの1人が報告する。

 

「食堂内にいた全員を監禁した。問題はない。」


 俺はシャラを見て軽くうなずく。シャラも同じように俺を見て軽くうなずく。

 

「陛下、ここからは彼女、シャラの指示に従ってください。間もなく迎えが来ます。」


「迎え?ここにか?どうやって、何が来る?」


 陛下は困惑した表情で聞いてきた。

 

「説明はシャラから聞いてください。俺たちはヤンたちと合流する。シャラ、後は頼んだ。」


「わかったわ。」


 俺たちは、詰め所の扉の近くで潜んでいるヤンたちに合流する。

 

 ヤンは俺たちに気が付くと、軽く手を上げる。それを見たここにいる全員が、一旦ナイトビジョンヘッドストラップを頭から外し、耳栓とガスマスクをかぶる。

 

 合流してから1,2分経った頃、詰め所の中から声が聞こえた。

 

「そろそろ巡回の時間だ。準備をしろ。」


 まるでそれが合図だったかのように、別の違う音が聞こえ出した。

 

「バタバタバタバタ……。」


 最初は小さな音だったが、だんだん大きくなる。

 

 再び詰め所の中から声がする。

 

「おい、なんか変な音が聞こえないか?」


「ん?本当だ。だんだん大きくなる。外か?」


 今だ!

 

 ヤンのチームの一人が、詰め所のドアを蹴破り、閃光手榴弾を投げ入れる。

 

「ボン!!!キィィィィィィィン」


 爆発音のあと、けたたましい金属音が鳴り、音と同時に太陽の何倍もの光が放たれる。

 

「「「うわーーーーっ!!!」」」


 中にいた3人の悲鳴が響く中、奥の扉が開き、部屋から休憩中の者たちが飛び出してきた。

 

 そしてもう一発、閃光手榴弾、そして続けて今度は催涙手榴弾も投げ入れる。

 

「「「おえーーーーーっ」」」


 詰め所の中は、もう地獄絵図だ。

 

 よし、これで15分は稼げる。今のところ問題なく進んでいる。撤収だ!

 

 俺たちはその場を離れ、最初に昇ってきた城壁のところへ走って向かう。

 


 その少し後、中庭に着陸しようとするBK117を、暴風が吹き荒れる中、ただ呆然と見ている国王がいた。


 私はボアザック王国の国王だ。ニホンの傭兵と名乗る者が、我々を牢から救い出してくれた。


 そしてこれからの脱出の説明を、シャラという女性から聞いたが、まったく理解できない。何度も聞き直してしまったが、やはり理解できなかった。

 

 この娘は頭がおかしいのか。私は何かの罠にはまったのだろうか。どうしたらいい?

 

 そんなことを思っていると「バタバタ」という音が聞こえてきたかと思ったら、ものすごい風が襲ってきて、今のこの目の前の光景だ。

 

 私はたまらず膝をつき、王妃も同じような格好で抱き合っていた。

 

 何だこれは?!空から降りてきただと?!何なのだこれは……。

 

「陛下!あれに乗ります!急いでください!お手を失礼します。」


 シャラが私の耳元で話す。王妃はまたお姫様抱っこをされ、私はシャラに手を引かれて、空から降りてきた何かの近くまで行く。

 

 側面の扉が開き、中から男性が現れる。王妃はその男性にお姫様抱っこのまま預けられ中に、その後次々とシャラのチームのメンバーが乗り込む。

 

「陛下!」


 バタバタという大きな音と暴風の中、自分を呼ぶ声がする。

 

 これに乗るのか?私は国王という地位にいることで数々の珍しいものを見てきた。だがこんなものは、今まで見たことも聞いたこともない。夢でも見ているのだろうか。

 

 しかし確かに先ほどこれは空から降りてきた。これで空を飛んで逃げるというのか。よかろう。もうこうなれば、従うしかあるまい。


 考えるのを放棄した私は、大きな声で手を差し伸べた男性の手を取り、乗り込む。そして扉が閉められ、空から降りてきた何かは、宙に浮き始めた。

 


 すでにガスマスクを外し、ナイトビジョンヘッドストラップを付けた俺たちは、城壁に昇るべく階段へ走る。その途中、中庭にBK117が着陸してくるのを目撃した。

 

 中庭には1機しか降りるスペースがないため、俺たちは城壁のすぐ外で待機しているBK117まで、侵入した経路を自力で逆戻りしなければならない。

 

 急いで階段がある角を曲がって登ろうとした瞬間、近衛兵1人が階段の上から剣を俺の顔めがけて突き出してきた。

 

「うおっ!」


 反射的に右に避け、顔の左側を剣先がかすめる。

 

 俺は近衛兵が突き出した剣の腕を、左手で掴み思いっきり引く。前のめりになっていた近衛兵は、腕を引かれたことにより、そのまま階段の下まで落下して地面にたたきつけられ、気を失った。


「ふー、あぶねー。」


 どうやら1人、詰め所にいなかった近衛兵がいたようだ。

 

 全員の動きが止まったが、俺はすぐ切り替えてみんなに伝える。

 

「急ぐぞ!」


 階段を駆け上がり、元の場所に戻ったが、今度は昇ってきたロープがない。

 

 くそう!あいつか!

 

 周りを見回すが、ロープはどこにもない。俺は城壁頂上で立ち尽くしてしまう。

 

 危険だが戻って、強行突破するしかないか。

 

 と思ったその時、

 

「バタバタバタバタバタバタ。」


 すさまじい音と風と共に、BK117が下から突然姿を現す。そのままホバリングで俺たちの近くまで寄ってくる。

 

 どうやら、ロープが片付けられたのを不審に思い、迎えに来てくれたようだ。

 

 助かった……。

 

 俺たちは、狭間胸壁の凸部に昇り、ホバリングしているBK117に乗り込んだ。

 

 すでに、シャラたちのBK117が、離陸して飛び立ったことは確認している。

 

「全員無事だな。誰も怪我はしてないな。良かった。」


 するとヤンが俺の顔を見て話しかける。

 

「お前、左頬から血出てんぞ。」


「え?」


 俺は左の頬をさわり手を見る。

 

「あ。」



そんなジュドーたちを乗せたBK117は、シャラたちを追いかけるように「アントン」基地に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ