第11話
もうすぐニホンの港に着く。
先日弟たちが、泣き出したことを気にした船員が、「げーむ」なる動く絵を操作して、遊ぶものを休憩室で弟たちに体験させてくれた。
最初戸惑っていた弟たちだったが、操作に慣れてきたらしく今では夢中で遊んでいる。
何やら1人乗りの馬なし馬車に乗って、先頭を競うものだった。私もやらせてもらったが、弟たちには敵わなかった。
悔しかったので、弟たちが寝た後、コズエを引っ張って特訓したことは内緒だ。
朝起きると港が見えるということで、甲板に出た。
船から見えた港町には、いくつかの塔のようなものが見えた。遠くから見た感じは……、なんと表現していいのだろうか。
何かこう白っぽいのだ。王国の町は黒っぽいというか茶色っぽいと言うか、何かそんな感じなのだが。
私たちは、上陸に当たり、スーツというものに着替えていた。(カーチャはワンピースだったが)
最初着ているのが恥ずかしかった、ニホンの軍服らしきものも、非常に機能的であったため、少し気に入り出していたのだが。
スカートの丈はひざ下くらいまでしかない。これは無理だ。
王国やニホンの軍服でも着慣れていた、パンツスタイルのものにしたもらった。
それにしても、ニホンの靴や服は、下着も含めて非常によくできている。仕立ても作りもどれも優れていて、着心地や履き心地がいいし、動きも楽だ。もう王国のものに戻れない気がする。
そして船が港に着き、私たちは上陸のために舷側に出て外を見る。
何だここは。この港は何でできている?
私たちは、ヤマシロ殿、コズエに続いて階段を下りて、地面に一歩を踏み出す。
コト。
これは石か?こんなに平らで、つなぎ目すら見えない。一つの石なのか?いやこんな大きな石があるわけがない。港一面だ。
「ティナ殿下?どうかいたしましたか?」
コズエが私が立ち止まったことで、どうかしたかと声をかけてきた。
「いや、何でもない。大丈夫だ。」
「これから、このバスに乗って空港まで行き、飛行機で日本本島に向かいます。」
ヤマシロ殿が説明する。目の前には、例の馬なし馬車がいる。「ぱじぇろ」に比べてかなり大きい。
「クウコウ?ヒコウキ?」
「はい、空港は空を飛ぶ乗り物が集まる場所で、飛行機は空を飛ぶ乗り物です。」
コズエの言葉に、いち早くカーチャが反応する。
「また、お空を飛べるのね!」
「はい。ただ先日のように、風を切ってというわけにはいきませんが。」
コズエが笑顔で答える。
「??」
カーチャは、どういうことという顔で、首をかしげる。
「あぁ、鉄の巨鳥だな。確か、かなり乗り心地が悪いのではなかったか?」
私は、鉄の巨鳥の事を思い出し、聞いてみた。
「いえ、今回のは、そのようなことはありません。ご安心ください。」
ヤマシロ殿も笑顔で答える。
すると、コズエが私の耳元でつぶやく。
「殿下、今回乗る飛行機はかなり特別なものです。私たちが普段乗る飛行機よりもです。私も初めて乗るので楽しみなんです。うふふ。」
「そうなのか、それはすごいな。」
何がすごいのか実はわからないが、コズエが嬉しそうなので、私も嬉しそうに言ってみた。
「では、どうぞお乗りください。」
ヤマシロ殿の合図で、大きな馬なし馬車のドアが、音を立てて独りでに開く。
「!」
ニホンは、何気ない事でも驚くことばかりだ。いい加減慣れなくては、身が持たないのだが……。
「ばす」は「ぱじぇろ」とは比べ物にならないくらい車内は広くて、椅子も座り心地がいい。
ヤマシロ殿、コズエ、それと護衛らしき4人の男性と私たちを乗せた「ばす」は、「クウコウ」に向けて出発した。
港を出た「ばす」は、道を走っているようだ。馬なし馬車が、何台もかなりの速度ですれ違う。かなり普及しているらしく、王都の馬車より台数が多いようだ。
ん?そういえば港を出て、道を走っているのに、ほとんど揺れない。
窓から道を見てみると、黒っぽい石のようなものが敷き詰めてある。やはりつなぎ目がほとんどない。港といいどうなっているのだ。
すると「ばす」は止まった。しばらくしてまた動き出す。何度か同じようなことが繰り返される。不思議に思ってコズエに聞いてみる。
「止まったり、動いたりしてるが、この「ばす」は、なにか調子が悪いのか?」
「あぁ、信号待ちですね。自動車同志がぶつかったりする事故を起こさないための、交通システムです。殿下たちにも後で交通ルールを教えますね。ルールを守らないと命にかかわりますから。」
「そ、そうなのか。それは恐ろしいな。ぜひ教えてほしい。」
弟たちも目を丸くして、うんうんと首を縦に振っている。
その後郊外に出ると、あまり止まる機会はなく、2時間くらいで「クウコウ」に到着した。
「クウコウ」の建物は横に長く、とてもきれいで、中には沢山の人がいた。
ヤマシロ殿が説明する。
「普通乗客は、出発ロビーから搭乗手続きを経て、搭乗口から飛行機に乗るのですが、今回は特別に、このまま滑走路側に出て、バスで飛行機に乗り込みます。」
私は「カッソウロ」なるところに出て驚く。鉄の巨鳥よりもさらに大きな「ヒコウキ」がいた。それも何匹も。
私たちは再び「ばす」に乗り、白地に赤いラインが入った「ヒコウキ」の近くまで来た。
多分向こう側が「ヒコウキ」の後ろだと思うが、白地に赤い丸が描かれた帆のようなののが見える。
ヤマシロ殿、コズエ、私たちは「ばす」を降り、階段を昇って「ヒコウキ」に乗り込む。
乗り込む入口には、濃紺のスーツに同じような色のスカーフを首に巻いた女性が立っていて、丁寧にお辞儀をしてくれた。
そして各自席に案内され、腰のあたりのベルトで、席に固定された。飛び立つときと降りる際には、必ず席についてベルトを閉めなければならないようだ。
それにしても、こんなに大きな鉄の塊が本当に空を飛ぶのだろうか。今更ながら心配になて来た。怖いがもう後戻りはできない。
緊張しながら、飛び立つのを待つ。サーシャは顔が少し引きつっているようだが、カーチャはニコニコしながら飛び立つのを、今か今かと待っているようだ。
コズエが話しかけてきた。
「そろそろ、飛び立ちます。」
ゴーという音が次第に大きくなり、窓の外の景色が後ろに飛んでいく。体が座席に沈み込む。
すると、体がふわっと浮いたような感覚になる。
飛んだのか?
緊張の度合いがさらに上がる。しばらくの間、体が前方に向かって坂を上るような状態だったが、やがて水平になった。
ポーンという音がすると、着席していた乗組員が一斉にベルトを外し、何やら準備をし出した。
「もうベルトを外して大丈夫です。あちらが会議室になっております。少し遅くなりましたが、食事の用意をしますので、そこで皆様でお召し上がりください。」
ヤマシロ殿が、部屋の方に手を挙げて、私たちをそちらに促す。
食事ができるのか?この空で?
私たちはベルトを外し、会議室の向かう。その途中、窓の外を見たカーチャが突然大きな声で話し出す。
「コズエ、あれ雲?!ねえ雲でしょ!」
「ええ、雲ですね。」
「ねえ、「ヒコウキ」止めてもらえない?ちょっとでいいの。雲の上に乗りたい。」
「わあ、僕も乗りたい。」
弟たちがコズエにお願いしている。私も乗りたい。
「申し訳ございません。飛行機は止めると真っ逆さまに落ちてしまうので、止めることができないんです。それともう一つ、残念なことに雲には乗れません。」
「なんで?あんなにふかふかそうなのに。」
「はい。あんなにふかふかそうなのですが、乗った途端、やはり真っ逆さまに落ちてしまいます。」
「そうなの……。」
カーチャもサーシャもしょんぼりしてしまった。私もがっかりだ。
会議室で、ヤマシロ殿、コズエと一緒に食事をとった。なんとここでも温かい食事だ。
食事の後は、外を眺めたり、動く絵の門語りを見たりして過ごした。
しばらくして地面に降りるということで、飛び立つときに座った座席に戻り、ベルトを締めた。
その後、無事地面に降り立ち、私たちは「ヒコウキ」の外に出る。
降りた「クウコウ」は飛び立った「クウコウ」よりも遥かに大きかった。「ヒコウキ」もたくさんいる。施設内も広く大勢の人たちがいた。
私たちは「ばす」に乗り宿に向かうのだが、その途中に見かけたものが信じがたいものばかりだった。
広く長いトンネル、空中に重なり合う道、ものすごい数の「ジドウシャ」、森のような摩天楼。
そして宿の前で止まりった「ばす」から私たちは降りる。これが宿?摩天楼の宿を見上げる。空が狭い。
ここはなんだ?神の国か?私たちはとんでもないところに来てしまったようだ。
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