鈴仙&てゐルートHAPPYEND
……………今は動かない方がいい
少なくとも、今動くところじゃない
ツキカゼ「まさか人質を取って逃げることになるとはな……………」
陽「くっ……………」
何か、何かないか……………ん?
月魅「………………」
奴の後の民家の屋根に月魅が乗っていた
そして、俺でもわかるくらいのハンドサインで静かにして欲しいと伝えてくる
とりあえず言うとおりに黙っていよう
ツキカゼ「ふっ……………こちらがやった事とはいえこんな事で攻撃ができなくなるとはな
やはり甘いな」
陽「っ……………」
駄目だ、挑発に乗るな
月魅が何とかしてくれるだろう…………陽鬼や黒音の姿が見えないが…………おそらく二人も動いているのだろう
ツキカゼ「………言い返さないとはな、自覚がある分余計にタチが悪い」
陽「そうかよ………タチが悪くて悪かったな」
ツキカゼ「何だ?妙に素直じゃないか」
陽鬼「そりゃ安心できる状況だからね…………!!」
ツキカゼ「ごはっ………!?」
………上から陽鬼が降ってきて奴の頭を思いっきり殴りやがった
とんでもない速度で落ちてきたしあれは痛い
いや、痛いなんて言葉じゃ表せないだろう………鬼の腕力+落下速度のダメージなんて考えたくもない
ツキカゼ「ぐ…………あ…………!!」
奴がふらついて鈴仙を離す
鈴仙「っ!今よ!!」
瞬間ゼロ距離で弾幕を放つ
ツキカゼ「ぐわあああ!!」
やつが吹っ飛ばされる
まぁ隙をついたからな、ダメージは相当あるだろう
ツキカゼ「ぐっ……………貴様ら…………!!」
良し………これなら奴を倒せるかもしれない
陽鬼「陽!」
月魅「今です!!」
二人が叫んだ途端ポケットから4枚のスペルが出てくる
狂気[鈴仙・優曇華院・イナバ]
幸運[因幡てゐ]
魔眼[クレイジー・アイ]
木槌[不幸にさせる槌]
陽「…………よし、行くぞ二人共」
鈴仙「えぇ!」
てゐ「うん!」
陽「狂気[鈴仙・優曇華院・イナバ]
幸運[因幡てゐ]」
俺がスペルを唱え、二人の体が変化していく
まず、鈴仙は紅く光だし、光の塊となる
それが俺の目に飛んでくる
気づけば俺は眼鏡をかけていた
これが鈴仙なのだろう
一方てゐは白く輝き、その形を解かし、別の形へと姿を変える
そうして形が整えばそれはこちらに飛んでき、俺がそれを握る
てゐは木槌となっていた
陽「さて…………行くぞ!」
ツキカゼ「そんな装備で………人並み以上に戦えるというのか?」
陽鬼「けど、私達だっているんだよ?」
月魅「貴方は一人です、降参するなら今ですよ」
黒音「そういう事なのじゃ
お主一人では我らを相手するのも苦しい筈なのじゃ」
ツキカゼ「舐めるな…………先程は不意を突かれたがあんなのは二度も通じないぞ」
陽鬼「けど全力で殴ったんだ
頭を砕くつもりでやったのに案外丈夫で驚いたよ」
気づけば黒音が来ていた
そして先陣を切るかのように陽鬼が戦闘態勢に入る
だが………
陽「陽鬼、今回は俺が先陣を切らせてもらうぞ!」
それを無視して先に俺が突っ込む
ツキカゼ「舞い上がるなよ…………それらがどんな力があるかは不明だが図に乗るのは素人の証拠だよ」
確かにそうだろうな………けどそれは普通の木槌と普通の眼鏡であればの話だ
陽「はっ!」
木槌となったてゐを振り上げる
しかし、奴はそれを読んでるかのように持っていた剣で俺を横一線で切り裂く
それは確実に切り裂いた………『やつが見えてる分には』だが
ツキカゼ「何………!?何故切った感触がない!?」
陽「こっちだよ!」
そして奴の後から俺が頭を叩き殴る
ツキカゼ「ぐっ………!?何故後ろにいる………!」
奴は何が起こったのか分からないと言った顔をしていた
当然だ、分からないようにしたのだから
陽「もう一撃!」
ツキカゼ「くっ!」
奴は確実に仕留めようとしたのか、剣で俺の左胸、心臓のある部分を貫く
これもまた確実に貫けた
しかし、それもやつが見えてる分にはである
ツキカゼ「また………今度も後ろからか!?」
陽「おっと」
二度目は通じなかったのか後ろに向けてすぐさま剣が横一線に薙ぎ払われる
しかし、俺に当てるには距離が足りずただ空を切る
ツキカゼ「…………まさか、その眼鏡に狂気の力でも宿っているのか?」
流石に勘だけはいいな
まぁ正確には鈴仙の力で波長をずらして俺がそこにいるかのように見せてただけなんだけどな
陽「さて、どうかな
それがあっていたらお前は幸運に愛されているな」
無論、こいつに種明かしをする気はない
皮肉めいた笑みを浮かべて俺はあいつに喋る
ツキカゼ「………少しばかり俺に攻撃できたからといって調子に乗っているようだな」
陽「あぁ、乗っているさ
けどそれでもお前を確実に倒せる自信だけは本当だと思っているな」
ツキカゼ「幸運の兎を味方につけているからと言って…………それだけで勝てるとは限らないぞ?」
陽「そんな事言われなくてもわかってる
勝つのは俺達の力でだ
運任せにする気もないさ」
ツキカゼ「ならば………合致[スリーカード]」
奴はスペル宣言をすると三人に増える
陽鬼達3人と俺の四人が相手だが………恐らく本体は俺が相手することになるだろう
陽鬼「陽!!」
月魅「私達は増えた二人を相手にします
マスターは……」
陽「分かってるよ………さて、鈴仙、てゐ、行くぞ」
鈴仙「うん!」
てゐ「はーい」
ツキカゼ「対1では負けん
負けるわけにはいけないんだ」
陽「それは俺も同じだよ
だからこそ…………一撃で決める」
ツキカゼ「……………それに関しては同意する、胸糞悪いがな」
また同じ意見かよ………胸糞悪いのはこっちだって同じだっての
ツキカゼ「…………合致[ダブルジョーカー]!」
奴がスペルを発動させる
奴の剣の刃が黒く染まり見るからに凶悪そうである
そして、奴が攻撃の構えをとる
陽「魔眼[クレイジー・アイ]
木槌[不幸にさせる槌]……………はぁ!」
二枚のスペルを発動させて俺が先に突撃していく
そして、木槌となったてゐを振り上げる
ツキカゼ「死ね!」
そのまま振り上げた俺に剣を突くように一閃放とうとする
しかし、その一撃を放つ前に奴の後ろの民家が崩れる
てゐ「一つ目」
ツキカゼ「っ!」
俺の攻撃と崩れた民家の破片を避けるために横に避けながら剣で破片を吹き飛ばす
しかし威力が大きすぎたのか吹き飛ばした際の衝撃で周りに土煙が舞い上がる
てゐ「二つ目」
ツキカゼ「げほっげほっ………奴はどこに…………」
陽「ここだよ」
ツキカゼ「っ!」
やつの正面………正確には俺が少しかがんでいるから下を向いたら目と目が合うような距離だ
そして奴は俺の目を見た
見てしまった
そして奴は幻覚に嵌るーーー
陽「………………動かなくなったな」
鈴仙「そりゃあね
強力な幻覚を見てるようなものだから」
俺と奴が目を合わせた瞬間奴はそのままの体制で固まってしまった
陽鬼「あれ…………分身が……………」
月魅「…………消えましたね」
黒音「本体が幻覚に囚われたからかの………?」
陽鬼達の方も分身が消えたようで唖然としていた
陽「…………ちなみに聞くが、どういうのを見せてるんだ?」
鈴仙「私の能力で感情の波長を喜びや楽しみにする
そうすると楽しい幻覚になるわ
けどそこから悲しい出来事に繋いでいって最終的には発狂して狂気に落ちてしまうような幻覚を見せて終わりよ」
陽「えげつないな…………じゃあこいつは発狂するまでこのままって事か?」
その質問に対しては鈴仙が元の姿に戻ってから答えた
鈴仙「そうね…………精神面が強ければ戻ってこれるでしょうけど………今回はてゐのスペルも影響したんでしょ?」
俺が答える代わりにいつの間にか元の姿に戻っていたてゐがそれに答えた
てゐ「そうだね〜
あのスペルはどうも『私を使っている人だけを幸福にする』って効果があったみたい
まぁ逆を言えば『戦ってる相手がひたすら不幸になる』ってものなんだけど…………今回同時発動したから本来の効果より幻覚の狂気も上がってるみたいだよ、彼は不幸だね〜」
…………どれだけ上がったのか知らないし、元々がどれくらいえげつないのかも分からないが、とりあえず問題はなくなったようだ
鈴仙「となると……………廃人になる可能性が高いわけか」
てゐ「そうなるね、でもまぁここにほうっておくわけにも行かないーーー」
ツキカゼ「ーーーぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!」
陽「なっ!?」
突如咆哮を上げる
てゐと鈴仙の話だと狂気に囚われるってことだが……………
ツキカゼ「はぁ………!!はぁ………!!よくもやってくれたな……………!!」
鈴仙「嘘!?普段より狂気に落とせるようになってたのよ…………!?どういう精神力してんのよ………」
てゐ「まさに鋼…………なんて言ってる場合じゃないよね…………」
ツキカゼ「今すぐに殺してやりたいところだが……………くっ、思いの外効いたぞ……………」
フラフラとよろけながらあいつは俺達に剣を向ける
その目は狂気に怯えているもののそれではなく、圧倒的な怒りを感じた
ツキカゼ「まぁいい…………今は全く力が出せないからな………逃げさせてもらう」
そういい奴はすぐそこの曲がり角を曲がる
陽「ま、待て!」
慌ててやつを追いかけ始める
しかしそこにはやつの姿はもうなかった
陽「逃げたか……………」
と、気づけば結界も知らないあいだに消えていた
鈴仙「結界が…………あの男のせいだったのね」
てゐ「結果オーライってところだね」
鈴仙「はぁ…………とりあえず里の人みんな無事か回っていきましょ」
陽「…………そうだな」
数日後〜
陽「ふぃー…………疲れた……………」
鈴仙「これくらいでへばらないでよ
まったく」
あれから数日が経った
結界の事件は大して被害もなかったということですぐに皆の記憶の中で奥に置かれるような小さな事件となった
俺は相変わらず鈴仙やてゐの手伝いをしながら生活していっている
てゐ「そんな事より…………陽鬼をどうにかして欲しいよ
力任せすぎるよ、ほんと」
陽「うぐ…………それは済まない……………」
陽鬼達がミス(と言っても基本的に陽鬼が力任せにやった結果が全てなのであるが)をして俺が怒られたりする
まぁ可愛い奴らだから全く苦にはならないんだけどな
てゐ「………ほーんと、親バカ」
鈴仙「こういうのはロリコンって言うのよ」
陽「待て、今の言葉は聞き捨てならんぞ」
別に俺は小学生とか中学生に恋愛感情を向けるほどおかしくはないぞ
というかーーー
陽「なんで今の会話の流れで親バカとかロリコンとかの扱いを受けないといけないんだ」
てゐ「あんたの顔が謝るどころかかなり笑顔になってるから」
鈴仙「あの流れでなるとしたら親バカ、ロリコン、マゾヒストのどれかよ」
陽「……………親バカは否定しないが、ロリコンとマゾは否定する
俺はそこまで変態じゃない」
てゐ「本当かな?」
なかなか信じてくれないな…………そんなにロリコンっぽく見えるのか?
鈴仙「………まぁ、そんな事はどうでもいいのよ
とりあえず仕事は終わったんだからご飯にしましょ」
陽「…………だな」
てゐ「ちっ、逃げられた…………」
…………今舌打ちしたよなてゐ
まぁいい、今はそこまで追求しても意味無いだろう
鈴仙「ご飯の材料ある?」
陽「ありゃ…………ないぞ」
食料庫は緊急用のと患者用の以外を除いてはほとんど空だった
鈴仙「しょうがない…………買いに行こ?」
陽「だな、荷物もちするよ」
てゐ「だったらちょうどいいから私も行くよ〜」
陽「なら三人で行こうか」
鈴仙「えぇ」
なんとなく、三人で手を繋いで歩き出す
それが幸せの形だとわかっているから、俺はその幸せを噛み締める
HAPPYEND




