1日目 6
日が翳りだした。多少の焦燥感を覚えつつも高坂源一郎は、歩幅の狭い朝比奈悠樹と動きの鈍い篠岡賢治に合わせて歩いていた。
「ふう、ちっとも涼しくならないねえ」
左からチビの声。
「暑い……、休憩所はまだっちゃかあ?」
右からデブの声。
間に挟まれているチビデブの源一は、頭を掻いて2人に言った。
「おまえらうるさい。もうちょっとペース上げないと時間切れで失格になるぞ」
「時間切れって日没までだろ? まだダイジョーブだよ♪」
「時間切れって日没までだっちゃろ? まだ大丈夫っちゃよ♪」
左右から聞こえるソプラノとテノール。その声は、それぞれが源一にのみ話しかけている。源一は、頭が痛くなってきた。
「おい朝比奈。いいかげん篠岡を無視するのは止めろ!」
「ねえ、ゲン。ボクのことはユウでいいよ♪」
「ゲン、俺のこともケンでいいっちゃよ♪」
「家畜が格式ある日本語を喋るなよ! こっちまで恥ずかしくなるじゃないか!」
「家畜ってなんだっちゃ~!」
「ハン、家畜人デブーが! だいたいキミのことをケンって言ったらゲンとかぶるだろ!」
「むき~! お子ちゃまのくせにいい!」
悠樹はトテトテと逃げ、賢治はドタドタと追いかける。グルグルと源一の周りで追いかけっこをする2人。
「仲がいいんだか悪いんだか……」
「はあ? ゲン、どうしてコイツとボクの仲がよく見えるんだよお!」
「そうっちゃ! 俺がこんなお子ちゃまと仲がいいわけないっちゃ。ま、俺とゲンは仲がいいけどな!」
「起きて寝言言うなんて深刻な病気なんじゃないの? ボクとゲンの間に横から入ってきたくせにずーずーしいんだよ君は!」
「あれぇ、俺とゲンの仲がいいことに嫉妬してるっちゃか?」
「せや!」
悠樹は巨漢、篠岡賢治を殴りつけるが賢治はびくともしない。源一は大きなため息を吐いた。
「おまえら馴れ馴れしいな。俺たちはまだ知り合って半日も経ってないだろ?」
「あれ? ゲンとユウってオナ中じゃないっちゃか?」
「いや、知り合ったのはついさっき。アスレチックコースの途中でだ」
「ぬあ~んだ! じゃあゲンとチビすけは別に仲良くないっちゃね」
「おまえとも別に仲良くないけどな」
「それにしてはやけになつかれてるっちゃね」
「昔から子供と動物にはなつかれるんだよ。俺も背が低いから親近感を持たれるらしいな」
源一は悠樹を見た。悠樹は殴り疲れて膝に手をついて荒い息を吐いている。対して殴られ続けた賢治はノーダメージだった。
悠樹は一度大きく深呼吸をすると、源一に聞いた。
「ねえ、ゲン。オナ中ってなに?」
「同じ中学出身ってことだよ」
「オナニー中毒じゃないっちゃよ」
「オ……何?」
「こいつ、外見だけじゃなく中身もお子ちゃまだったっちゃね」
「なんだとー、この猪八戒め!」
「おい賢治。下ネタは禁止な。子供の教育に悪い」
源一に名前で呼ばれた賢治は顔をにやけさせ、それを聞いていた悠樹は思い切り顔をしかめた。
そして、ゴールという天竺を目指す3人の珍道中はこの日最後の難関と、最後の仲間に遭遇した。




