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とりあえず走れ  作者: どぶねずみ
4月~競歩大会~
6/49

1日目 4

「おっし、立つぞ」

「ゆっくりだよ。ゆっくり立ってよ!」

 高坂源一郎は朝比奈悠樹に言われたとおり、ゆっくり立ち上がる。

「ひいい、揺れる揺れる!」

「落ち着け、揺れてるのはおまえの身体だ!」

悠樹は源一の肩に足を乗せたまま、しゃがみこんでいた。目の前には3メートルの壁。源一と悠樹は、肩車でこの壁を越えることにしたのだった。

「ほら、いつまでもしゃがんでないでおまえも立て! 壁の上に手が届くだろ?」

「う、うん」

 馬になっている源一に言われ、悠樹はゆっくりと立ち上がった。壁の上部に手を伸ばす。

「どうだ?」

「ん、届いた。ちょっと待って、今越えるから。ん~!」

 悠樹は源一の肩につま先立ちになり、なんとか塀を越えようとするが、なかなかうまくいかない。腕の力が弱いために身体を引き上げられないのだ。

「……」

 源一は、壁についていた手を離すと、半ば放り投げるように、肩に乗っている悠樹の足の裏を持ち上げた。

「わきゃあああぁぁ」

悠樹の身体は壁を乗り越え、上部に転がっていった。

「おーい、大丈夫か?」

 ……源一の呼びかけに、悠樹からの返事はない。これは、裏切られて先に行かれたかな、と思った源一は、一人で壁を越えることにした。

 助走をつけ、一気に壁を駆け上がる。上部に手をかけ、身体を起こしたときだった。

「おわ!」

「ぎゃひん!」

目の前にアップで現れる悠樹の顔。源一は、悠樹の額に自身の顔をぶつけ、今日3度目の落下を経験した。

 地面に背中を強打し仰向けで寝そべっていると、壁の上から額を押さえている悠樹が顔を出した。

「なんで急に昇ってくるんだよう!」

「おまえこそ、なんでいきなり顔を出すんだよ」

源一は呼吸を整えると、身体を起こした。その足元に縄が投げ出される。縄は壁の上部から伸びていた。

「どうやら先に行った連中がこの縄を引き上げちゃってたみたいだね。おかしいと思ったよ。この壁、すごく高かったから」

 源一は縄を使い、壁を越える。上部には悠樹が待っていた。

「呼んでも返事がないから先に行ったかと思ったぞ」

「この縄がけっこうキツク結ばれてたんだ。それで返事が遅れたんだけど。でも安心していいよ。ボクと君はドウメーを結んだ仲間だからね。裏切ったりしないよ♪」

「同盟は破るために結ぶって言うぞ」

「っぷ。やっすいセリフ! もうちょっとひねったら? 陳腐すぎるよ」

「うるさい! 先に行くぞ」

「はいはい。さ、一緒に行こっか!」

小走りで先に進む源一の隣に悠樹は並ぶ。こうして源一と悠樹は最初の難関である壁を協力して越えたのだった。


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