表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とりあえず走れ  作者: どぶねずみ
4月~競歩大会~
43/49

5月オープニング

どうも、お久しぶりでございます。アクセスが2000を超えました。感想までいただきありがとうございます。

またたびさま、ご指摘のとおりでした。いや、こっ恥ずかしい、速攻で修正しましたのでどうかご容赦を。

 三崎省吾は鏡台の前で髪型を整えた。


 カーテンの隙間から差し込む陽光は、今が昼近い時間帯であることを示している。

「……どこに行くの?」

 省吾は背後からの声に振り返った。そこには、全裸の女性がベッドで寝そべっていた。

白い柔肌に残る縄や蝋燭の後を撫でながら、女性は言った。

「久しぶりに堪能したわ、ご主人様♪」

 省吾は片頬を吊り上げて答えた。

「まったく、夜中に主人を呼び出す奴隷ってのはどうなんだ?」

「仕方ないでしょ、1週間ぶりに日本に帰ってきたのが深夜だったんだから。実際、見た目ほど華やかな商売でもないのよ、キャビンアテンダントって。完全な労働者(ブルーカラー)ね」

 女性は豊満な胸を隠しもせず、身体を起こし伸びをした。

「会社に顔を出したら午後は暇だから、これからデートしましょうよ」

「悪いけど、パス」

「なにか用事があったかしら? 暇な身分でもないのは知ってるけど」

「これでも学生なんだよ。これから学校でお勉強」

 女性は、端整な顔を歪めて笑みを作った。

「『狂犬』、三崎省吾の言葉とは思えないわね」

 省吾は女性に背を向け、首だけで振り返って言った。

「高校生だからね。案外楽しいぜ、青春ごっこ」

 その言葉に呆然とする女性に片頬を吊り上げると、省吾は出口に向かった。

 背後では、女性の馬鹿笑いが聞こえてきた。

 





「エッチな言葉を言ってみようちゅわ~~~~!」

「「いえーーーー!」」

 教室の片隅で無駄にテンションの高い声が響き渡った。ひとり状況についていけない朝比奈悠樹は、隣にいる小太りの男の袖を引いた。

「ね、ねえゲン。なにが始まるの?」

 小太りの男、高坂源一郎は悠樹の手を払いのけ、やはり無駄に高いテンションで答えた。

「知らん! とりあえず盛り上がっとけ! 元気にな!」

 悠樹は、理由もわからないまま、一度頬を叩いて気合を入れると、大声で叫んだ。

「いえ~~~~!」

「お、チビすけも乗ってきたっちゃね。よし、じゃあ一発目は高志、いくっちゃ!」

「ぃエッサー!」

 細長い学生、木下高志はセミロングの茶髪を掻き上げて敬礼すると、唇を窄めた。

「ほ、ほ、ほ……」

「ほ?」

「ホッチキス……」

「きたっちゃ~~~!」

「おま、一発目からホッチキスかよ!」

「? ねえゲン。ホッチキスがどうかしたの?」

「ばっか! ホッチキスだぞ! キスキス!」

「?? キスぅ?」

 眉間に皺を寄せる悠樹。まるでついていけないのに流れはまるで止まらない。

「次はゲン、いくっちゅわ~~!」

「よし、てめえら腰抜かすなよ!」

「よしこい!」

「??? ヨシコイ!」

 悠樹はなんとかついていこうと高志に並び、源一と対峙した。

「……ヴァインダー!」

「ぶぁいんだ~~~~~~!」

「鬼下品だろそれ!」

「はあ? ばいんだー?」

 無駄に盛り上がる(ばか)3人。悠樹はひとりぽつんと取り残されていた。

「ちょっとゲン~! なんでバインダーがエロいんだよ!」

「おまえ、カマトトぶってんじゃねえよ! バインダーだぞ! バインボインのバインダーだぞ!」

 源一は胸の前で両手でお椀を作った。悠樹はその手を叩き落とし、むくれっ面を作った。

「もう! ぜんっぜんわかんない!」

「ったく、このエロさがわからないとは本当にガキンチョだな」

 源一は悠樹の肩を掴んで後ろを向かせると、そのまま抱きついた。悠樹は、一瞬呆けたような顔をすると、そっと源一に寄りかかった。

「よっし、くそデブ! 本命いけ!」

「鬼エロいのを頼むぜ!」

「よし、いくっちゃよ!」

 悠樹は緩みそうになる頬を押さえて、篠岡賢治(くそデブ)を見上げた。


 そして、賢治はパンドラの箱を開けた。


「……万華鏡!」

「「ぐはッ!」」

 瞬間、高志は鼻を押さえてうずくまり、源一は悠樹を抱えたまま後ろに倒れた。

「うにゃん!」

 悠樹はじたばたと暴れて源一の腕から逃れて立ち上がると、やり遂げた感のある満足そうな賢治の顔を見上げた。

「ちょっとケンジ! 万華鏡ってなんだよお!」

「さすがにこれは説明できないっちゃ~~♪」

「バークシャーのくせに生意気だあ!」

 悠樹はおもいっきり賢治の腹(蓄積志望)を殴りつけるが、賢治はうるさげに悠樹を手で追い払うだけだった。

「……さすがだ、賢治。変態度も半端じゃねえ」

「……鬼すげえな。まさか、万華鏡を出してくるとは思わなかったぜ」

「それで、チビすけはどんなエロ単語を披露してくれるっちゃかな?」

「え、ボク?」

 急に話を振られて、悠樹はたじろいだ。いつの間にか、源一、高志、賢治の視線は悠樹に集まっている。

 悠樹は、殴りつかれて弾んだ息を整えるために軽く深呼吸すると、言った。

「よっし、言うぞ!」

「どんとこいっちゃ!」

 いつの間にか、教室中が静まり返っていた。今まで無関心だった全員が、悠樹に集中しているのだ。

 一瞬の静寂、悠樹は、言った。


「のどちんこ……」


「「……」」

 誰もなにも言わない。その反応が不満だったのか、悠樹は声量を上げてもう一度繰り返した。

「のどちんこ!」

 源一は重いため息をつき、高志は天を仰ぎ、賢治は顎肉を揺さぶらせながら肩を竦めた。

「な、なんだよ、そのハンノー? のどちんこだよ! えろいだろ?」

「どこがエロいんだ?」

「変な形のど根性大根のほうがよっぽどエロいっちゃ」

「さすがに、のどちんこは鬼エロくないな」

「君たち、ゼッタイおかしいよ! なんでのどちんこがエロくないんだよおおおお!」

「いやあ、あれは毎日見るだろ?」

「鬼見慣れてるよな」

「……毎日みるっちゃか?」

「見るだろう。小便するときとか」

「…………」

「…………」

「??なあに、この沈黙?」

 再び話についていけない悠樹。話が噛み合わない賢治と高志、源一。


 教室中に広がる意味不明な緊迫感、それを打破したのは、開け放たれた扉だった。

「お~っす、って、なんかあったのか?」

 教室に入ってきたのは、片耳にピアスをつけた長身の男だった。

悠樹は、重苦しい空気を掻き分けて長身の男のもとまで走った。

「ショーゴ、ショーゴ! のどちんこってえろいよね!」

 長身の男、三崎省吾は思わず噴き出してしまった。

 ほんの数時間前までの情事と今この瞬間の落差、これだけでもデートを断って登校したかいがあるというものだ。

「民放なら自主規制くらいにはなりそうだな」

「ほーら! やっぱりえろえろじゃないか!」

 悠樹は勝ち誇った顔で賢治たちに言った。

「省吾、あんまりがきんちょは甘やかすもんじゃないっちゃよ」

「ああ、気をつけておくよ。よう、高坂。今日は初めて会うな」

 省吾は高坂源一郎の隣の席に座った。源一は、省吾に視線を合わせずに応じる。

「こんな時間に登校とは大した身分だな」

「ノブレスオブリージュってやつだよ。これでも苦労してるんだぜ、人間関係にな」

「面倒くさいやつだな。中学で懲りたんじゃなかったのか?」

「まあな。だから注意してるよ、親友に彼女をとられないようにな」

 

 源一は、顔を動かずに横目で省吾を睨んだ。

 省吾は、片頬を吊り上げたまま源一の眼光を受け止めた。

 

 2人は、同時に笑い出した。低く、深い笑い。

 悠樹は、おもいきり頬を膨らませると源一と省吾の間に割って入った。

「ちょっと、ゲン!」

「おお、なんだよいきなり」

「げーん~!」

「だからなんだってんだよ」

 省吾は声を上げて笑い、それから源一の肩を揺する悠樹に向き直った。

「悪かったな、朝比奈。せっかくおまえが高坂と仲良くしてるのを邪魔して」

 悠樹は、剛速球どストレートで硬球をぶつけられたように源一から弾けた。

「ん、なななななな! カタミミピアス! 君はなにをいーだすんだ!」

「慌て過ぎだっちゃろ」

「顔が鬼赤くなってるな」

 爆笑する不良、きゃんきゃん喚くチビ。デブとハゲは冷静に突っ込みを入れる。チビデブの源一は、大きなため息を吐いた。

「おまえ、そんなことを考えてたのか? 女々しいやつだな、おっと!」

「せや、せやあ!」

 悠樹はちっちゃな(おてて)で源一を殴りつけるが、源一はイスに座ったまま体捌きのみでそれをかわした。

「女々しいといえば、ゲン、知ってるっちゃか?」

「なにがだ? おっとあぶねえ」

「うちの学校、女子がひとりいるらしいっちゃよ」

 ぴたりと、悠樹の動きが止まった。


 ここ、私立風見鶏学園は共学だ。だが、それは体制上のことであり、ただひとつの例外を除いて、男女比は100対0、つまり、女子はいないはずだった。

 その例外が朝比奈悠樹だった。もしこの学校に女学生がいるのなら、それは、生物学上女である悠樹のことになる。

 だが、源一の言葉は悠樹の想像を超えていた。


「ああ、知ってるよ。3年の逢坂先輩だろ? 俺と三崎は以前生徒会に挨拶に行ったときに会ってるよ」

「あの人は美人だったな。確か、生徒会の副会長をやってるんだよ」

 悠樹は慌てて高志の顔を見た。悠樹を女だと知っている高志は、悠樹と同じように困惑した顔を浮かべていた。

「な~んでそんな大事なこと黙っていたっちゃか! よっし、高志、悠樹! 俺たちもオナゴ見物に行くっちゅわ~~!」

 腹をたぷんたぷん揺さぶらせて教室を出て行く賢治。困惑したまま賢治の後を追う高志と悠樹。源一は、ゆっくりと重い腰を上げた。

「なんだ、高坂。おまえも行くのか?」

 源一は一度動きを止めると、省吾に向き直った。

 そして、その日初めて省吾と目を合わせると、歯を見せて笑った。

「ノブレス・オブリージュってやつだよ。面倒な人間関係のな♪」

 省吾は目を大きく見開くと、片頬を吊り上げて教室を出て行く源一の背中を眺めた。


掲載しておいてなんですが、5月編はこれだけで、次回は予定通り6月編になります。5月は、放送部の設立、3年との対決、悠樹の女ばれ、源一と省吾の友情パワー発動、そして、ラスボス野々宮千秋(男)の登場などイベントは目白押しなんですけどね。ただ、6月には、彼女が出ます。皇へきる、悠樹の幼馴染です。ぶっちゃけ男だけの話に飽きてきましたし、彼女を出さないと短編が書けませんから……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ