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とりあえず走れ  作者: どぶねずみ
4月~競歩大会~
41/49

4日目

 強歩大会の翌日、高坂源一郎たちはヘリに乗り地獄極楽島を後にした。そして、運ばれた先は、1年生寮だった。

 源一はあてがわれた部屋に入り、2段ベッドの下に荷物を放り込んだ。

「で、なんでおまえと相部屋なんだよ!」

源一は、上段のベッドで寝転んでいる三崎省吾を怒鳴りつけた。

「なんだよ、大声出して。俺たちは強歩大会の1位2位だから、当然だろ?」

源一は室内を見渡した。

12畳のキッチン付ワンルームだ。備え付けの冷蔵庫、大型テレビにソファ。2つの机の上にはそれぞれデスクトップのパソコンが乗っている。

2人部屋とはいえ、学生が使うには豪華な部屋だ。

「おーっす、ゲン、ショウ。遊びに来たぞ~」

ノックもなく扉が開かれ、木下高志が入ってくる。

「うお。鬼でかいテレビだなあ」

「高志、賢治はどうした?」

「あいつは部屋で寝てるよ。筋肉痛で動けねえってよ」

高志はソファに腰下ろした。

「それで、おまえらの部屋はどうなんだよ」

「ここほどではないけど、それなりにいい部屋だよ。広さはここより少し狭いかな。パソコンは1台だしキッチンはないな」

「ふ~ん。一応トップでゴールしておいて、得したってところかな」

「おいおい。さっき行きのヘリで同じだった奴に聞いた話だけど、初日にリタイアした連中は6畳で4人部屋だってよ」

「……それは、きついな」

「……ああ。俺たち、相当優遇されているんだな」

源一と省吾は同時にため息を吐いた。だが、ため息には達成感も含まれている。150人の新入生の中で強歩大会を完走したのは源一たち5人だけであり、それこそ命がけでゴールしたのだ。そのゴールの報酬としてのこの部屋ならば、源一は素直に受け取ることができた。

「そうだ、高坂。相部屋になってひとつだけ頼みがあるんだ」

「なんだよ」

「俺、月曜深夜にラジオを聞くんだよ。少し騒ぐかもしれないけど、我慢してくれ」

「……深夜の秘密基地?」

源一の問いかけに、省吾は即座に2段ベッドから飛び降り、源一に拳を出した。

源一は、無言で省吾の拳に自分の拳を付ける。さらに源一と省吾の合わさった拳を覆うように、高志は手をかぶせた。

3人は肩を叩きあって笑いあった。


 その後、高坂源一郎、三崎省吾、木下高志の3人に篠岡賢治、そして朝比奈悠樹の5人がラジオ繋がりで放送部を作り、学園中、いや、日本中を席巻することになるのは、まだ先の話だった。


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