4日目
強歩大会の翌日、高坂源一郎たちはヘリに乗り地獄極楽島を後にした。そして、運ばれた先は、1年生寮だった。
源一はあてがわれた部屋に入り、2段ベッドの下に荷物を放り込んだ。
「で、なんでおまえと相部屋なんだよ!」
源一は、上段のベッドで寝転んでいる三崎省吾を怒鳴りつけた。
「なんだよ、大声出して。俺たちは強歩大会の1位2位だから、当然だろ?」
源一は室内を見渡した。
12畳のキッチン付ワンルームだ。備え付けの冷蔵庫、大型テレビにソファ。2つの机の上にはそれぞれデスクトップのパソコンが乗っている。
2人部屋とはいえ、学生が使うには豪華な部屋だ。
「おーっす、ゲン、ショウ。遊びに来たぞ~」
ノックもなく扉が開かれ、木下高志が入ってくる。
「うお。鬼でかいテレビだなあ」
「高志、賢治はどうした?」
「あいつは部屋で寝てるよ。筋肉痛で動けねえってよ」
高志はソファに腰下ろした。
「それで、おまえらの部屋はどうなんだよ」
「ここほどではないけど、それなりにいい部屋だよ。広さはここより少し狭いかな。パソコンは1台だしキッチンはないな」
「ふ~ん。一応トップでゴールしておいて、得したってところかな」
「おいおい。さっき行きのヘリで同じだった奴に聞いた話だけど、初日にリタイアした連中は6畳で4人部屋だってよ」
「……それは、きついな」
「……ああ。俺たち、相当優遇されているんだな」
源一と省吾は同時にため息を吐いた。だが、ため息には達成感も含まれている。150人の新入生の中で強歩大会を完走したのは源一たち5人だけであり、それこそ命がけでゴールしたのだ。そのゴールの報酬としてのこの部屋ならば、源一は素直に受け取ることができた。
「そうだ、高坂。相部屋になってひとつだけ頼みがあるんだ」
「なんだよ」
「俺、月曜深夜にラジオを聞くんだよ。少し騒ぐかもしれないけど、我慢してくれ」
「……深夜の秘密基地?」
源一の問いかけに、省吾は即座に2段ベッドから飛び降り、源一に拳を出した。
源一は、無言で省吾の拳に自分の拳を付ける。さらに源一と省吾の合わさった拳を覆うように、高志は手をかぶせた。
3人は肩を叩きあって笑いあった。
その後、高坂源一郎、三崎省吾、木下高志の3人に篠岡賢治、そして朝比奈悠樹の5人がラジオ繋がりで放送部を作り、学園中、いや、日本中を席巻することになるのは、まだ先の話だった。




