対決!
源一と省吾、2人は再び距離を詰める。
悠樹は、ただ見ていることしかできなかった。
どっちが強いとか、どっちが正しいとか……。それらを超越して、2人は向かい合っていた。お互いがお互いの中に自分を見て、それを全否定する。ぶつかり合わなければ解けない関係。それが、悠樹には、羨ましかった。
「……いってえ、いったいどうなってんだ?」
高志と賢治が意識を取り戻す。悠樹は2人に駆け寄った。
「2人とも、大丈夫?」
「ああ。そうか、俺たちは、三崎に倒されたのか」
頷く悠樹。3人は、源一と省吾を見た。
殴り合う省吾と源一。省吾が源一の頬を殴りつければ、源一は省吾のあごを突き上げる。飛び散る血と汗。2人は、ほぼ無呼吸で相手を圧倒しようと動き続けた。
ふいに、省吾は距離を置いた。身長差を利用して遠間から仕掛ける。源一は、それを見て足を止めた。
省吾は源一を殴る。
当たらない。
蹴りつける。
当たらない。
源一は省吾の攻撃を体さばきのみでかわす。省吾の攻撃は、源一に完璧に見切られていた。
省吾は、まったく当たらない攻撃に舌打ちすると、前に出ようとした。
源一は、先に動いた。
先の先。完全に虚を突かれた省吾は、源一の体当たりをまともにくらった。間を置かずに源一は省吾のあごに掌底を叩き込む。
省吾は、苦し紛れに源一の右腕を殴った。源一は、大きく揺れた。痛みに視界がぶれ、源一の追撃は止った。
省吾は体制を立て直して、源一に言った。
「なんだ、右腕を痛めていたのか?」
「気にするな。いいハンデだろ?」
間を置いて対峙する源一と省吾。源一は、殴られた右腕をさすった。
「雑魚どもにかまけているから怪我を負うんだよ」
源一は、ちらと悠樹を見て、省吾に言った。
「三崎、おまえ、正直押し付けがましいよ」
―全国優勝なんて言ってるのはおまえだけだぜ。
源一は、かつて親友に言われた言葉を反芻する。源一は自嘲して頬を緩めた。
省吾は口角を下げ、一歩前に出た。源一は口に笑みを浮かべたまま、省吾を迎え撃つ。
「人が信用できない? そんなの当たり前じゃねえか!」
「黙れ!」
源一の頬を省吾の拳が裂く。鮮血が飛び散った。
「仲間に裏切られた? どうってことはない。てめえが裏切られるような関係しか築けなかったってだけだ!」
源一の言葉は省吾に向かって放たれたもの。だが、その言葉は同時に自身にも降りかかり、たやすく心をえぐる。
舌戦で追い詰めているのは三崎省吾か、それとも自分自身なのか。もはや源一自身にも判断はつかなくなっていた。
「そんなことで落ち込んだふりかよ! どんだけ甘やかされてるんだ、おまえは!」
「黙れって言ってるだろ!」
省吾は大きく手を振った。地面すれすれを滑空する右拳は、跳ね上がって源一の腹部にめり込んだ。150キロの賢治を浮かせたボディブローだ。省吾の右拳は源一の腹筋を突き破り、肺から空気を搾り出す。源一の視界がぶれ、意識が飛びそうになる。霞む視界、そこに写ったのは、省吾の勝利を確信する笑みだった。
―こいつは、俺だ!
源一の意識は覚醒し、省吾の後頭部を押さえつけ、おもいきり顔面に自身の額を叩きつけた。
鼻血を撒き散らして倒れる省吾。
源一は、荒い息を吐き出しながら省吾を見下ろした。
源一は、誰にも負けたくなかった。剣道でもそれ以外でも。自分自身にもだ。
意地だ。意地だけで源一は立っていた。そして、同じ思いで三崎省吾も立ち上がる。
お互い、ふらふらだった。膝に力が入らず立っているのもやっとの状態だ。
源一は、足に力を入れ、一歩省吾に近づいた。
「世界の不幸を一身に受けてるような気になってんじゃねえぞ」
さらに一歩近づく。省吾は、拳を振り上げ、源一を殴った。力の篭らない、ぶつけるだけのような突き。源一は、足を踏ん張ってこらえた。
「おれは、俺はなあ!」
源一は右拳を振り上げた。肘に走った痛みを無理やり黙らせる。
源一は、拳は振るい、全てを省吾にぶつけた。
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