3日目 6
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高坂源一郎、朝比奈悠樹、篠岡賢治、木下高志の4人は対岸に渡り、泉を下流に向かって歩き始めた。
「はぴゅん!」
悠樹はくしゃみを虚空に撒き散らし、鼻をすすった。
「う~、寒い。泉の水、けっこう冷たかったね」
「おまえも制服脱いだら? 風邪ひくぞ」
悠樹は少し考えて制服の上着を脱いだ。湿った制服は重く、絞ると大量の水滴を零した。
高志は慌てて悠樹の耳に口を寄せた。
「ユウ、ユウ! シャツが透けてスポーツブラが見えてるぞ」
悠樹は瞬間的に顔を赤く染め、脱いだばかりの制服を羽織った。ちらりと源一を見ると、源一は賢治と地図を見て、なにやら話している。源一は悠樹の上目遣いに気付き、軽くため息を吐いた。
「ユウ、濡れた制服は脱いでおけよ。身体を冷やすぞ」
「い、いいの! もう身体冷えてるし、外気が寒いから」
なにやらおどおどとしている悠樹に、源一は、自身の濡れていない制服を投げつけた。
「これ着ておけよ。ゴールは近いって言ってもまだなにがあるかわからないんだからな」
「う、うん……」
悠樹は源一の制服を羽織り、袖口の臭いを嗅いだ。
「源一の制服はきっと剣道の籠手の臭いがするに違いないっちゃ」
「おまえはカメムシの臭いがするけどな……、てユウ! 鼻、鼻!」
「ふえ? うわあああ!」
悠樹の鼻から垂れ流される鮮血はぼたぼたと源一の制服に染みを作っていた。
「鼻血って、急に出すやついたよな」
「チビすけはきっとものすごい妄想をしていたっちゃ」
「う~、うるさいうるさい!」
悠樹はティッシュを鼻に詰めた。制服のポケットの中にあって泉につけられたティッシュはぐっしょりと濡れていた。
「まったく人の制服汚しやがって。ほら、乗れ」
源一は悪態をつきながら悠樹の前で背中を向けてしゃがんだ。
「え、オンブ? いいよ大丈夫だよ」
「うるさい、はやくしろ。おまえの鼻血が止るまで休ませておく余裕はないんだよ!」
悠樹はおずおずと源一の肩に手を着いた。源一は、悠樹の細い太腿を掴むと強引に持ち上げた。
「うわん!」
バランスを崩した悠樹は慌てて源一の首に抱きついた。
「急に立ったら危ないだろお!」
「はいはい、黙ってろ。舌噛むぞ」
「チビすけはいいっちゃね。ゲン、あとで俺もオンブしてくれっちゃ」
「痩せたらな。とりあえず体重を半分まで落とせ」
「痩せたら80キロくらいか。それでもオンブするには鬼重いだろ」
「俺の身長で80キロなら適正っちゃ」
「それなら今がどれだけ肥満かってわかるな、ええい寄るな、クソでぶ!」
がに股で手を伸ばす賢治に源一は土を蹴りつけた。
悠樹は、揺れる源一の背中の上で鼻に詰めたティッシュを落ちないように詰め直した。




