3日目 1
その日は朝から沈んでいた。天気がではない。天気は昨日に引き続き無駄にやる気を出した太陽が無駄に陽光を降り注いでいた。もし曇っていたとしたらそれはそれで無邪気な太陽は批判の対象になったかもしれない。沈んでいたのは、強歩大会の生存参加者25人の心境だった。
強制参加の強歩大会も最終日の3日目を迎えている。2日間なれない環境で歩き続けた新入生たちは多かれ少なかれ疲労を顔に浮かべていた。中でもその肥大した顔に頬肉をたるませてシリアルをゆっくり口に運ぶ篠岡賢治は顕著だった。
「ケンジ、どうしたの? ブサイク顔がいつも以上にブサイクだよ?」
賢治は質問してくる朝比奈悠樹に顔も向けずに答えた。
「さすがにきついっちゃ~。股ズレもひどくなってきたし筋肉痛で身体中が痛いっちゃ」
「筋肉痛って貧弱すぎるだろうが。たかだか2日歩き回ったくらいで」
高坂源一郎の批判を木下高志がやんわりと弁護する。
「まあそう言うなよ。俺もさすがに身体のふしぶしが痛いよ」
「ふん、ゲンは筋肉デブっちゃね」
「おまえは脂肪デブだけどな」
源一はそう言ってトーストに目玉焼きを乗せてかぶりついた。源一自身も、筋肉痛はないものの軽い倦怠感が身体に残っていた。
ふと見ると、悠樹が右斜め下10センチの距離から源一の顔を見上げていた。源一は手のひらで悠樹の柔らかい頬っぺたを押しのけて離した。
「……なにするんだよお」
「近いんだよ。おまえこそ人の顔をガン見しやがってなんだよ」
悠樹は内緒話をするように再び源一の顔に自分の顔を近づける。悠樹のおっきな瞳が源一に迫る。
「右手ダイジョーブ?」
「小声で話すことかよ」
源一は軽く右腕を振る。鈍い痛みが走った。源一にとっては懐かしい痛みだった。中学で全国を目指していたときは、怪我など日常茶飯事だった。多少の怪我なら誤魔化して練習を続ける努力論的な日々。源一は、昔を思い出して苦笑した。
「まあ、大丈夫だな。おまえに心配されるようなもんでもねえよ」
「そっか。よかった~♪」
悠樹は顔面アップのまま、ほんわか笑顔を作った。源一はトーストをくわえたまま悠樹の顔を再び押しのけた。
3日目の朝はこんな感じで始まった。
今回は短くてすいません。いや、予定ではこれくらいずつちびちび投稿する予定だったんですよ?




