2日目朝 6
源一は出口に一気に飛び込んだ。猛烈な熱射に視界が奪われる。瞬間、地面が消えた。
源一は、悠樹の小さな身体を抱えて2転3転ころげる。ようやく回転が止まったとき、大きな悠樹の瞳と、中天に差し掛かった性格最悪な太陽が源一を見下ろしていた。
「ゲン! 大丈夫?」
「……ああ、なんとかな」
胸に抱いていた悠樹を邪険にどかすと、源一は身体を起こした。
迷宮を見上げる。そこで、源一は自分が出口からどうなったのかを理解した。出口の先の道は下り坂になっていて、逆光で視界を奪われた源一は、下っている道でバランスを崩し、そのまま転がり下りたのだった。
源一は、立ち上がって汚れを払っている悠樹を一瞥すると、周りを見渡した。
「賢治、木下。生きてるか?」
「な、なんとか生きてるっちゃ」
「ああ、俺も一応無事だ」
賢治と高志も、坂道を転げたようで、源一たちに近い場所で倒れていた。
そのとき、猛烈な爆音が辺りに響いた。源一は、爆音の元であり、今出てきたばかりの迷路を見た。
バックドラフトを起こした迷路は一気に炎上すると、焼け落ちていった。
その様子に圧倒されて呆然とする4人。
「俺たちって、実はそうとうやばかったのか?」
「え? なに? これって命の危険アリ的なイベントだったの?」
「やっべえ。鬼やっべえ! もう少しで死亡フラグ立つところだったのかよ!」
「ちゅわああ~!」
賢治の雄たけびを合図に、4人は歓声を上げた。4人は自分たちの置かれていた状況、そしてその危機を脱したことを認識し、興奮した。
「ゲン!」
「おう!」
ハイタッチするチビ2人。デブと痩せは奇声を上げて喜びをアピールした。それに水を差すように、どこかで女の高笑いが聞こえた。
「……」
一瞬で凍りつく4人。4人には、今の笑い声が、まだ顔も知らぬ校長、漆原和子のものだと確信した。
「くっそ! わかってるよ。おい、おまえら、少し先を急ぐぞ。太陽の位置から見てタイムリミットまで時間がない」
「鬼むかつくな、あの校長」
「ところでゲン、どうして最後の分かれ道、正解がわかったっちゃか?」
「ん? いや、わかってねえよ。当てずっぽう」
「んな? 間違ってたらどうするつもりだったんだよお!」
「一応正解は選んだつもりではあったんだよ。確率でいうなら51パーセントくらい。ほら、分かれ道の数が13個で入り口の地図と一緒だったろ? だからなにかしら関係があるとして、ひょっとして入り口と出口が逆だったんじゃないかと思ったんだよ」
「でもあの段階では分かれ道が13箇所だってことはわからなかっただろ?」
「だから当てずっぽうだって。ほら、先行くぞ」
ひとり先を歩く源一。残された3人は、源一の背中を見送った。
「ゲンって、頭がいいんだか悪いんだかわからない奴だな」
「そうっちゃね。まあ、決断力は認めてやってもいいっちゃ」
「んふふ、そうだね~。口は悪いしすぐ叩くけど、ゲンはすごいね~」
悠樹は小走りに源一を追いかける。その後をデブと痩せは追った。
「あ~~~!」
急に大声を上げる悠樹。
「な、なんだ? どうした?」
「デブが坂から転げ回るところ、見逃した~、あた」
「びっくりさせるな」
「まあ、絵的には鬼面白いけどな」
「……おまえら、迷路で助けてやったのになんで俺を尊敬しないんだっちゃ?」
3人は、賢治が抱く疑問を、平然と黙殺したのだった。




