2日目朝 3
入り口前で足を止める4人。白い壁、赤い屋根。どこかテーマパークを模したようなその建物は、疲れている4人の神経を逆なでする。奥行きはわからないが、幅だけでもかなりの大きさだった。
「……迷路だっちゃね」
「うん。迷路だね」
「まあ、昨日は完璧体力重視だったからな。今日は知力重視ってことかな」
そう言うと、源一は入り口の横にかかっている地図を見た。
「……けっこう複雑だな。えっと、最初に右で次も右……。駄目だ。誰か紙持ってないか?」
「持ってないよ。こんなのがあるなんて思わなかったもん」
「ああ、鬼油断したな」
源一はあごを押さえた。自慢にもならないが、源一は記憶力には自信がなかった。手探りで行くしかないか、と覚悟を決めた時だった。
「よし、記憶したっちゃ。雑魚ども、行くっちゃよ」
いきなり叫ぶ賢治。手は印を結ぶように編まれていた。
「なんだ、記憶したって、道を覚えられたのか?」
「ちょっと違うっちゃね。きさまら凡人には真似をできない方法で暗記したっちゃよ」
「うそばっかり! じゃあ言ってみてよ」
「よし、まず、最初は右に行くっちゃ……」
賢治に言われたとおり地図上を指でなぞっていく悠樹。指はよどみなく進み、ついには出口へと到着した。
「おお、鬼すげえ!」
「へえ、やるじゃん。ボク、君を見直したよ。ただのデブじゃなかったんだねえ」
「伊達に糖分過剰摂取してなかったな」
「まあな。さあ俺を尊敬しろ! そして愛すっちゅわ~!」
「調子に乗るな。それで、どうやったんだ? 単純に暗記したんじゃないんだろ?」
猪八戒は超調子に乗る。
「ふふん。ゲンは両手で何個まで数えられるっちゃか?」
「? 10だろ」
「アマチュアらしい意見っちゃね。俺は1024まで数えられるっちゃ」
「?? なんのアマチュアだ?」
鼻の穴を広げて演説する賢治。
「つまり、2進法っちゃ。2進法だと2の十乗で1024。ここで、地図の道と照らし合わせて、右に行く時は1、左は2というようにして数えていくと……、ゲン。どこいくっちゃ?」
「ああ、もういいや。よくわからないから。ほら、先行くぞ」
源一の後姿を見送る賢治。ふと気付くと、いつものようにひとりだけポツネンと立って居る自分に気付いた。悠樹も高志も、すでにいなかった。
猛烈な寂寥感に襲われかけたとき、再び源一の声が聞こえた。
「おい、賢治! おまえがいないと先に進めないんだから早く来いよ!」
その声で賢治は我に帰った。源一に呼ばれ賢治は、たるんだあごを揺さぶり、にやりと口元を歪めた。
「しょうがないっちゃねえ。俺がいないとおまえらは本当になにもできないんだからな。よし、すぐいくっちゃ~!」
賢治は贅肉を揺らしながらドスドスと源一の元に走っていった。




